交差点という言葉は一般的によく使われ、教習所でも学科であちこちで使われているが、この交差点、どこからどこまでが交差点なのか、交差点の範囲を考えたことがあるだろうか?
それぞれの道路が交差している部分だという人、停止線から先が交差点だという人、横断歩道がある場合は含めるのか含めないのか、
まあそんなことはだいたいでいいんだよ、と思うかもしれないが、
交差点の範囲がはっきりしないと、駐停車禁止である交差点から5mまでがどこまでなのかともわからない。右折中に赤に変わったときも行っていいのかわからない。追い越し禁止が始まる交差点30m手前もわからない。右左折の合図の30mのタイミングもわからない。
このうち特に駐停車禁止は5mという狭い範囲であり、交差点端をきちんと把握する必要があります。
このスッキリしない交差点の定義を記事にしました。
道路交通法の交差点の定義
道路交通法での定義は
交差点 十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合における当該二以上の道路(歩道と車道の区別のある道路においては、車道)の交わる部分をいう。
出典:道路交通法第2条5項
道路(歩道と車道の区別のある道路の場合は車道)の交わる部分が交差点。道路なので路側帯も含まれます。歩道があるときは車道の部分まで。
ここから考えるとこんな感じ。
しかし、最高裁の判例では、すみ切りを含む部分までが交差点と解するべきだとした。
裁判例結果詳細 事件番号 昭和42(あ)2933|裁判所ウェブサイト
そうすると下のようになる。横断歩道がない場合は概ね停止線が交差点の境目となるイメージ(ただし交差点によっては停止線位置は差がある)。
富士市都市計画課のウェブサイトを見ても交差点の範囲に関しては同様でした。
横断歩道がある場合は?
これが横断歩道がある場合だとどうなるのか。
警察庁から提供された資料をもとに公益財団法人交通事故総合分析センターが作成した交通事故統計用語解説集では、「交差点は横断歩道や自転車横断帯がある場合はそれらを含み、横断歩道などがない場合は始端垂直説。また、すみ切り部分も交差点に含む。」となっている。
つまり下のようになる。
横断歩道がある場合
交差点の始端垂直方式とは、停止線と同じように各道路垂直に境界線を設けた考え方。斜めに交差するとこうなる。
道路が垂直に交わった交差点であれば始端垂直方式はそのまんまこうなる。
ただしこれは交通事故の統計として考える場合の交差点の範囲である。
信号機の意味として停止位置を考えた場合
信号機を考える上での交差点を見ていくと、道路交通法施行令第2条の備考の1にはこのように書いてある。
この表において「停止位置」とは、次に掲げる位置(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前)をいう。
出典:道路交通法施行令第2条 信号の意味の備考
一 交差点(交差点の直近に横断歩道等がある場合においては、その横断歩道等の外側までの道路の部分を含む。以下この表において同じ。)の手前の場所にあつては、交差点の直前
これは信号に従うときの停止位置の定義を説明したものだが、「停止線があれば停止線直前、交差点に停止線がなく横断歩道がある場合は横断歩道手前が停止位置になりますよ」という意味。ちなみに停止線がない横断歩道はかつて見たことがないです。
この道路交通法施行令にある交差点の意味は信号に従う場合の考え方と捉えるべきであろうか。
この定義でも先程と同じように交差点の範囲はこうなる。ただし停止線があれば停止線直前で停止。横断歩道がある交差点の範囲としては下の図。
どの位置まで進んでいれば赤信号で右左折できる?
道路交通法施行令では、交差点ですでに右左折をしている自動車はそのまま進行できる。と書いてある。
三 交差点において既に左折している車両等は、そのまま進行することができること。
出典:道路交通法施行令第2条 赤色の灯火 3,4
四 交差点において既に右折している車両等(多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両を除く。)は、そのまま進行することができること。この場合において、当該車両等は、青色の灯火により進行することができることとされている車両等の進行妨害をしてはならない。
青信号ですでに交差点内に入り、交差点内で赤信号に変わって右折する場合の交差点の範囲に関しては、停止線から先が交差点内と解釈した自動車雑誌や元教官などの記事ばかりです。まあ目安としてはそれが分かりやすい感じでしょう。
ただ、停止線と交差点の側端が一致しているような交差点もあるが、定義的には停止線は交差点の側端を表す線ではなく、どのような交差点でも停止線を目安にすると、交差点の形態によってはかなり無茶な右折になることも考えられます。
横断歩道がある交差点の場合だと横断歩道にかぶさっていればそのまま右折したほうがいいでしょう。ですがそれでも、直進者の信号無視が多かったり状況によっては右折の発進が大きく遅れます。停止している段階ですでに交差する車両が動き始めたような場合はもう無理に進まないほうが安全です。
その場合は対抗する道路の交通量が多いともう物理的に右折は不可能ですので、後ろにスペースが有れば、邪魔にならないように横断歩道にかぶさらない位置や車両の妨害とならない位置までバックします。この場合は交差点等進入禁止違反にはなりません。
これは警察庁の「運転免許技能試験に係る採点基準の運用の標準」でも交差点等進入禁止違反の減点の対象外となっています。通行の妨害となった場合は違反となる恐れがあります。
横断歩道がある大きな交差点であれば、停止線からちょっと出たくらい(通行の妨害にならないレベル)では無理に右折せずその場で次の信号まで待ったほうが無難でしょう。
交差点進入禁止の条件で考えた場合
道路交通法第50条は交差点等への進入禁止について書いてあるが、ここで停止線が出てくる。
交通整理の行なわれている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点(交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分。以下この項において同じ。)に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない。
出典:道路交通法第50条第1項 (※赤線は当サイトで引いたもの)
