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歯科医で意見が分かれる~保険の白い歯CAD/CAMは結局いいのか悪いのか

2022年4月よりハイブリッドレジンを使ったCAD/CAM(キャドキャム)インレーが健康保険適応となりました。これで保険治療でも一番奥の歯を除いたすべての歯が白い詰め物・かぶせもので治療できることになります(一番奥の歯が残っていることが条件)。

しかしこの保険治療でできるCAD/CAM(キャドキャム)の白い歯の詰め物は歯医者でも意見が分かれます。むしろおすすめしないとする歯科医が多いです。

ちなみに私は歯科医ではありません。当たり前ですが歯科医の方が専門知識はあります。歯医者のウェブサイトやツイートを見ると、歯科医は人によって考え方が色々あることがわかります。保険のCAD/CAMで白い歯にできますよとお知らせしている歯科医もいれば、絶対やらないほうがいいと強く主張する歯科医もいます。

技工士から見ればCAD/CAMインレーは利益が出ない。歯科医師は削るのめんどいし、自費治療の希望者が減るかもしれない。

そこで私は外野の視点から客観的に保険適応のCAD/CAMのメリットデメリットを評価し、透明性のある意見を書いていこうと思います。保険でできる白い詰め物にしようかどうか、迷ってる人の参考になればと思います。

CAD/CAM(キャドキャム)とは

CAD/CAM(キャドキャム)とは素材の名前ではなくコンピュータを使って作成する技術のこと。

CAD/CAM(キャドキャム)素材にはセラミック系や金属系(チタンなど)、レジン系と色々あるが、保険適応の素材はレジン系のハイブリッドレジンで、セラミック粉末とプラスチックを混合した白いものです。セラミックが混ざっていますが焼き物ではありません。ちなみに焼くと燃えます。配合比はセラミックのほうが多いですが基本的に硬質プラスチックという感覚が正しいと思われます。

歯医者で歯を削って3Dスキャン(あるいは型を取ってそれを3Dスキャン)を行い、技工所で機械を使ってブロックを削って作っていきます。

基本的に機械が勝手に作っていきますが全自動でOKというわけではなく機械の設定や、技工士による仕上げ作業が必要になります。つまり簡単な作業ではありません。

冠とインレー

CAD/CAM(キャドキャム)冠 とは、冠とはクラウン。つまりCAD/CAMの被せ物のことです。

CAD/CAM(キャドキャム)インレー とは、CAD/CAMの詰め物のことです。クラウンはカッポリ被せるものですが、これは部分的に詰めるものです。

保険適応となる歯

大雑把に言えば、もはや健康保険治療で一番奥の歯以外はすべて白い詰め物でできることになります(※一部条件あり)。

CAD/CANインレーの場合は前歯6本は健康保険適応外ですが、ここは基本的に白いプラスチックのレジン(保険適応)で治療する感じですのでどっちみち白です。

※保険適応は治療でやる場合です。白くする目的銀歯を外して詰め替える場合は保険適応されません。

CAD/CAMインレー

インレーの場合は水色の部分の歯が健康保険適応(2023年2月17日時点)。

※第一大臼歯については第ニ大臼歯が全部残っていて、左右の咬合支持がある患者に対し、過度な咬合圧が加わらない場合等。

CAD/CAM冠

冠(クラウン)の場合は緑の歯が健康保険適応(2023年2月17日時点)。

※第一大臼歯については第ニ大臼歯が全部残っていて、左右の咬合支持がある患者に対し、過度な咬合圧が加わらない場合等。

治療にいくらかかるのか

※保険適応は治療でやる場合です。白くする目的銀歯を外して詰め替える場合は保険適応されません。

CAD/CAMインレーの場合

CAD/CAMインレーの技術料と材料費を合わせると

小臼歯が材料Ⅰの場合で9,380円(3割負担で2,814円)、材料Ⅱであれば9,310円(3割負担で2,793円)。

大臼歯が11,000円(3割負担で3,300円)。

接着性を上げるために内面処理を行った場合はこれに45点(450円、3割負担で135円)加算。あと、これに初診料などは含まれないので実際はもう少しかかることになります。

