現在の鳥取砂丘は人間の手が加わらないと草原化します。
一度は大きく草原化したものの、大規模な除草が行われ、現在の鳥取砂丘が維持されています。
この鳥取砂丘の大規模な除草について2つの意見があります。環境保護か環境破壊か。
環境保護(砂丘や生態系、文化財産保護)という名目で除草が行われますが、一方では観光目的の大規模除草は環境破壊で人間のエゴだと指摘する人もいます。
この点について私なりの考えを最後にまとめます。
矛盾する2つの考え
鳥取砂丘の除草行為には2つの意見があります。
- 砂丘の保護(生態系も含めて)、文化財産保護のために除草をする。自然環境保護である。
- 人が住んでいない場所に自然に生えた植物を人間の都合で大規模に排除することは環境破壊である。温暖化やヒートアイランド問題と逆行する行為。
1については、鳥取砂丘は貴重な資源と文化財産であり、砂丘とそれを取り巻く生態系を保護するために外来植物を除草する。砂丘に本来生育していた植物はそのまま残す。
2については、一度緑地化した部分を観光地の景観保護という人間の都合で広範囲で大規模な除草を行い砂地に戻す行為は人間のエゴであり自然破壊である。自然保護というのは人の影響が出ないように保護することであり、人工的に草を抜いて手入れすることではない。
放っておくとあっという間に緑地化する
10万年かけて自然に作られた砂丘だが、戦後の緑地化により砂丘は減少。
その後砂丘は観光地となった。
しかし植林により砂の移動が減り、砂丘に次々と草が生え、保安林などを伐去していくが草原化は止まらず。
1991年頃には砂丘の半分近くが雑草に覆われる。この頃から大規模な除草作業で砂丘の復元が進められてきた。
雑草というのは除去しても、地中に残った僅かな根っこからでも生えてくるので、一度生えてしまった場所は抜いても抜いても生えてくる。ゆえに継続的な除草が必要となるのではないでしょうか。
つまりもともとは人間が起因となった草原化とも言えるかもしれません。
砂丘の緑地化は悪いこと?
砂丘が勝手に緑地化すれば一部生態系の変化が起こるかもしれないが、環境破壊とは言えずむしろそれが自然な姿です。
草原となることは人間や地球環境には何の悪影響もない。むしろ砂の道路などへの飛散防止、ヒートアイランド抑止などに貢献する。こういった観点からは環境悪化ではない。
しかし鳥取砂丘内の生態系の変化、文化財としての鳥取砂丘、砂丘としての景観を考えると、手入れを行わず雑草で緑地化してしまうことは頭の痛い問題で、そういう観点からは環境悪化という考え方もできる。
私の考えを書きます
鳥取砂丘の緑地化が自然変化と思えるかもしれないが、もとを辿れば戦後始まった海岸砂地地帯農業振興臨時措置法による砂丘の緑地化で砂丘内の砂の移動を止めたこと。これが原因で草が生えやすくなった。
雑草は一度根付いたら抜いても抜いても生えてくる。
生えてくる植物を広範囲で大規模に取り除いて砂地にする行為が自然破壊であるか否か、という点については考え方の違いのように思います。
温暖化やヒートアイランドが問題化している中で、観光地利用のためだけに、生えてくる草を大規模に抜いて広範囲を砂地化すると言う見方であれば考え直す部分もあるかもしれない。
しかしもとは人間が砂の動きを止めて草原化してしまった経緯を考えれば、観光目的に加え、貴重な生態系の保護やもともとあった景観を保全していくという目的で大規模な除草を行うことは理にかなった行為かもしれない。
雑草は雑草であり、全国どこでも生えてくる。雑草を抜いたからと言って雑草の絶滅の心配は無い。ただし砂丘の生態系はどこでも再現できるものではない。
2つの考え。
鳥取砂丘に興味がなく価値を見いだせない人にとっては、大規模な除草は「人が住んでない草原地帯をむやみに破壊して砂地化する行為」で自然破壊、景観悪化である。
鳥取砂丘に価値を見出している人にとっては「砂丘はかけがえのない財産」であり、草原化は景観悪化と定義され、もともとあった砂丘を復元して保護することが優先される。
ただこれだけは言えます。
- 善悪というのは人間が決めたルールであり、自然界には存在しない。
- それは時代で変わるし、国や地域によっても違う。
鳥取にとって、砂丘は価値ある財産であり、貴重な砂丘を保護することは大切なこと。鳥取砂丘は鳥取県にあり、これは鳥取県が決めたルール。
県外の人がこれに口を挟んで異議を唱えるのはタブーと言えるかもしれません。