ここに、「停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分」と書いてあるから交差点は停止線から先だよ、と思う人もいます。
しかし条文をよく読めば「交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは」と交差点内という部分。交差点内に停止線があればそりゃ停止線(を含めた)から先は交差点で当たり前です。
道路交通法第2条の交差点の定義を元に考えると、交差点内にある停止線とはこういう場合のことで、50条は交差点の定義を書いた条項ではありません。
交差点内にない停止線とは下のような交差点。
そう考えれば停止線は交差点の目安ではありません。
ならこの場合横断歩道を塞いでもいいのかというと、50条は第2項で横断歩道、自転車横断帯に入って停止することになるときはここへ入ってはならないとしています。
横断歩道まで含むときの矛盾
横断歩道までを交差点とする場合、二段階右折がおかしなことになる。
道路交通法での自転車の右折方法の記述。
軽車両は、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
出典:道路交通法第34条第3項
また、原付の二段階右折の記述。
原動機付自転車は、第二項及び前項の規定にかかわらず、道路標識等により交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につき交差点の側端に沿つて通行すべきことが指定されている道路及び道路の左側部分(一方通行となつている道路にあつては、道路)に車両通行帯が三以上設けられているその他の道路(以下この項において「多通行帯道路」という。)において右折するとき(交通整理の行われている交差点において右折する場合に限る。)は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、原動機付自転車は、第二項及び前項の規定にかかわらず、道路標識等により交通整理の行われている交差点における原動機付自転車の右折につき交差点の側端に沿つて通行すべきことが指定されている道路及び道路の左側部分(一方通行となつている道路にあつては、道路)に車両通行帯が三以上設けられているその他の道路(以下この項において「多通行帯道路」という。)において右折するとき(交通整理の行われている交差点において右折する場合に限る。)は、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
出典;道路交通法第34条第5項 一部抜粋
このそれぞれにある「交差点の側端に沿つて」という部分。
横断歩道まで交差点に含ませると、自転車や原付きの二段階右折は横断歩道の上まで大きく膨らんで通っていくことに。交差点も色々あるので横断歩道が少し奥まっていれば大変である。
この2段階右折を考えると交差点の範囲は最低でもこうであるべき。
ウインカーは交差点30m手前から
交差点で右左折するときは交差点手前の側端から30m手前の位置からウインカーを操作することになっています。
その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から三十メートル手前の地点に達したとき。
出典:道路交通法施行令第21条 (合図の時期及び方法)左折するとき
この30mはどこから測るのか、停止線から30mという人もいれば、交差点の隅や隅切り部分から30mという人もいてバラバラです。
警察関係のサイトや運転教本は、停止線ではなく、右左折の30m手前からとしています。
おはようございます🎵#ウインカー は、進路変更の3秒前、右左折の30m手前から。
— 新潟県警察交通部「ひかるくんの交通安全」 (@ni_police_kotsu) December 22, 2020
《合図をしない》《1,2回程度の点滅》での進路変更は、相手から「急に割り込まれた💢」と思われてしまうかも。
特に、路面状況の悪いこの時期は、早めの合図で周りに意思を知らせよう❕#新潟県警 #ひかるくん pic.twitter.com/X0SSFBRPDu
栃木県警のツイートでは、右折のときの図がありますが、ここから見る感じではおそらく右折誘導線(ない交差点もある)になる30m手前で計算しているようです。
皆さん、ウインカーを正しく使っていますか?
— 栃木県警察 交通企画課(公式) (@koutuu_kikakuka) June 4, 2022
右左折や転回時は30m手前、進路変更時は3秒前です。
つまり、交差点の右折レーンに入る際も、右折レーンに入る3秒前から右ウインカーを出さなければなりません。
出さないのは論外ですが、意識していなかった人は次から意識してみましょう。#栃木県警 pic.twitter.com/wT88CbquXp
つまりこの図で見ると、交差点は停止線から先ではないということになります。ただしこの図の停止線がでそこまで考えているかは疑問はあるが。
教習所の教官は停止線から30m手前でウインカーを操作するように教えることがあります。この30mの目安は、破線であった車線境界線が停止線から30m手前からは実線になっていることが多いため(全部ではない)。
ただ、交差点によっては停止線が大きく手前にある場合もあり、そうなると警察関係のサイトや運転教本の図よりかなりずれることになります。
また、交差点手前の30mは ひし形マーク(横断歩道又は自転車横断帯あり)の道路標示を目安にすればいいと言う人がいます。この道路標示は信号機がなく横断歩道等がある道路、または横断歩道等の存在がその手前から十分に認識できない道路が対象で設置されます(一時停止規制がある場合は省略できる)。
この表示は連続で2個あり、横断歩道等の手前の側端から1個目のひし形の中心位置までが30mです。2個目は1個目から10-20m離れる設置基準とされます。ただ、交差点の手前に横断歩道等がなく、交差点の向こう側に横断歩道等がある場合、そこから30mとなりますのでウインカーの目安には微妙な場合もあります。
このひし形マークは交差点の30m手前を示す表示ではないということです。ひし形マークから交差点の範囲を知ることは厳しいです。
駐停車禁止は交差点をどう理解するべきか
駐停車禁止でも交差点という言葉が出てきます。ここではどのような交差点の範囲で考えるべきでしょうか?
