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河野大臣がビワの種子を注意喚起→毒は嘘だと陰謀系Twitter民

びわの種子には高濃度のシアン化合物が含まれていて、大量に食べると危険だということは2017年2018年に農林水産省、国民生活センターなどから注意喚起が出ていましたが、最近Twitterでびわに関するデマが広がっています。

びわの種ががんに効くという根拠はどこからきたのか、びわの種商品が売っているがこれは安全なのか、調べました。

びわの種子の注意喚起

そもそもの始まりは反ワクチン派によるデマのようです。ターボ癌(反ワクチン派が造った言葉で正式には存在しない。コロナワクチン接種後に急に進行する癌を言いたいらしい。)にびわの種が効果があると、2022年12月辺りから反ワクチン派がツイートし始めた。

人から聞いた「がんが治った」という体験談をツイートするパターンがいくつも見られた。この影響か、今度種を粉砕してみようという危険なツイート(粉砕すると酵素がはたらいでアミグダリンが分解され有毒なシアン化合物が発生する)まである。

びわの種子のデマが広がったため、河野大臣が注意喚起のツイートをしました。

農林水産省は2017年にびわの種子に関しての注意喚起ツイートをしています。

ただ、農林水産省の「ビワの種子の粉末を食べないようにしましょう」という一括りにした表現は現在ではやや行き過ぎた感じはします。河野大臣は、「食べないように」ではなく「大量摂取に気をつけましょう」と呼びかけている。

これは2017年当時、加熱で無毒化したはずのビワの種子粉末製品から高濃度の有毒なシアン化合物が検出され回収騒ぎとなり、当時は用量の目安などの注意書きがないものもあって食べ過ぎも懸念された。安全性での緊急手段として、食べないようにと呼びかけたのだと思います。もちろん当時も問題はない商品はあったが問題ありの商品もあって消費者にとってはリスクがあったため。

現在はメーカー自主検査でシアン化合物が10ppm(100gあたり1mg)以内になるように指導されていて、きちんとしたメーカーであれば、よほど食べすぎない限りはほぼ問題はないものです。ただし生でびわの種子を食べると大変危険で、また自分で作ったりすると十分に無毒化出来ていないこともあります。

デマが広がったことで、Twitterに影響力のある河野大臣、NHKなどは「びわの種子にはガンに効果がなく危険性もある」という正しい情報の呼びかけをしました。しかしTwitterの陰謀系アカウントやびわの種信仰者は「農林水産省や河野大臣のほうがデマで、びわの種子はガンに効いて毒もないのでどんどん食べよう」と反発を始めます。

正しい情報としては、びわの種子はがんに効果はないし、シアン化合物は毒です。ただ、しっかりと加熱加工などすることで、ほぼ無毒化され食べられるようにはなります。それでも若干有毒成分が残っている場合があるため食べ過ぎは注意が必要です。

がんに効くというソースはどこ?

種子に含まれるアミグダリンという成分がガンに効くと一部の人に信じられています。びわの種の方には葉の1000倍を超えるアミグダリンが含まれているというらしい。

おそらく、アミグダリン(がん治療薬としての名前はレートリル)が昔、新しいがん治療薬として持ち上がっていたという歴史を今でも信じて主張しているものと思われます。

アメリカの国立癌研究所 (NCI)によれば、1845年にロシアで、1920年代に米国で癌治療として初めて使用。しかし毒性が強すぎるので中止。

1950年代に非毒性とされてた静脈内投与タイプがレートリルとして特許。

1970年、治験として申請され、一旦承認されたが動物実験で有効性が低かったため、のちに却下。

急に方針を変えたためFDAの陰謀として疑われ、アメリカのいくつもの州で訴訟が起こる。1970年代に20以上の州で合法化される。

しかし1980年に最高裁で禁止を指示する判決。

これが現在までこじらせている原因です。

現在ではアミグダリンがガンに効果がないというのはすでに世界共通の科学的見解で、アメリカでも欧州でも禁止。しかしいまだにがん治療薬レートリル(アミグダリン)の熱烈な支持者は多くいて、これを医療界の陰謀だと主張しています。

現在はアメリカでも欧州でも日本でも否定されています。

イギリスの非営利団体Cancer Research UK。
Laetrile (amygdalin or vitamin B17)|Cancer Research UK

マウス実験でがんへの有効性が示された?

