天気専門番組のウェザーニュースを見ていると、よく耳にするのが天気痛。
これは気圧や気温、湿度などの変化による頭痛や関節痛などの症状のことらしい。雨が降ると古傷が痛むなど昔なにかのセリフで聞いたことがありますがこれも天気痛のことらしい。
ウェザーニュースでは天気痛予報というものまで毎日放送で流していて、ウェザーニュースアプリでは天気痛をお知らせする機能まであって事前の対策を呼びかけています。
まるで花粉症レベルの騒がれ方(扱われ方)だが、一部の層に対してだけではなく、天気痛予報マップを出すなどまるで国民全般に訴えかけているようで、ここまで大きな全体問題として取り上げねばならないほど深刻なものなのか?
天気痛とは
気象病(天気痛)は気圧や気温、湿度の変化によって起こる症状で、頭痛や関節痛その他様々な症状がある。
科学的根拠はあるのか
wikiでどうまとめられているのかサラッと見てみると、日本語wikiでは近年認知される病名とまとめられているが、メカニズムは不明と記載。英語wikiでは、昔から言われていた症状であるが科学的には支持されていないとしている。
科学的根拠は結局統計に頼るのみとなっているのが現状で、メカニズムは不明。
関連性があるとする研究
関節痛や筋肉痛み、睡眠の困難に有意な差があった。
Patients labeled as being ‘weather sensitive’, defined by greater than median scores on the WPQ, reported significantly greater pain intensity, greater chronicity of pain problems, and more difficulties sleeping than patients with low scores on the WPQ.
Source: Pain complaint and the weather: weather sensitivity and symptom complaints in chronic pain patients
Shutty, Michael S. Jr.∗,a,b; Cundiff, Garyb; DeGood, Douglas E.bAuthor Information
Pain: May 1992 – Volume 49 – Issue 2 – p 199-204
doi: 10.1016/0304-3959(92)90143-Y
関連性が見られなかったとする研究
4年間にわたる1,000万人を超えるデータでは降雨と関節と腰痛の間に関係は見られなかったという研究。
In a large analysis of older Americans insured by Medicare, no relation was found between rainfall and outpatient visits for joint or back pain.
Source: Association between rainfall and diagnoses of joint or back pain: retrospective claims analysis
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5326 (Published 13 December 2017)
Anupam B Jena, Ruth L Newhouse associate professor of health care policy and medicine, Andrew R Olenski, graduate student, David Molitor, assistant professor of finance, Nolan Miller, professor of finance and Julian Simon faculty fellow
その他に
Do Your Aches, Pains Predict Rain? – MedicineNet
https://www.medicinenet.com/script/main/art.asp?articlekey=52133
天気痛をここまで取り上げる必要があるのか
ウェザーニュースとロート製薬が共同で行ったアンケートでは女性の8割が天気痛という結果を出しています。
ユーチューブサイト上のウェザーニュースチャンネルの動画です。
雨が降ると古傷が痛む・・・などという言葉を漫画か映画かで聞いたことがある。しかし実際そういう人にあったことがない。寒い冬場なら分かるが湿度や気圧の変化でくるのだろうか。
それと、低気圧の通過程度の気圧の変化で頭痛が来るのも聞いたことがない。
例えば飛行機に乗って離陸すると機内は30分ほどで0.8気圧(810.6ヘクトパスカル)になってしまうが、気圧がここまで違っても多くの人は平気です。間違っても具合が悪くなる人が8割なんていない。
ただ、機内の環境は地上とはかなり違うために中には頭痛や吐き気がする人が一定割合でいるかも知れない。しかし機内の場合は機体の揺れによる飛行機酔いや飛行機恐怖症、国際線であれば時差ボケや睡眠不足やストレスもあるためそれらが原因となっている場合もある。
低気圧通過などたかだか10から20ヘクトパスカル程度の僅かな気圧変化ですが、100m登ると気圧は10ヘクトパスカル下がります。これは標高差で言うと100mから200mのビルに登った気圧差と同じです。
高いビルにエレベーターで上って頭痛などの天気痛が起こるのでしょうか?起こる人もいるでしょうが低気圧のときよりかなり少ない気がします。
この気圧差で頭痛など起こるなら、離陸から30分で200ヘクトパスカルも下がる飛行機内だと耐え難きレベルになるような気もします。
このアンケートは自己申告であり自己診断。病院で検査したわけではない。頭痛などが起きてもそれが天気痛なのか素人個人では診断はできない。頭痛の原因は多いだけに特定は困難です。
さらにロート製薬はキアガードという天気頭痛に効く製品を販売していて、ウェザーニュースはロート製薬のキアガードの宣伝をしている。つまりこのアンケートには透明性がありません。
また低気圧で天気痛が起こるという知識を前もって植え込められた人の場合、プラシーボ効果で頭痛が起きている感じがするかも知れない。
雨の日に頭や関節が痛むと言っても、雨の日は晴れた日と比べ、屋外には出かけず屋内にとどまり生活スタイルが違うことがある。雨の日は暗いために室内灯のLEDの光に当たり続けたり、ずっと同じ姿勢でいることなどが原因となっている可能性もある。
気温が低い日は筋肉や腱、関節液などが冷えて弾力性を失い、その結果固くなって痛みが出やすくなることはあるかも知れない。特に腱を断裂したり怪我した場所は組織が線維化している可能性があり、線維化した組織は本来の腱に比べ弾力性などが劣り、気温の変化が感じやすくなるのかも知れない。
例えばゴムも冷やせば曲げた時に損傷しやすくなる。人間の細胞も同じで、冷えた状態では痛めることがある。つまりスポーツでのウォームアップはこれらを温め怪我を予防し、パフォーマンスを上げることにある。
最後に
私は天気痛に肯定も否定もしません。
天気痛については科学的なメカニズムが解明されておらず、結局頼るところは統計データのみというのが現状。
ただ、天気痛が存在しないと結論が出ているわけでもありません。今後の研究に期待と言いたいところですが、私の周りでは低気圧の通過レベルの気圧の変化での頭痛などの話は一切聞かない。
ですが、ウェザーニュースでは毎日「天気痛予報」をマップ付きで流している。多くの人が発症する花粉症予報はわかるが、天気痛予報はちょっと無理矢理感が強すぎるのではないかと、そういう気がします。
天気痛さえも知らないまま健康に生活している人はかなり多いと思いますが、天気痛をここまで大きく取り上げて一般市民に興味をもたせる必要性が果たしてあるのかというのが率直な感想です。