一 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
二 交差点の側端又は道路の曲がり角から五メートル以内の部分
三 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に五メートル以内の部分
出典:道路交通法第44条第1項第1号から第3号まで(停車及び駐車を禁止する場所)
駐停車禁止における交差点の図はどこを見てもやはりこのような簡素なものです。
【#駐停車 、#駐車 の禁止場所】
— 北海道警察本部交通部 (@HP_koutuu) October 30, 2020
駐車違反には、様々な違反態様があります。
歩道上も駐車違反になります。
歩道は「歩行者のためにある」のです。
車は駐車場等に駐車しましょう。 pic.twitter.com/ZUbKmb3b8S
交差点から5m以内の駐停車禁止に関しては、横断歩道がない場合は隅切り部から5m。
しかし横断歩道がある場合、交差点及び横断歩道の側端から前後5mが駐停車禁止となる。
停止線から先を交差点とすると・・・?
停止線から先が交差点であると主張するネット上の声はとても多い。
この場合の交差点の範囲はこうらしい。反対車線は停止線がないが、停止線を反対車線まで延長して考えるらしい。この場合、例えば大型車の左折などを考え停止線が大きく後退している交差点だとこうなる。
停止線から先が交差点であるという根拠として、「赤の場合は停止位置を越えてはならない、だから青信号で停止線をすでに超えているときに赤に変わって右折しても合法である。」ということで、これを元に停止線から先が交差点であるという解釈らしい。
赤色の灯火
出典:道路交通法施行令第2条
車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。
ただ、その解釈はやや疑問が残る。
赤の灯火の意味を見ると、これは直進や右左折を限定していない。となるとこれは直進でも当てはまるのか?
そうなると、同じ道路交通法施行令第2条になぜ右左折だけ特別な記述があるのか?
交差点において既に右折している車両等(多通行帯道路等通行原動機付自転車及び軽車両を除く。)は、そのまま進行することができること。この場合において、当該車両等は、青色の灯火により進行することができることとされている車両等の進行妨害をしてはならない。
出典:道路交通法施行令第2条
ならばこのようにわざわざ右左折が可能と書く必要がないはず。ここには交差点ならOKとあり、停止位置(停止線がある場合は停止線)を超えたならOKとは書いてない。つまり停止線から先が交差点というわけではない裏付け?
赤の灯火の意味をよく見ると、赤信号は「停止位置を越えてはならない」ではなく「停止位置を越えて進行してはならない」である。
平成25年(う)第1744号危険運転致死傷被告事件の東京高等裁判所第1刑事部判決では、道路交通法施行令第2条にある信号機の意味は、「黄色信号では例外が定められているため、赤信号は停止位置を超えることを禁止するだけでなく、停止位置を越えてからの停止も義務付けるものである」とされた。
黄色の意味は停止線を越えて進行できないであるが、安全に停止出来ない場合を除くとなっており、この場合は停止線を越えて進行できる。つまり「停止線を越えて進行」とは交差点を通過する意味合いまで含まれていると解釈した感じである。
つまり、停止線手前で赤だった場合は停止線を越えることが出来ないだけでなく、赤信号の交差点を突破できない。
最も問題なのが、停止線から先を交差点とすると、交差点の側端に沿って徐行しなければならない原付の二段階右折がとんでもないことになってしまうこと。
交差点が停止線まで含まれるという根拠が道路交通法からは見えてこない。
結局どうなのか・・・結論
交差点の範囲は結局どうなのかと言うと、道路交通法での交差点の定義は、道路交通法第2条のとおり、道路(歩道は除くが路側帯は含まれる)が交差している部分(隅切りは含まれると考える)。定義としてはこれ。停止線なんかは関係ない。
ただ国土交通省の「交差点のコンパクト化」を見ると、横断歩道を交差点中央に寄せて交差点を狭くする(隅切り部分にまで寄せて設置)事業があります。国土交通省の考えでは、交差点は横断歩道がある場合は横断歩道が交差点の範囲に関係していると解釈すれば、交差点は交差する部分の隅切り(隅切りの外側に横断歩道がある場合もあるため)が関係なくなる。
こう考えると交差点とは、交差点という言葉を使用した会話の中で、その話が何を論点にしているのか(信号機に従う場合の話か、右左折ウインカーのタイミングの話か、2段階右折時の話か、交通事故の起きた場所の話かなど)によって、その意味する範囲が使い分けられているという感じです。