マラソンと言えば毎度定員をオーバーする申し込みがあり、抽選という形が一般的だったが、最近は定員割れする大会も増えてきているそうです。
この理由の一つに高すぎる参加費というものがあるようです。
その代表例を言うと、2023年3月5日開催の東京マラソン2023の参加費がフルマラソンが2万3,300円、10.7kmが1万2,400円。ちなみにこれはコロナの検査費用6,800円が含まれていて、本来は1万6,500円と5,600円。
1レース走るのに23,300円。これが安いか高いかと見ると、個人的にはマラソンは5,000円が参加しやすい相場だと思し、高くても1万円だと思います。
市民が参加できるマラソン大会の参加費について議論します。
定員割れするレース
マラソン大会と言えば毎回抽選が熾烈で、例えば東京マラソンの一般エントリー抽選倍率が10倍超だったりと、参加するだけでも一苦労するレベル。東京マラソンは2017年の抽選倍率12.2倍をピークに伸びていないが、定員数も修正があったので、一般エントリーの申込数で見ると2019年の33万人がピーク。2023年も11倍ほどと相変わらず高い。
しかし一方で大阪マラソン2023や定員割れするレースも目立ってきているらしい。その理由について川内優輝選手がツイッターでアンケートを行っている。
理由の殆どが参加費が高いこと、また、直前で大会中止の可能性を懸念という結果に。
これは定員割れの理由が何か、ツイート閲覧者に考えてもらっている形式で質問しているので、参加しようとした人が断念した理由とは限らない。そこで川内氏は別視点からのアンケートを行った。
レース参加者に対してのアンケートで、レースに対して重視した理由を聞いている。
ランナーが大会に重視した点は、そのレースが目標だったが49.7%。費用がかからないからが24.8%、開催の信頼性が22.2%という結果に。
費用がかからないというのは、参加費意外にも交通宿泊費とあるので、開催場所までの旅費や安く済むレース。つまり住んでいる地域近辺のレースが優先されているということ。
やはり近年物価が上昇する中で、趣味へかけるお金も節約する意識が強くなっているのでしょうか。
マラソンの参加費
近年のマラソンレースの参加費というと気軽に申し込めるレベルではなくなりました。
東京マラソン2023の参加費が23,300円。ただしそのうち6,800円がコロナ検査費用なので、参加費は16,500円と考えることも出来ます。
北海道マラソン2022が16,500円、大坂マラソン2023が19,100円、名古屋ウィメンズマラソン2023が19,000円+事務手数料。福岡マラソン2022が16,400円、NAHAマラソン2022が12,000円。
こう見ると有名な都市型マラソンのおおよその相場は16,500円といったところでしょうか。
しかしこれはマラソン大会の標準ではなく、あくまでも有名な規模の大きい都市型マラソンの場合です。もちろんこういった高い大会ばかりではなく、安い大会も数多くあります。
「マラソンバカ奮闘記!」というサイトに参加料ランキングの記事があります。
最も安い大会が小岩井公園を使った「小金井公園5時間走・フルマラソン」で参加料が2,000円、主催は小金井公園走友会となっています。ただし定員がフルマラソン200人と5時間走150人と少ない。公園周回であるため安い参加料で走れるのでしょう。
また1万円以内で参加できる大会は他に山ほどあって、先ほど紹介した都市型の大規模マラソンの参加費はランキングでも上位となっています。
やはり都市部を使った規模の大きなマラソンほど参加費が高い。地方大会や公園や山や河川敷コースなどを利用した大会は安い傾向が見えます。
大会運営にかかる費用
大会にかかる費用は莫大で、東京マラソンの場合は経常費用38億円のうちマラソン大会事業費が36億円ほど。経常費用と経常収益はほぼ同じであり、参加費の23,300円を定員の37,500人で単純計算しても8.7億円。
つまり参加費だけで費用をすべてカバーしているわけではなく、EXPO出展料や大会協賛金、グッズの売上などでようやく収支がトントンといったところ。それでも大会を開催するのは、大会開催によって人が集まる経済効果(電車利用やホテル宿泊やお土産といったもの)という狙いがあるようです。
参加費を安くするにはどうすればいいか
参加費を安くするにはどうすればいいか考察しました。
- 公園や河川敷、交通量の少ない道路を利用するコースにする。
- 周回コースにする。
- エイドの軽食を廃止し、ドリンクだけにする。
- 参加賞を質素化。
- 広告費削減。
ただし限界まで切り詰めた場合、大会としてはつまらなくなってしまうかもしれません。
費用がかからないコースにする
市街中心部コースでやれば当然費用がかかる。交通を大量に堰き止め、見物人も多いため警備のかかる予算も莫大になる。東京マラソンでは警察官と警備会社合わせて警備員が約1万人となっています。
