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BMIと寿命の関係を語る上での大きな落とし穴

痩せている人よりも、やや太っている方が長生きする。ということが近年よく言われています。

大規模なコホート研究でBMIと死亡リスクの相関性が評価されたことで一気に広まりました。

しかしふと疑問に感じませんか?BMIといっても生涯一定ではない。人によってはかなり変化する。

一定ではないのにどうやって評価できるのか。若い時期に痩せていて、中高年で太った場合、BMIは高いグループとして扱われているのか。

BMIと寿命の関係

BMIと死亡リスクの関係を大規模コホート研究で評価し、死亡リスクが低いのはBMI21–27であると結論づけたレビューがあります。

Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies.
Sasazuki S, Inoue M, Tsuji I, Sugawara Y, Tamakoshi A, Matsuo K, Wakai K, Nagata C, Tanaka K, Mizoue T, Tsugane S; Research Group for the Development and Evaluation of Cancer Prevention Strategies in Japan.
2011 Volume 21 Issue 6 Pages 417-430
https://doi.org/10.2188/jea.JE20100180

これによれば死亡リスクはBMIが27–3021–23<19–2130–40<14–19と小太りが死亡リスクがもっとも低く、痩せ型が死亡リスクが高い。

これだけを見て、世間一般では小太りが長生きと言い始める。だがこれはBMIと死亡リスクであって、BMIと寿命ではないのです。BMIと寿命という表現にすると、事情はかなり複雑になります。

生涯における肥満度の変化の一例

年齢20–2930–3940–4950–5960–6970–7980–89
Aさん痩せ痩せ痩せ痩せ痩せ痩せ小太り
Bさん標準肥満肥満肥満肥満痩せ

BMIと寿命の関係というような解釈にすると、例えば上の表のAさんように痩せている時期が長かったパターンがあった場合、これを「小太りは長生きする」と表現していいのか

Bさんの場合「痩せ型は小太りより長生きしない」と表現していいのか。それともAさんは痩せ型でBさんは肥満型と解釈するのか。

コホート研究はBMIからみたその年令での死亡リスクであるが、世間一般はBMIと寿命という捉え方である。

これは意味合いが異なります。BMIと寿命の2つを絡み付けるとこういう問題が出てくるからです。いつの時点でのBMIでどのようにカテゴリ分けして語っているのかという問題。

BMI、体脂肪量、体脂肪率は厳密には意味合いが違う

ボディマス指数 BMIは単なる体重と身長の関係でしかなく、体脂肪量ではないのでBMIが高いからと言って必ずしも肥満とは限らない。

つまりパワー系のスポーツ選手やボディビルダーのように極度に筋量が多く体重がある人には当てはまらず大きく異なる。

しかしそこまで大きく異るタイプは人口比で言うと極めてごく少数なので、不特定多数の大規模な統計で傾向を評価する場合はBMIは肥満の目安と見て差し支えないと思います。

そういう理由でこの記事はBMIを肥満の目安として話を進めています。

ちなみに体脂肪率もイコール体脂肪量ではありません。

体重に占める脂肪の割合なので脂肪が多くても筋量が多いと数値が低くなります。痩せた男性が体重50kgで体脂肪率10%であれば脂肪量5kgですが、ボディビルダーで体重100kgで体脂肪率5%でも脂肪量は5kgになります。

同じ脂肪量でも筋量が多い人ほど体脂肪率は低めになります。

過去の長年のBMIがどうであったかを考慮していない

この大規模コホート研究は生活習慣などで影響がでないように補正がかけてあります。平均12.5年の追跡調査ということでその間の死亡リスク。BMIは研究に参加してからの数値のようで過去のBMIがどうであったかは要素に入れていない。

しかもそのBMIは自己申告。

がん死亡率は極度に痩せているタイプが死亡リスクが最も高くなっていますが、これは痩せているからがんになって死亡しやすいというのではなく、がんになったから痩せてしまうと見ることもできます。

がん患者を集めて傾向を見た場合、痩せている方が死亡リスクが高くなっていますがそれは当然じゃないですか。この痩せたタイプの人も研究に参加する前の過去の数十年は太っていたパターンもあるかもしれません。