治療費の詳しい情報は下のリンク先で見ることができます。※点数は、1点10円です。

CAD/CAM冠(クラウン)の場合

CAD/CAMインレーの技術料と材料費を合わせると

前歯が17,760円(3割負担で5,328円)。

小臼歯が材料Ⅰで14,280円(3割負担で4,284円)、材料Ⅱで14,540円(3割負担で4,362円)。

大臼歯が16,420円(3割負担で4,926円

初診料などは含まれないので実際はもう少しかかることになります。

治療費の詳しい情報は下のリンク先で見ることができます。※点数は、1点10円です。

CAD/CAMハイブリッドレジンの強度

ハイブリッドレジンのCAD/CAMは所詮プラスチック。強度はセラミックや銀歯より劣るので壊れやすいとのこと。

そのため歯を強く食いしばったりするような人には向いていないということです。

ただ、歯科医師がきちんと支台を形成し、技工所で上手に作ってちゃんと適合し、きちんと接着すれば、そこそこ長持ちするようです。

削り方がシビア(支台歯形成)

CAD/CAMインレーの削り方(支台歯形成)のマニュアルはとても細かく、大変そうです。

基本的にセラミックインレーのときのように厚みを持たせて削るようです。

破折防止のため基本的に厚め。銀歯のようにエッジに薄い部分を作ってはいけない。噛んだときに力が分散するような削り方をする感じでしょうか。まずは歯科医師がきちんと削って支台を形成しないと、適合が悪くなったり破断したり、装着後の破損も起きやすくなります。

歯科医師が形成がしやすいように株式会社日向和田精密製作所から目盛り付きバーが出ています。

適合悪い

CAD/CAMインレーの適合の悪さはTwitterで試行錯誤する技工士のツイートの数を見ればよくわかります。

CAD/CAMは四角いブロックを機械で削っていきます、このときに素材がわずかにたわみます。これは特にインレーでは形状的にたわみ量が大きくなるため問題となります。僅かなたわみは適合性を悪くし、削った歯に入れたときに隙間ができたり浮き上がったりします。

たわみに関する対策はこちら。歯科材料メーカーのYAMAKINのウェブサイトに「CAD/CAMインレーをCAD/CAM冠のように削ってはたわみが発生する」ということが書いてあります。

きちんと密着しないと、接着面が一部でも浮き上がれば接着力も弱くなり外れやすくなります。インレーの場合、フロスを入れれば段差に引っかかってフロスが引っかかったり切れたりするかもしれません。

目視で分からないほどの僅かなクリアランスの誤差は接着剤でカバーできるかもしれませんが、ここがきちんと合わないと、一部でも浮き上がれば、詰め物と歯の間の隙間からまた虫歯になってしまいます。

なるべくたわまないためには歯科医師がたわみにくいように歯を削る。技工所では技工士がサポートピンの位置や太さ、本数をきちんと見極める。やはり失敗を繰り返し経験を積んでいくことが大切のようです。

プラークが付きやすい

ハイブリッドレジンのCAD/CAMは表面のザラツキによりプラーク(歯垢)が付きやすく落としにくいとのこと。これについてはCR(コンポジットレジン)でも舌で触ったときに、天然の歯はツルツルしてるのに、ややザラッとした感触は感じます。

プラークの付き安さは自分の歯に付きやすくなるということではなく、CAD/CAMのクラウンやインレーの素材に付きやすいということ。例えばクラウンにしたときに歯茎付近に磨き残しのプラークが溜まってしまうとそこから歯周病が進行してしまいます。

