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人工甘味料は医師は絶対に食べないとかいう週刊誌の馬鹿げた記事に反論する

週刊誌の記事だが、「人工甘味料は恐ろしい、医師は絶対に食べない」と受け取れる記事を見た。有料で全ては読んでいないので、この記事が何をいいたいのかという点については全ては判断できない。しかし記事のタイトル的は衝撃的で悪意を感じる。

これは厚労省やその他世界の主要機関が出した見解を否定しているもの。

私はこういう消費者の不安を利用して心理的に煽る週刊誌の手法は大嫌いです。そこで環境めぐりでは、きちんとした根拠を元に、人工甘味料についての議論します。

フランスのコホート研究が物議

2022年3月に公開された「人工甘味料とガンのリスク」というフランスの10万人を追跡調査したコホート研究。

著者はソルボンヌパリノール大学の研究チームがほとんどですが、一人Open Food Factsの創始者であるステファン・ギガンデの名前があります。Open Food Factsは非営利団体で加工食品の添加物などのデータを集めたオープンデータソースです。

この研究によると人工甘味料であるアスパルテームとアセスルファムKがガンのリスクと関連していたという。

この研究の公表はメディアで伝えられたが、保健機関などでまだ人工甘味料の再評価(多くの研究を集めて定期的に行われるシステマティックレビュー)さえ行われていない段階にも関わらず、たった1つの最新研究こそ正論であるとする人たちが「人工甘味料はやっぱり危険だった!」と騒ぎ始めた。

この記事を書いた2022年7月25日の段階ではまだ人工甘味料が有害だとする科学的根拠は認められていません。

「人工甘味料とガンのリスク」の研究はこちら。

Debras C, Chazelas E, Srour B, Druesne-Pecollo N, Esseddik Y, Szabo de Edelenyi F, Agaësse C, De Sa A, Lutchia R, Gigandet S, Huybrechts I, Julia C, Kesse-Guyot E, Allès B, Andreeva VA, Galan P, Hercberg S, Deschasaux-Tanguy M, Touvier M. Artificial sweeteners and cancer risk: Results from the NutriNet-Santé population-based cohort study. PLoS Med. 2022 Mar 24;19(3):e1003950. doi: 10.1371/journal.pmed.1003950. PMID: 35324894; PMCID: PMC8946744.

この研究を否定するジョシュ・ブルーム博士

バージニア大学で有機化学の博士号を取得し、25の特許と35の学術論文の著者であるジョシュ・ブルーム博士はこの研究の結論に懐疑的です。

彼は研究そのものを否定しているのではなく、研究データの評価について否定的です。彼はこのデータの値からは優位な差は見られず、人工甘味料がガンのリスクを上げているとは言えないといいます。

詳しくは下のACSH(科学と健康に関するアメリカ評議会)の記事から見ることが出来ます。

アスパルテームとアセスルファムK

アスパルテームは欧州食品安全機関 (EFSA)で発がん性はないと評価されています。

アセスルファムKは吸収されずに排泄され、欧州委員会(EC)で発がん性はないと評価しています。安全性への懸念が全くない訳では無いが、米国食品医薬品局(FDA)でも使用を承認しているものです。

これらも当然、無毒性量をさらに100分の1にした一日摂取許容量(ADI)が設定されているので、心配はまずないと言っていいです。

甘味料については以前記事にしました。

たった1つの研究で根拠にはなりません

私は専門家ではないのでそのコホート研究の評価についてはコメントしませんが、注意しなければならないことは、研究論文というのは発表されたらそれがイコール科学的根拠になったというものではないということです。

研究の透明性、再現性、規模、バイアスは除去されているか、無作為で行われたものか、など研究の質が大切です。研究というものは似たような研究でも異なった結果が出ることは普通にあり、よって科学的根拠を求めるには、偏りがない複数の研究(都合の良い結果が出た研究ばかりを集めてはならない)をくまなく集め、それらを多くの専門家によって会議を行い一つ一つ評価していく必要があります。

これがシステマティックレビューです。

厚労省などはこういった会議で評価していきます。そしてこのような評価は定期的に再評価が行われます。厚労省などが出した結論より、有機化学の専門家でさえもない個人の医師の結論のほうが正しいというのでしょうか?

