何十年も昔から、朝食は1日のうちで重要な役割を果たしているのでしっかり食べないといけないと言われてきました。
最近では、朝食はそれほど重要ではないとする意見も多くなってきています。
農林水産省では現在でも朝食を1日の重要な役割として推進しています。専門的な研究でも結果が分かれているようですが、決着はつくのでしょうか?
両者の言い分
朝食肯定派
- 朝食を食べないと集中力が低下する。
- 朝食を食べる生徒は学力が高い。
- 朝食を食べないと体内時計が狂う。
- 朝食を抜くと肥満・糖尿病の原因。
省庁のサイトでは朝食の重要性を訴え、朝食はしっかり食べるべきとする傾向が強い。アメリカでもその信仰は強い。朝食は1日の中で重要な食事である。朝食をとることは健康であるとする。
朝食否定派
- 朝食をしっかり食べると胃腸に負担がかかる。
- 朝食の有無と肥満は関係ない。
- 習慣化すれば集中力は低下しない。
- 朝食はエジソンがトースターを売るために広めた習慣。
- 朝食推進はシリアルメーカーが絡んでいる。
朝食を食べることが健康につながるのではなく、朝食を食べる人のほうが規則正しい生活習慣である事が多いため健康に影響している。トースターの宣伝で普及させようとした、シリアルメーカーなどの宣伝であるなど。
実験、研究
最初の食事を4時間遅らせると、エネルギー消費の減少によって体重が増加。肝臓時計と脂質代謝関連遺伝子の概日リズムがずれたとする研究。
The present study revealed that DFAM increased body weight gain because of fat accumulation in the adipose tissues. Even with only a 4-h delay at the onset of the first active-phase meal, breakfast, the circadian oscillation of clock and lipid metabolism-related genes were delayed by 2–4 h. These results suggest that the delayed circadian rhythm of clock genes and lipid metabolism leads to increased body and adipose tissue weights. This study proposes that metabolic abnormality and obesity caused by breakfast skipping in humans would be mediated through alterations in the circadian rhythms of the peripheral tissues, such as the liver.
Source:Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet.
Hatsumi Shimizu ,Fumiaki Hanzawa ,Daeun Kim ,Shumin Sun,Thomas Laurent,Miki Umeki,Saiko Ikeda,Satoshi Mochizuki,Hiroaki Oda
Published: October 31, 2018
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206669
この研究では、起床後最初に摂る食事を遅らせることは肥満の原因になる。
最初の食事を4時間遅らせると肝臓時計と脂質代謝関連遺伝子の概日リズムが2–4時間ずれた。朝食抜きによる肥満は肝臓などの末梢組織の概日リズムの変化で引き起こされるという結論。
朝食を摂ることでの体重変化と、エネルギー摂取の影響の調査。
the addition of breakfast might not be a good strategy for weight loss, regardless of established breakfast habit. Caution is needed when recommending breakfast for weight loss in adults, as it could have the opposite effect. Further randomised controlled trials of high quality are needed to examine the role of breakfast eating in the approach to weight management.