CAD/CAM冠やインレーは歯茎や歯に接触する部位は特に注意しながらブラッシングする必要があるでしょう。

結論

ツイッターを見ていると歯科医師や技工士にはいろいろな意見・考え方があるということがわかります。すべての歯科医師や技工士が同じ意見ではないということです。

CAD/CAMインレーの適合性が悪いデメリットそのとおりですが、これは歯科医の形成(削り方)、そして技工所・オペレーター次第で、適合性は大きく改善され、外れたり割れたりするトラブルは減っていきます。

慣れない初期の頃は失敗が多いはずです。最初は面倒であり神経もすり減らしなかなかうまくいかずにストレスが溜まります。しかし、どんな仕事でも同じですが何百何千と数をこなすと、対策やポイントが分かるようになって完成度が高くなり、効率良くできるようになります。

CAD/CAMのデメリットである適合性は歯医者と技工所の熟練度が上がれば大きく改善されるはずです。インレーが始まってもうすぐ1年。もうだいぶ慣れてきた歯科医、技工士が増えてきたのではないでしょうか。

それでも最終的に歯科医や技工所によって出来が良かったり悪かったりするかもしれません。これはCR(コンポジットレジン)でも同様です。歯科医によって、患部が全くわからないほど完璧に仕上げる歯科医もいれば、不器用で雑な歯科医もいます。歯科医の技術や手先の器用さ、性格も出るところでしょう。

いい歯医者を見つけることが大切です。

もちろんどれだけ完成度が高くなっても、性質上、ハイブリッドレジンCAD/CAMはセラミック同様に厚みを持たせる必要があるので削る量が銀歯よりも多い。これを患者が許容できるかどうか。削る量が深いと、次にその下が虫歯になったときに、虫歯の深さが神経まで到達するペースが早くなる。つまり根管治療が近づく。

ところが適合が悪いまま完成度の低いものを装着すれば二次カリエスのリスクは高くなる。また、プラークが付着しやすいので、治療後はかなり丁寧にブラッシングをし、定期的に歯医者でメンテナンスを行わないと、虫歯の再発や歯周病リスクを上げることになります。歯磨きしない勢、歯が悪くなるまで歯医者行かない勢には向いていないでしょう。

じゃあ昔からの銀歯治療が最高なのかというと、これはこれで見た目を許容できるかどうかという話になります。はっきり言って見た目は鬱になるほど最悪・・・。

銀歯アレルギーが出る場合があります。天然の歯や歯茎が黒ずむことがあります。最初はきちんと適合していても、経年で変形し、エッジが浮いて段差が大きくなったりします。熱いものを飲んだり冷たいものを食べたり、温度変化で膨張や収縮もします。これによってセメントが割れたりします。セメントが割れるとそこに虫歯菌が入り二次カリエスの原因となります。これは銀歯のデメリットです。

かといって銀歯を装着して20年ほど使い、セメントの劣化で銀歯が取れ、歯医者に行くが虫歯にはなっておらず、銀歯も問題なかったので、清掃だけしてまた装着というパターンもあります。逆に1年ほどで銀歯の下が虫歯になったり、外れたりする場合もあります。

CAD/CAMは銀歯よりも多めに削る、耐久性がない、割れやすい、外れやすい、歯垢が付きやすいというデメリットはあります。じゃあ歯を失いやすいかというと歯医者と技工所がいい仕事をすれば適合は良くなり耐久性は大きく改善するし、合わせて患者もきちんと歯のメンテナンスをすれば二次カリエスや歯周病のリスクも大きく減ります。

CAD/CAMより銀歯の方がいいのかというと、銀歯にはアレルギーや黒ずみなどCAD/CAMにはない健康上のデメリットもあるわけで、どちらが上か下かというのは決めることは難しいように思います。

歯科医師は患者に対し、自分が好まない方のデメリットを過度に強調するなど主観的な誘導がないようにそれぞれのメリット・デメリットを患者にしっかり説明することが望まれます。

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