まずこの研究で気になった点は、追跡期間平均12.5年のいつの時点でのBMIのことを指しているのかということ。BMIを毎年自己申告させて12.5年の平均値をとったなどそういったことは記されていないようでした。

ここが一番重要。いつの時点でのBMIなのか、平均値なのか。

つまり長い人生における中で、中高齢期のごく短い期間あるいは1点のみのBMIだけで見てその時点からの死亡リスク。これをBMIと寿命の関係という見方をしようものならば意味がない。現在痩せた若い人たちが、自分は食べて太れば寿命は伸びると勘違いしてしまう。

太っている人は長い人生においてずっと太っていたとは限らない。

BMIの変化は人によって違うし1年でガラリと変わることもある。中高年の参加した時点からのBMIでの死亡リスクであるにも関わらず、それを世間一般がBMIと寿命の相関性というような言い方は納得がいきません。

寿命というのは過去における何十年もの長い間での生活習慣などの積み重ねが寿命に大きく影響するからです。

若い時期から中年期という何十年もの間で規則正しい生活習慣で健康を保っていれば、高齢期に多少肥満になってもそれが健康に影響が出るまでにはかなり時間がかかるでしょう。

青年期から中年期にかけてのツケはその後の健康状態に影響します。

例えば血管に溜まったプラークが長い年月で石灰化してしまった場合、その後生活習慣を改善して血液検査が正常値へ戻っても石灰化した血管は元には戻りません。

BMIが生涯に渡ってどう推移してきたかで評価しないとBMIと寿命の関係なんてわかりません。

例えば痩せ型で75歳で死亡した人が生涯に渡ってずっとBMIが低かったとは限りません。中高年の小太りで寿命が長かった人も、青年期から中年にかけては標準的だったり痩せていたかもしれない。

若い時期にずっと痩せていて、中高年で太った場合がBMIは高いグループとして扱われていれば、それはBMI高い人は云々といったような評価をしていいものなのか。

そもそも男性だと若いときにはBMIが低めで中高年になるにつれBMIが高くなるパターンも多い。そういう過去まで含めたBMIの調査はしていない。

研究はBMIと寿命ではなくBMIと死亡リスクだ。世間一般が言うBMIがやや高いほうが寿命が長いなど解釈するのは、いったい何を言っているのかさっぱりわからない。

研究に参加してからのBMIを集め死亡リスクの統計をとっている。この研究からBMIと寿命の相関性なんてわからない。

同じ痩せ型でもいろいろあって一括りには出来ない

私は痩せ型が死亡リスクが高めだとは思っていません。痩せ型にも色々あります。

  • 病気が原因で痩せている人
    死亡リスクは高くて当然でしょう。過去数十年間太っていて、その後病気が原因で痩せるというのはよくあるパターンです。
  • 無理なダイエットや栄養不足で痩せている人
    健康とは言えません。死亡リスクが高くても不思議ではないです。栄養が足りていないと抵抗力も落ちますし、ビタミン欠乏症などのリスクも高くなります。
  • スポーツをやっているせいで痩せている人
    一部例外のトップアスリートでもない限り、多くは健康です。栄養はしっかり摂って運動して、それで細めであるならそれは健康的です。
  • 生まれついての体質の人
    健康上全く問題ない場合は多いです。

痩せていても色々あります。これらを一緒くたにして痩せ型は云々なんてわかりません。

小太りのほうが死亡リスクが低いという研究があったからと、通常の食事では太りにくい体質の人が、太るためにと運動を止めて無理に過食することがもしあればそれは不健康です。

適切な食事と適切な運動で規則正しい生活習慣を続けていて、それで痩せていれば、その人はその状態が健康です。

最後に

若い時期を含めた過去数十年のBMI推移を含めず、研究に参加した中高年以降でのBMI統計だけで死亡リスクを評価。死亡リスクであり寿命ではない。

その研究から、世間一般では痩せているより小太りのほうが長生きすると解釈していますが、BMIと死亡リスクは、BMIと寿命ではありません。

そもそもBMIなんて長い人生で何度も変化するのに人生のいつの時点でのBMIを言っているのかさっぱりわかりません。

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