特定小型原動機付自転車(特定原付)の電動キックボードの通行方法が自転車とほとんど同じと言われることがありますが、じつは完全には同じでは有りません。この通行に関するルールの違い3つを紹介。
車体の規格の違いや右左折のウインカー操作の違いなどそういった構造的な違いではなく、交通ツールに関する違いを記事にしました。
自転車道があれば自転車は強制だが
自転車道がある道路では、普通自転車は自転車道を通行しなければならない。つまり自転車道がある道路では普通自転車は車道を通行できない。
自転車道がある道路では、特定原付は自転車道を通行できる(20キロモード)。このとき、車道を通行することもできる(20キロモード)。
以下その根拠を書いていきます(長くなるので飛ばしてもいいですw)。
自転車道とは下の標識がある道路の部分です(車道の部分含む)。特定小型原動機付自転車と普通自転車以外は通行できません(自動車・一般原付、遠隔操作型小型車、普通自転車以外の自転車、歩行者は通行禁止)。
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令では、道路標識325の2を通行できるのは特定小型原動機付自転車及び普通自転車のみ。
交通法第八条第一項の道路標識により、特定小型原動機付自転車及び自転車(これらの車両で交通法第十七条第三項の規定により自転車道を通行してはならないものを除く。以下この項及び次項において同じ。)以外の車両及び歩行者等の通行を禁止すること。
出典:道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 特定小型原動機付自転車・自転車専用(325の2)
道路交通法第17条第3項では自転車道の通行規制について。特定小型原動機付自転車と普通自転車以外は自転車道を通行できない。
特定小型原動機付自転車(原動機付自転車のうち第二条第一項第十号ロに該当するものをいう。以下同じ。)、二輪又は三輪の自転車その他車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものとして内閣府令で定める基準に該当する車両(これらの車両で側車付きのもの及び他の車両を牽けん引しているものを除く。)以外の車両は、自転車道を通行してはならない。ただし、道路外の施設又は場所に出入するためやむを得ないときは、自転車道を横断することができる。
出典:道路交通法第17条第3項
道路交通法第63条の3は、自転車道がある道路では普通自転車は自転車道を通行しなければならないというルール。つまり自転車道があれば普通自転車は車道の通行ができない。しかしここに特定原付は含まれていません。
車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽けん引していないもの(以下この節において「普通自転車」という。)は、自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない。
出典:道路交通法第63条の3
つまり自転車道がある場合は、普通自転車は自転車道を通行し、車道を通行できない。
しかし特定原付(電動キックボードなど)は自転車道がある道路で、自転車道でも車道でもどちらでも通行できます。
歩道走行の特例(法63条)が特定原付にはない
普通自転車は、普通自転車が通行できない歩道であっても、道路交通法第63条の4第1項第2号第3号(70歳以上や、車道が安全ではないときなど。)が当てはまる場合は歩道を通行することができる。
特定原付(特例特定原付)は法第63条の4第1項第2号第3号の条件が適用されない。
根拠を書いていきます。
特例特定原付(6キロモード)や普通自転車は、「普通自転車等及び歩行者等専用の標識 325の3」または「特例特定小型原動機付自転車・普通自転車の歩道通行部分 標示114の2、114の3」がある歩道を通行することが出来ます。(普通自転車は道路交通法第63条の4第1項第1号。特例特定原付は道路交通法第17条の2第1項。)
この3つのどれかがあればOK。
(※標示114の2か、114の3があれば標識325の3は設置しなくても通行が可能(警察庁の交通規制基準より))
しかし道路交通法第63条の4第1項第2号、第3号の条件の場合は、普通自転車は標識や標示がない歩道でも通行することが出来ます。
普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。ただし、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときは、この限りでない。
出典:道路交通法第63条の4第1項 ※赤色マーカーは当サイトでひいたもの。
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
ただし道路交通法第63条の4は普通自転車であって特例特定原付のことではありません。よって特定原付はこの条件は適用されません。※第1号の道路標識等は特例特定原付が含まれた標識等です(標識 325の3、標示114の2、114の3)。
よってこういう場合は、特定原付では、車両のメイン電源を切って、降りて、歩道を押して歩くしかありません。
並進=自転車(禁止)、特定原付(OK)
自転車同士(軽車両同士)では並進してはいけない(※特定原付とは並進できる)。
特定原付同士は並進可能。また軽車両(自転車など)とも並進できる。
以下その根拠です。
軽車両は、軽車両が並進することとなる場合においては、他の軽車両と並進してはならない。
出典:道路交通法第19条
※ただし道路標識等で並進可になっている場合は2台並進まではOK(道路交通法第63条の5)
つまり、特定原付同士で並進しても道路交通法19条違反とはなりません。また、自転車に乗っているときの並進禁止は軽車両(自転車など)が対象であり、自転車と特定原付(特例モード含む)とが並進しても道路交通法19条違反ではありません。
ただ、特定原付での並進が禁止ではないと言っても、やはり並進は歩道内でやっても自転車道でも車道であっても、迷惑であり危険。並進はおすすめしません。
特定原付の法定速度は30、自転車にはない
特定原付の法定速度は20km/hだろ!とツッコミが入りそうですが、そのような条文はありません。
特定原付の法定速度は30km/h。
自転車には法定速度がない。
以下その根拠です。
法第二十二条第一項の政令で定める最高速度(以下この条、次条及び第二十七条において「最高速度」という。)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(第二十七条の二に規定する本線車道を除く。次条第三項及び第二十七条において同じ。)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては六十キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては三十キロメートル毎時とする。
出典:道路交通法施行令第11条
道路交通法施行令第11条では原動機付自転車の最高速度は30km/hとなっています。
特定小型原動機付自転車(特定原付)は原動機付自転車(原付)の中の一つであるため、法定速度はこの30km/hが適用されます。
原動機付自転車のうち、車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として一定の基準に該当するものを「特定小型原動機付自転車」と定義することとする。
出典:道路交通法の一部を改正する法律要綱|警察庁
特定原付は構造上、平地で駆動力として20km/hを超える速度が出ないようになっていますが、モーター出力をカットしたリミッター方式であるため、下りでは20km/hを超えることもあります。この場合、30km/hを超えると速度違反となります。(※ただし特定原付にはスピードメーター装備の義務がありません。)
自転車の場合は法定速度が有りません。30km/hを超えても法定速度違反とはなりません。しかし指定速度がある道路ではその指定速度を超えると自転車でも速度違反になります。
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。
出典:道路交通法第22条
指定速度については道路交通法第22条にあり、車両に対して規制がかかります。そのため自動車だけでなく自転車も例外なくこの対象です。
自転車には法定速度は有りませんが、だからといって60km/hや70km/hで道路を走っていると道路交通法第70条の安全運転義務に違反する可能性があります。僕がいた高校では自転車部が国道の下りで78km/hを出し、パトカーに静止されられて危ないと注意された話を聞いたことがあります。
自転車のヘルメットは自動二輪用よりも遥かに貧弱で、また軽装で乗る人が多いので、あまりに高い速度で転倒すると非常に危険です。安全運転を。