新しく研究論文が一つ出た、今までの定説とは異なった結果だった、だからこれが科学的根拠だ、今までの根拠は古くて間違っている・・・と多くの人は勘違いしますが、これはあまりにも時期早々であるということです。

一日摂取許容量(ADI)を理解する

食品添加物や残留農薬などには一日摂取許容量(ADI)が設けられていることがあります。これは毎日一生摂取し続けても影響が出ないとされる数値の目安です。

たまに、残留農薬がこの数値を超えて検出されたために食品を回収する騒ぎがあります。ただ、この数値を少しでも超えたから直ちに危険というわけではありません。

一日摂取許容量(ADI)は無毒性量をさらに100分の1にした基準値なので、それを少し超えた食品を誤って摂取したとしても心配することはありません。

日本は食品添加物大国という嘘

ネット上では日本は添加物の種類が世界一だという嘘が出回っています。

「日本の添加物は1500種類でアメリカはたった133種類、ドイツは64種類・・・」このようなデータがあちこちでコピーされて拡散され、そのデータはどこのソースか調べようとしても肝心のソースは明記されていない。

そしてなぜか根拠のないそのようなデータがグーグル検索で弾かれずに上位に表示されている。

食品添加物の定義や数え方は国によって違います。よって明確な比較は難しいというのが現状です。なぜなら日本で1品目で数えられる添加物がアメリカでは物質ごとに複数に分けられていることがあるからです。

にも関わらず、自分が主張するに都合の良い数え方なのか、そういう条件が異なる意味のない比較で日本は添加物大国だと言う人がいるのです。

ちなみに厚生労働省によると日本で使用されている添加物の種類は829品目(香料含む)。アメリカで使用されている添加物は1612品目(香料を除く)、香料を含めると4000を超えます。

アメリカの添加物はとても多いです。

ただし、これらをそれぞれの国の「認可された食品添加物」の定義で数え直すと日本は1,558種類、アメリカは2,688種類、ドイツ、フランスは324種類となります。

このドイツ、フランスは一見少ないようですが、実は香料を含めると2,800種類を超えてしまいます。

「癌の原因の30%が食事」の本当の意味

「ガンの原因の30%が食事である」

これは一般的にもよく言われていることです。これは「ガンの原因の30%が食品添加物によるものだ」と勘違いしないでください。

これは食習慣という意味です。ガンの原因の30%が食習慣にあるということです。不摂生な食事を長期間続けていくと影響が出るということです。

添加物よりはるかに危険なもの

人工甘味料不使用でショ糖をアピールする製品も増えてきましたが、これは消費者が人工甘味料を望んでいないからです。メーカーが人工甘味料の健康被害を認めたのではありません。人工甘味料を使うと風評被害で売れなくなるからです。

言っておきますが、医師は有機化学の分野である食品添加物を専門としているわけではありません。食品添加物の専門でもない医師が絶対に食べないから危険と言うのはあまりにお粗末な話です。

食べ物で癌もっとも影響する要素は食習慣です。

飲酒や塩分の過剰摂取、過食など。知らない人は多いですが、例えばお酒には発がん性があります。お酒の発がん性はIARC分類でタバコと同じグループ1です。塩分過剰摂取も胃がんの原因となります。特に塩分は大半の人が過剰摂取しています。

また植物に本来含まれるアルカノイド類などの天然毒、フグなどの毒、寄生虫、カビや細菌類が出す毒素。これらの中には発がん性があるものもあれば、その他強い毒性で死亡事故が起こっているものもある。

病気を恐れるあまり、影響の殆どない食品添加物を避けているにも関わらず、好きなだけ酒を飲み、高塩分のカップ麺や味の濃いコンビニ弁当類を食べ、食習慣が乱れている人は多い。

これでは矛盾しています。

厚労省によれば「疾病全体に占める生活習慣病の割合は6割」。

添加物は科学者たちが研究をし、その多くの研究から評価を行い、安全性を評価し、基準を設ける。その基準にしたがって食品は作られる。つまりこれらは過剰に摂取のしようがありません。

しかし国民の食事の栄養摂取の目標値の基準はあるものの、消費者は好き勝手に食べ、基準通りにはいっていない。生活習慣は乱れ、病気になる。そういった不安は薄いが、これこそ最も危険な因子です。

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