糖質制限には賛否両論があり、科学的にも決着はついていないので、この話題に触れるかどうか迷いましたが、そろそろ自分なりにまとめます。
糖質制限は、寿司屋でシャリを残しネタだけ食べるなど極端な行動へ出る人がいてちょっとした社会現象となりました。
人は新しい研究が出てくると、そのたった1つの研究やたった1つの研究チームにも関わらず、研究の透明性や再現性もわからないまま全部鵜呑みにし、今までの多くの実験や研究出でていたことは時代遅れで間違っていたという結論を出しがちです。
そもそもそういう傾向がすぐにフードファディズムへ繋がってしまうのです。
フードファディズムだからといって間違っているということではありません。
ただ、その起点となる人は自分が訴えたい何かを宣伝するために既存のものを否定して消費者心理を操るのは良くあるパターンです。
先に書いておきますがこの記事では糖質制限の是非について結論は出ません。私からみたレビューを書きます。
糖質制限を勘違いしている人も多いので
糖質制限で痩せました。という人の多くが糖質制限ではなくカロリー制限の効果で痩せています。
近年言われてる意味合いでの糖質制限とは、摂取カロリーはそのままでPFC、つまりタンパク質、脂質、糖質のバランスから糖質を減らして制限すること。
流行に単に乗っただけの人でよくあるパターンは、食事から糖質だけを抜いてカロリーまで減ってしまう。これは糖質制限でもありカロリー制限でもあります。
科学的根拠
結論は出ていません。専門家の間でも賛否両論です。
糖質制限食の有効性
低炭水化物食、低脂肪食が肥満成人に与える影響のメタ分析
低炭水化物、低脂肪食はともにダイエットと動脈硬化性心疾患のリスク低減に関係している。低炭水化物食は短期間でダイエットに効果がある。
Dietary Intervention for Overweight and Obese Adults: Comparison of Low-Carbohydrate and Low-Fat Diets. A Meta-Analysis
Jonathan Sackner-Bernstein ,David Kanter,Sanjay Kaul
Published: October 20, 2015
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0139817
資金提供 アトキンスニュートリショナルズ。
過体重と肥満のための低炭水化物ダイエット系統的レビュー
12の体系的レビュー、10はメタ分析を使用。公開されたレビューの質は低い物が多い。低品質の分析では低炭水化物食に優位性を示した。高品質の分析では、低炭水化物、低脂肪、低エネルギー食で違いは殆どなかった。
低炭水化物を推奨する前に、より質の高いレビューとランダム化比較試験が必要であるとした系統的レビュー。
Low‐carbohydrate diets for overweight and obesity: a systematic review of the systematic reviews
C. Churuangsuk M. Kherouf E. Combet M. Lean
First published: 07 September 2018
https://doi.org/10.1111/obr.12744
資金提供 プリンス・オブ・ソンクラー大学。
1型糖尿病患者に対しての糖質制限食の是非
炭水化物を脂肪またはタンパク質で置き換える糖質制限食。この潜在的な効果の違いの結論を出すことは出来なかったとする系統的レビュー。(※系統的レビューとは複数の文献、研究から偏りなく分析をすること。)
Low-carbohydrate diets for type 1 diabetes mellitus: A systematic review
Jessica L. Turton,Ron Raab,Kieron B. Rooney
Published: March 29, 2018
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0194987
資金提供はなし。
なんでも過剰摂取が健康に悪いのは当たり前
過剰摂取を理由に糖質が体に悪いというような主張もよく聞きます。しかし、過剰摂取して健康に悪いのは当たり前です。
どれだけ摂っても健康に悪影響がないものは存在しません。
体に必要不可欠な水でも酸素でも過剰摂取は毒です。
適量摂取で影響が出れば、それは体に悪いかもしれませんが、過剰摂取を前提に議論しても、それは性質ではありません。
また、糖質制限でよくイヌイットが健康であると例にされますが、近年のゲノム解析技術によりイヌイットの遺伝子からは突然変異が多く発見されています。
イヌイットの遺伝子は非常に特殊なものです。彼らの食事・健康が我々にとっても同じになるとは限りません。日本人には日本人の長期データが必要になります。
私は既存のPFCバランスを推奨します
糖質制限の議論についてはいまだ決着はついていません。
そもそも長期的データがありません。PFCバランスをどうすればいいかわからないのであれば、とりあえず厚生労働省の食事摂取基準にあるPFCバランス(タンパク質13ー20%、脂質20-30%、炭水化物50-65%)を目安にすれば間違いないです。
むしろこれを大きくいじるほうが、数十年という長期で考えれば予測しないリスクが出てくる可能性がひょっとすればあるかもしれません。
肥満や成人病の原因の多くは生活習慣です。
バランスの取れた適度な食事と運動、規則正しい生活を心がけていれば既存のPFCバランスでそうそう健康を害することはありませんし肥満も防止できます。なにより糖質制限食は食費がかさみます。炭水化物というのはコスパがいいのです。
それと、脂肪を蓄えるというのは必ずしも悪いということではないです。
体脂肪は数百万年、いやそれよりはるか古代からの進化で身についた生命活動に関わるものであり人間にとってとても大切なものです。体脂肪は適量であれば悪ではありません。
現代人にとって過剰な糖質摂取や体脂肪が悪影響を及ぼしていることが問題になっていますが、近年の女性はダイエット志向なのか、若い年代を中心に体脂肪が適正な人までもが無闇やたらに体脂肪を落とそうとする傾向があります。
厚生労働省の国民健康栄養調査によれば女性は若い年代中心に摂取カロリーが低く、低栄養状態の割合が高い傾向にあります。
低炭水化物の是非についてはここでは結論は出ませんが、PFCバランスばかりを気にするのではなく、摂取カロリー、その他ビタミン類のバランスも考えた食事をしていく必要があると思います。
日本人はすぐに一点ばかりを見ては極端な方へ走りがちです。
新しい1つの情報に安易に踊らされ振り回されるのではなく冷静に周りを見て情報収集して判断し、バランスの取れた食事をして下さい。