アミグダリンががんに効果を示すとする論文ももちろんあります。しかし有効性があるとする論文があったからとすぐに医療ガイドラインは決定しません。同じテーマの研究でもいつも同じ結果ではありません。白と出る研究もあれは黒と出る研究もあるのです。

研究論文は質が高いものばかりではない。規模が小さかったり、再現性が低かったり、不正や捏造も多い。透明性が低いものもある。

このため医療ガイドラインを作るときはあらゆる論文を偏ることなくたくさん集め、専門家たちで一つ一つ質を評価していきます。この医療ガイドラインはエビデンスピラミッドの頂点です。

陰謀論者は主張するに都合の良い論文だけを取り上げて科学的根拠だと主張します。これを見た人はそれが正しいと信じ込んでしまいます。しかしそれらの論文も何もかも含めて評価したのが医療ガイドラインです。つまり陰謀論者の主張する論文は質が低いものとして評価されなかったということです。

これは定期的に再評価されます。もちろん今後、変わる可能性もゼロではありません。ただ現時点では確証的な有効性は認められていません。

びわの種の市販品があるが大丈夫?

農林水産省主催の長崎県特産品新作展奨励賞受賞したびわの種甘露煮があるのに、「びわの種子をたべないように」というのは矛盾しているというツイートがあります。

受賞しているのは「入来屋の長崎産びわのたね甘露煮」ですが、これは8時間以上ゆでこぼしを行いながら煮ていてアミグダリンもシアン化合物も入っていないとのこと。

ん?びわの種に入っているはずのアミグダリンが入っていないということは分解されシアン化合物になったということでは?という疑問もありますが、アミグダリンはやや水溶性のため、8時間煮込んでお湯に溶けだしたのでしょう。

現在市販品は食品衛生法で規制され、シアン化合物が10ppm以下になることとなっており、用量を守れば安全です。

過去にはアミグダリンが高濃度で検出された例もあります。2018年に国民生活センターで注意喚起されています。

ただし、もしかしたら現在もこのような商品はある可能性がありますので、シアン化合物が基準内であるという旨の表示があるかを確認するべきです。また基準内でも過剰摂取には注意で、用量を守ることで安全に使用できます。

加熱することで分解酵素を失活できる

アミダグリンそのものに毒性はなく、アミグダリンは分解酵素で分解されることで有毒なシアン化物となります。よって加工で粉砕したり粉にしたり咀嚼したりするとびわの種子の分解酵素がはたらいでシアン化合物が発生します。また口から摂取することで腸内にある分解酵素でシアン化合物が発生します。

しかし、アミグダリンはしっかり茹でて加熱することで分解酵素を失活できます。つまりアミグダリンは酵素で分解されず、有毒なシアン化合物を生成しなくなります。

ただメーカー市販品の加工され無毒化されたものならともかく、これを自分で調理しようとするなら一定のリスクはあります。どこまで加熱すればいいのか、また有毒なシアン化物の数値など測定できないからです。

びわの種は何個食べると致死量?

農林水産省によると生のびわの種子(2g)には2.4-5.9mgのシアン化合物が含まれているということです。

これはびわの種子に2.4-5.9mgのシアン化合物が直接含まれているということではなく、未加工状態の生のびわの種子にはシアン化合物ではなくアミグダリンと言う形で存在します。

これはびわの種子のアミグダリンに酵素を働かせ分解させシアン化合物を生成させたときの数値です。つまりびわの種のアミグダリンが分解されたときにそれだけのシアン化合物が生成されることを意味します。

加熱などで種子の酵素を完全に失活させた場合はアミグダリンが分解されずにシアン化合物は生成されません。

英国公衆衛生庁(PHE)によるとシアン化水素経口致死量は50-90mg。

のびわの種子1個でシアン化合物が5.9mg生成されれば、致死量は8個から15個となります。ただこれは生の種子の場合の話です。

十分に加熱処理し、酵素が失活されればシアン化合物が生成されず毒性はほぼなくなります。ただし加熱が不十分で酵素の失活が不十分であれば、食べたときにシアン化合物が生成され、食べた量によっては中毒が現れる可能性もあります。

言えることは

生では絶対に食べるな!

シアン化水素 毒性の概要|英国公衆衛生庁(PHE)
Hydrogen Cyanide Toxicological Overview|Public Health England

まとめ

びわの種子はがんに効果はありません。

びわの種子には有害物質が含まれていますが、びわの種子の粉末製品でも、食品衛生法で規制されたシアン化合物濃度が10ppm(100g中1mg)以内のものであれば容量を守って安全に摂取できます。

このシアン化合物濃度が基準値内に収まっているという旨の表記がちゃんとあるものを購入すること。また摂取目安量を守って摂取すること。

じゃあ無毒化した市販品はがん治療目的で安全に摂取できると思う人がいるかもしれないが、彼らはびわの種のアミグダリンが酵素で分解されてがんを破壊するという主張です。

しかしアミグダリン目的で買う人達が、酵素が失活され分解されないアミグダリンを食べて何がしたいのかという矛盾。つまりそれを食べてがんが治ったという体験談を言う人は、別の原因で治ったか、あるいは誤診だった、または話が捏造されたもの。

しかも仮に酵素が失活されていなくてもアミグダリンはがん治療に効果はないどころかそれが有毒で、大量に食べると危険である。

つまりどっち道がん治療目的でびわの種子粉末を飲食しても全く意味がないということ。

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