アマゾンの商品を配達するドライバーが置き配するために配達先へ荷物を数メートル投げ飛ばしてる動画が問題になっています。
これはアマゾンに限った話ではなく、数年前には佐川急便のドライバーが荷物を頭上まで持ち上げ叩きつける動画がインターネット上へアップされ、佐川急便が謝罪。
宅配便は破損事故も度々発生しツイッターなどで上げられます。荷物の破損や紛失は宅配便だけでなく物流・運送業全体の永遠になくなることがない問題です。
乱暴な扱いがニュースになるのは宅配ドライバーがたまたま動画を撮られてしまったというパターンですが、物流倉庫でも扱いは雑です。
物流倉庫で破損
私自身、物流倉庫で働いていたことがあるので、数々の破損を見てきました。自分自身も何度も破損経験はあります。
私が居たのは業務用の食材を扱う物流。精密機器を扱う倉庫よりは扱いはかなり雑だったと思います。宅配の荷物は扱っていませんでしたので宅配を取り扱う物流とは若干環境は異なると思います。
しかしカートンの破損状態を見れば何が原因で破損したが大体わかります。画像検索で宅配で破損していたという画像をみると、物流で破損したようなものも多く見られます。
フォークリフトの爪で誤って突き刺して破損
これはフォークリフトを運転したことがある人は一度くらいやったことがあるのではないでしょうか?爪をパレットに差し込むときに間違って荷物へ刺してしまう事故です。
少し刺したところで気がついてブレーキ踏んで止まるパターン。爪の高さや煽りを間違うとこうなります。フォークリフトの資格をとって現場で乗って慣れてきた頃に起こるパターンです。
高い位置にあるパレットをすくうときは勢いがないので被害は最小限ですが、床にベタでおいてあるパレットはザクッといってしまうことがあります。
フォークリフトでバックした際に積み付けたパレットにぶつかって破損
物流倉庫では荷物に囲まれた狭い通路の中をフォークリフトは動き回ります。フォークリフトはバックの頻度は非常に多く、狭い通路では棚からパレットを抜いたりする際に度々荷物や壁やラックに接触します。
フォークリフトの後方の塗装が剥げているのはぶつかったり擦っているからです。
ネット上に上がっている物流倉庫内の写真は、あれは撮影のためにきれいに清掃し、その時だけ整理整頓している可能性もあると思います。現実はかなりひどい倉庫が多いのではないでしょうか。
フォークリフトでパレットに乗せた荷物を移動している最中に落下、こする
高い場所からパレットをすくう際、爪のあおりが足りなくてパレットが徐々に割れて荷物が散乱。また、きちんと差し込んで持ち上げたが、バックする勢いでパレットが爪の前の方へ滑っていき、パレットが途中で割れて落下。
これらは持ち上げてバック中に起きるので、パレットが割れ始めて気がついてももう遅いです。もう対処はできませんので、落下していく様子をただ見守るだけになります。
パレットに積み付けた荷物にラップや紐などできちんと安定されていないために現場などで移動中に落下。パレットに積んだ荷物はしっかりラップなどで固定しないと、フォークリフトで運ぶ途中、振動で徐々に花が咲くように外側へ荷物が傾いていき、最後は落下します。
危険なパレットもあります。木製パレットでパレットの背骨であるケタの下に横方向への板の補強がないタイプ。これは爪をしっかり刺してしっかりあおらないとグラグラ傾くので注意が必要です。
またプラスチックパレットは頑丈ですが、冷凍倉庫などではよく滑るのでかなり注意しないといけません。爪が結露してもプラパレはかなり滑ります。食品を扱う物流では衛生面という理由で木製パレットよりプラパレを使うところは多いです。
フォークリフトでパレットをパレットラックに積み付ける際、枠にぶつけて破損。
宅配を扱う物流に多いパレットラック。パレットラックはパレットを入れるラックです。パレットに荷物を高積みしすぎるとパレットラックへ入れるときに、クリアランスが不足して接触しやすくなります。パレット最上段の荷物が犠牲になります。
また、ラックの支柱に引っ掛けて押しつぶすと、このような破損になります。
床の通路に落ちているカートンに気が付かず、パレットごと押しつぶしてしまう。
何らかの原因で通路に荷物が1カートンだけ落ちてしまうことは稀にあります。パレットを持ったフォークリフトが前進した場合、落ちたカートンは見えませんのでそのまま押してしまいます。タイヤで踏み潰すこともあります。人がいても気が付かずぶつかります。
この事故を防止するためにパレットで運ぶ際は前方を確認できるようにバック走行が基本と言われています。
しかしパレットの前にパレットをびっちり並べていく作業で、前のパレットから1カートン真下に荷物が落ちてしまうと、次のパレットで押しつぶしてしまいます。カートンは扇のような折り目が入った潰れ方をします。