Source: Effect of breakfast on weight and energy intake: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
Katherine Sievert, research officer, Sultana Monira Hussain, research fellow, Matthew J Page, research fellow, Yuanyuan Wang, senior research fellow, Harrison J Hughes, junior doctor, Mary Malek, medical student, Flavia M Cicuttini, head of musculoskeletal unit
https://doi.org/10.1136/bmj.l42 (Published 30 January 2019)
朝食抜きの人、朝食を食べる人で体重に有意な差はなかった。しかし研究の質は低いので質の高いランダム化比較試験が必要という結論。これと似たような結果の調査は他にもいくつかある。
朝食の習慣がないところもある
日本へ来て駅伝などで走って活躍しているケニア人留学生について。
彼らが日本へ来て一番苦労したのが朝食だそうです。彼らがケニアにいた頃は朝食を食べる習慣がなく、朝起きたばかりは胃に入らないということ。
日本では彼らは寮生活をしていますが朝食をしっかり食べろと言われるのでそれが苦労するそうです。
彼らはケニアで朝食を食べず、毎日片道10kmなどの距離を走って通学していたのです。
朝食の必要性の考察
1日3食を2食に(補給インターバルを長く)すると次の補給まで体を維持するために脂肪を蓄えやすい体質になるといいます。
それは私も知っています。同じトータルカロリーなら、1日に5,6回など小分けして食べたほうが脂肪がつきにくい。また、昼食と夕食の2回だけでは栄養が不足する、食事回数が少ないと循環器系疾患や糖尿病リスクが云々・・・。
ですが待って下さい、別に朝食を食べないからと言って1日2食とは限りません。
昼食・夕食・夜食または昼食・間食・夕食の3食もあります。それに昔の日本で1日2食だった時代は朝食と夕食であり、朝食を食べるからと言っても3食とは限らないということです。
ここでの論点は1日における食事の回数や総エネルギーの話ではなく、朝食が必要か否かの議論です。
朝食はトースターの売り上げを伸ばすためにエジソンが広めただけ、シリアルメーカーが積極的に宣伝している、つまりこれはビジネス目的で朝食を積極的に摂るように宣伝しているだけと考える人もいます。
トースターは1900年初頭、最初はレストランの使用のみに限定されていました。1926年家庭用トースター(商品名トーストマスター)が始めて登場。
しかし、アメリカで健康な朝食を目指すために登場した最初のシリアル「グラヌーラ」が開発されたのはトースターよりはるか前の1863年。中世ヨーロッパでは朝食は上流階級の文化、アメリカ移民の間では一般労働者でも朝食文化はありました。
日本においてもかつては1日2食の時代がありましたが、その2食は朝食と夕食です。1日3食という文化は近代に浸透してきたスタイルと考えてもいいかもしれませんが、朝食という文化は比較的昔からあった文化です。
しかし近年、朝食を抜く人が増えています。
そういう中でシリアルメーカーが朝食宣伝に力を入れているのは事実です。「朝食は大事、だから自社製品を食べて健康に」と宣伝しながらも砂糖たっぷりのお菓子のようなシリアルを販売して、矛盾を感じることもあります。
現代人の生活パターンは、夜更しをし、短い睡眠時間を経て朝起きて、体がまだ目覚めていない状態のまま短時間で朝食を無理やり胃に詰め込んで、急いで登校や出勤。
こういう生活パターンだと朝食が果たして健康にいいのか疑問に思います。
早めに起床して、15分、30分ほど時間が経過すればお腹も空いてきて朝食が受け付けやすくなるかもしれませんが、出勤・出勤時間に間に合うギリギリまで寝ていたいという人も多いため朝食に掛けられる時間はごく僅か、あるいは全くない人もいます。
生活リズムは人によって違うということです。
個人に合ったスタイルでOK
ここまで来ると朝食不要でいいのか?
いえいえ、朝食は必須ではないが軽く摂ったほうが望ましい、というのが個人的な結論です。ただし、胃が受け付けない場合は無理に食べなくていいと思います。
食べたくない人に対して無理やり詰め込んで何が健康的なんでしょうか?
生活スタイル、体質も人それぞれです。全員に同じ型を押し付けるのではなく、それぞれにあった方法が一番だと思います。
私はコーヒー牛乳(ミルク100%)とトースト程度です。健康のために食べるのではなく、食べたいから食べている感じです。
私の場合は朝は甘い系しか胃に入りません。朝に関してはしょっぱい系は無理なので味噌汁とか紅鮭とか塩コショウかけたソーセージとかタレかけた納豆とか無理です。
朝は本能的に受け付けない感じです。朝食以外では胃が受け付けます。
朝食は無理して食べるのではなく、自分が食べやすいものを適量に食べる感じでいいと思います。
入らなければ別に食べなくてもいいと思います。