昔は当たり前だった学校でのぎょう虫卵検査。
ぎょう虫とは人に寄生する寄生虫であるが、このぎょう虫卵検査は近年は学校の健康診断では行われていない。
どういった経緯でぎょう虫卵検査が始まり、そして義務ではなくなったのか、過去の歴史を振り返る。
ぎょう虫検査の歴史
学校で行われていたぎょう虫卵検査は1958年(昭和33年)から義務化され、学校保健法施行規則の改正で義務対象が徐々に狭くなった後に、2014年にすべての児童生徒等で必須項目から削除。
そしてこの改正は2016年に施行され、ぎょう虫卵検査がほとんどの学校から消えた。
※これは義務ではなくなったということ。検査が完全に無くなったということではありません。
- 1958年学校保健法施行規則が6月13日に公布され、寄生虫卵の検査は公布の日から施行
幼児、児童、生徒又は学生(通信による教育を受ける学生を除く)の健康診断で寄生虫卵の検査が必須の検査項目となる。
- 1973年学校保健法施行規則の一部を改正する省令(昭和48年文部省令第12号)が5月17日に公布
小学校(全学年)以下が義務へと対象が狭くなる。中学生以上は検査項目から除くことが可能(省略可能)になった。公布の日から施行。
- 1994年学校保健法施行規則の一部を改正する省令(平成6年文部省令第49号)が12月8日に公布
小学校低学年(3年生以下)が義務へとさらに対象が狭くなる。小学校高学年(4-6年生)、中学生以上は検査項目から除くことが可能(省略可能)に。1995年4月1日から施行。
- 2014年学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令(平成26年文部科学省令第21号)が4月30日に公布
寄生虫卵の有無の検査について、必須項目から削除される。2016年4月1日から施行。
ぎょう虫検査が始まった理由
日本人の寄生虫卵保有率は当時の内務省の調査によれば、戦後の1927年の検査から1950年代初期まで7割から4割という非常に高い保有率を推移していて、学校保健法案があった1954年も国民の寄生虫卵の保有率は5割と高く、寄生虫症は国民病であった。
このため、衛生環境の改善や寄生虫卵の検査や治療をし、国を上げて全力で改善する必要があった。
ぎょう虫検査が消えた理由
平成25年12月6日に行われた「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」によれば、昔は検出率が高かった寄生虫卵が、衛生状態などが良くなった現代では、検査による検出率が極めて低くなっていて、検査をする意義が殆どなくなってしまったということ。
衛生状態の良い現代において、医学的・疫学的には、学校で寄生虫卵の検査をする意義はかなり乏しい。実際に、寄生虫卵の検査の検出率は極めて低く、ここ10年間、1%以下で推移している。また、学校現場からも、寄生虫卵の検査は不要ではないかとの声も多い。
出典:第9回 今後の健康診断の在り方等に関する検討会|文部科学省ウェブサイト
現在、ほとんどの学校で、寄生虫卵検査としてぎょう虫卵検査を実施しているため、寄生虫卵検査を考えるに当たっては、ぎょう虫卵検査について検討することが妥当であるが、ぎょう虫は、通常の衛生教育で十分に対応できる病気とされている。現状の寄生虫の状態を鑑みると、手洗いや清潔の保持という基本的な衛生教育を引き続き徹底することにより、寄生虫卵の検査を省略してもよいと考えられる。
出典:第9回 今後の健康診断の在り方等に関する検討会|文部科学省ウェブサイト
東京都予防医学協会年報 2014年版 第43号によれば、東京都予防医学協会が行った検査によるぎょう虫卵の検出率が1959年当時は25%台だったが2012年には既に0.1%台となっている。
こういった経緯から約60年近く続いたぎょう虫卵検査は学校の健康診断から消えました。
ぎょう虫ってヤバイの?
ぎょう虫は人に寄生する寄生虫ですが、寄生虫と聞くと恐ろしいイメージがよぎる人も多いかと。
しかし、ぎょう虫は人体にはほぼ無害。寄生しても人が病気になったり死んだり、体に穴が空いたり、手術が必要になったりするものではなく、主な症状は肛門周辺が痒くなる程度。もちろんあまり掻きむしれば細菌感染を起こすことがありますが。
ぎょう虫は薬を飲むと駆除できます。なので特に不安になったり恐ろしいというものではありません。