ベルトコンベアーから落下
ベルトコンベアーへの乗せ方が不適切であったり、乗せ過ぎて数珠つなぎ状態、または2段3段に重ねてしまうと落下のリスクが高くなります。落下に誰も気が付かないで放置されることもあります。
荷役によるパレットやカゴ台車への積付け作業が不適切
積付けについては荷役が商品をきちんと見極められているか、荷役のスキルが影響します。
軽いカートンを底へ置き、重いカートンを上に積んでいくと当然潰れます。初心者の荷役は大きなカートンを安易に底へ置く傾向があります。そのほうがパズル的には積みやすいですが、重さやカートンの強度を考えないとその後に潰れるリスクがあります。
カートンの大きさや重さ、重心の位置は様々な場合は、臨機応変にうまく積み付けていかないと綺麗に積めません。経験が左右します。
宅配を取り扱う物流センターであれば、カートンの大きさ・形状・重さはバラバラ。それを1つのパレットやカゴ台車へ混在させて積み付けるわけです。きちんと考えて積み付けないと、落下しやすくなります。カゴ台車であっても潰れるリスクはあります。
配達中に破損
積付けの問題
物流センターでは多くの現場作業員や責任者が居ますので、センター内での変な積み方や扱いを指導されたりしますが、トラックなどで運送中はドライバー自身に取り扱いをすべて任せることになります。
積付けが不適切だったり、状況に応じて仕切板やベルトを使わないと、後方ドアを開けた瞬間に荷物が雪崩のように崩れてくることもあります。
取り扱いの問題
トラックから荷物を複数降ろすときに、ボンボン落とすドライバーはいます。動画に上がっていたのは、置き配で玄関へ向かってゴミを捨てるように放り投げる宅配ドライバー。また、数年前に上がった動画画では荷物を上から叩き下ろしていました。
もうここまで来ると常識を逸脱しています。
破損は梱包する側の問題もある
過大なカートンへの梱包は潰れやすくします。例えばアマゾンに多い過大梱包は、商品を守るためにあえてやっているようですが、あれは逆効果です。
小さな梱包であれば最後に上に乗せられてしまうのに、わざわざ大きなカートンにすることで下の方へ積み付けられ、重みで潰されるリスクが高くなります。
空間が多く空箱のようなカートンは潰れやすいです。しかも大きな面積のカートンにスポット的に商品を固定していて重心位置が偏っていると不安定で落下しやすくなります。
しかし今回の問題はドライバーの勤務態度の悪さが原因
問題の動画は客から預かった荷物を、まるでゴミを捨てるかのように配送先の玄関付近へ放り投げていた。
あの動画を見る限りでは歩いて運んでも時間効率は数秒しか変わらない。あの状況で投げるのは仕事の忙しさや効率が理由ではなく、ドライバーの勤務態度の問題。
仮に荷物が破損しても、荷物が不意に落下して破損した、であれば保証してもらうことで納得できますが、わざと乱暴に扱うことで破損したのであれば納得はできません。
このような行為は仕事が忙しいとか大変とかそういう言い訳は当然通用するものではないし、全く生産性がない行動です。もし破損すればその代償は自分へ帰ってくるのです。
個人事業者の宅配は
今回動画が問題になったアマゾンはアマゾンフレックスという形で個人事業者にも配達業務を任せています。ただ、その業務委託された個人宅配事業者も不真面目な取り扱いや配達をやって問題を起こせば大手アマゾンの顔を傷つけることになります。
仕事を請け負ったからには責任を持って行動しないといけません。不慣れで住所がわからず商品が遅れるとかそういう問題ならまだいいと思います。しかしわざと投げつけて壊したとあれば許されません。
アマゾンの顔を背負って働いているということを自覚しないといけません。
最後に
もしPCなど精密機器を購入するのであれば、放り投げられたりすれば故障につながります。精密商品を専門に運ぶドライバーが配送しているところで購入するのが賢いかもしれません。つまり多少高くはなるけれど家電ショップで直接買うのです。
ハードディスクが入った箱を動画のように数メートルも投げられれば一発で壊れてしまいます。またすぐには壊れなくても使っているうちに壊れる可能性が高くなります。
物流・運送を請け負っている事業者は大変なのはわかります。私も物流にいましたので。忙しい時期は身動きできないレベルまで荷物が溢れフォークリフトさえまともに通る通路さえなくなり何がなんだかわからなくなります。
ドライバーが大変であることもわかります。ですがそんなことは言い訳にはなりませんし、もし破損事故を起こせば、そのたびに会社が謝り信頼を失いすべてが無駄になります。また、商品の破損が多い物流センターでは人身事故も多いです。
忙しくても確実にこなしていかないと本当にやった作業が無駄になり、結局は自分で自分の首を絞める事になります。