これを河川敷コースや大きな公園を使ったコース、あるいは市街地から外れた交通量の少ないコースにすればいいのです。
例えば福岡マラソンはコースが福岡市中央区から糸島半島となっているが、もともと交通量が少ない糸島半島のみの周回にすれば交通量は少ない。そもそも昔は高校駅伝予選会(42.195km)が玄洋高校をスタート・ゴールとした糸島半島内のみで行われていました。
また高校女子駅伝予選会(21.0975km)では1周2kmの大濠公園を周回するコースにしていた時期もありました(1993年か1994年頃)。
河川敷や公園、あるいは市街地から外れたコースにした場合、マラソンに興味がある人しか見に来ない。これが市街中心部であれば、たまたま通りがかった人が沿道で見てくれる。市民ランナーとしては応援が多いほうがいいし、応援が多く頑張れる市街地コースを走りたいでしょう。
周回コースにする
周回コースというのはいろいろ効率が良い。
まず交通整備をする範囲が狭くなる。関門閉鎖でバス収容となっても移動距離が短い。準備するバスの台数も減ります。エイド箇所やトイレ設置箇所もバリケードの数も減り、警備員の数も大幅に減らせるでしょう。
しかし周回コースにすれば、1周あたりの距離次第では周回遅れでグチャグチャになります。1周遅れどころか2周、3週遅れもグチャグチャに混ざってくるともはや何がなんだかわからない。トップ集団にとっては辺り中にあふれかえる周回遅れがコースを塞ぎ、大きなタイムロスになります。
実力が均衡しているエリートレースとは違い、市民レースで実力がピンキリであるため、20km以上に及ぶ長い列となり周回遅れでわけわからなくなる可能性は高いです。ですが1周目、2周目で走るレーンを変えていくなど方法はあるかもしれません。
周回数不正対策はチップの通過ログで分かるでしょう。
ただ、周回コースは走る側にとってつまらないものであり、精神的にもきついです。
エイドをドリンクのみにして軽食を廃止する
1992年頃のシティマラソン福岡(ハーフマラソン)では、記憶が確かならば、給水はおおよそ5kmおき、エイドステーションは水かスポーツドリンクだけで、軽食など全くありませんでした。参加メダルもなし。参加賞は大会のデザインがプリントされた巾着袋でした。
当時はマラソン大会は走るためだけの大会で余計なものはあまりなかったと思います。
ところが今はどうだろう。マラソン大会と言えば、エイドには水とスポーツドリンクだけでなく、あらゆる軽食がズラリ並んでいます。バナナやアンパン、おにぎり、お菓子、羊羹、さつまいも、フルーツ類・・・まるでバイキングレストラン。
エネルギー枯渇を予防するためとは言え、いささかやりすぎではないかと思える大会もあります。マラソン大会というより食べ歩きイベントになってしまいます。
このエイドには公式エイドと、私設エイドがあり、私設エイドはボランティアが自前で用意したものが勝手に配られる(私設エイドを禁止している大会もある)。
この軽食コーナーは近年のマラソン大会の目玉となっている場合も多く、入賞クラスの上位陣は全く摂ることはありませんが、この軽食を楽しみにする市民ランナーも多い。
走ることを目的とした涼しい時期の大会であれば、エイドは5kmおきで十分だし、それ以上を求めるのであれば自分で用意して携帯するような感じにすると多少経費は減るかもしれません。
参加賞を節約
参加賞も質素なもの一品にし、完走メダルや記録証は有料オプションにしてしまうといいと思います。記念品がもっと欲しければ大会当日に現地で色々販売しているものを買う形。
マラソンの宣伝費を削る
例えば東京マラソン2021では宣伝費が2,550万円です(一般財団法人東京マラソン財団事業計画及び予算書より)。東京マラソンは抽選倍率10倍以上(都民枠は30倍)もあるし、もとから知名度も高いので、公式ツイッターでツイートする程度にして、予算を使う宣伝なんていらないような気もします。
ナンバーカード引換証の郵送は必要でしょうか?こういうのはデジタル化して大会当日に現地でスマホかざして交換でいいと思います。費用がかかりゴミになる紙媒体は廃止にしていいと思います。郵送するにしてもナンバーカード引換証は大きな封筒ではなくハガキで十分です。
例えば東京マラソンは大量の案内書やチラシが同封してナンバーカードが大きな重い封筒で送られてきます。しかしチラシを大量に入れることで協賛金を得ていると考えればむしろこれは必要なのかもしれません。
最後に
ただ、あまり安く切り詰めてしまうとつまらない大会となってしまうおそれがあります。
参加人数の規模が少なかったり、定員数が集まらなければ話になりません。とはいえ、マラソン大会離れの主因のひとつが「参加費」であるという現実。大会を魅力的にしすぎたあまり、膨大な経費になり、参加費も高額となってしまう。
このバランスが大切でしょう。
やはりランナー側としては、フルマラソンは地方の大会で5,000円、都市部の大会でも1万円程度で参加できるものであってほしいと思います。