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フォークリフトでブランコ死亡事故!なぜパレットが落ちたのかパターンを想定

2022年8月28日に群馬県でフォークリフトを使ってブランコを作り、それで遊んでいた8歳の子供に鉄製のパレットが落下して死亡する事故が起きました。フォークリフトの事故は絶えません。

今回の記事はフォークリフトでブランコ遊びという絶対にやってはいけないことをやって起きた事故。

以前、フォークリフトの事故のパターンの記事を書きました。

フォーク事故は本当に多いです。元フォークリフトオペレーターだった私がブランコ事故の原因とどこが危険なのか考察しながらフォークリフトの危険性を啓発する記事を書いていきます。

私のフォークリフト歴

私も以前物流センターでフォークリフトを運転していました。倉庫の規模は2万トン。

約10年間、朝から晩まで乗っていました。1日の走行距離が12kmほど、1日で扱う荷物(一人が運ぶ量)が20トンから80トンほど。建物内の現場フォークで出入庫、冷凍庫の庫内で出入庫、物流駐車場でパレット下ろしやパレット積み込みなどやっていました。

フォークリフトが数台でガンガン行き交う修羅のような物流現場です。その場所で入出庫立会が検品作業などを行い、コンベアー周りでコンテナ荷物を下ろす荷役が作業しています。成体になったパレットを入れかえ、立会が札を貼って、それを各倉へ運ぶためエレベーターやリフコンにどんどん突っ込んでいきます。

倉番は上がってきた荷物をガンガン引き抜いて倉に入れ、同時に出庫を作ります。この作業に追われます。冷凍倉庫なので出入りしていると結露でビシャビシャになり、ツメが凍り滑ります。

乗ってきたフォークリフトは1.5トンから3.5トン(車重はその倍以上あります)、バッテリーフォークからプロパンガスタイプ、3輪タイプ4輪タイプ、ハイマストタイプからローマストタイプ、ツメが短いもの長いものと結構いろいろな種類を乗りこなしました。

ただしカウンター式しか運転したことがないです。リーチ式は全く乗ったことがありません。私はたぶん乗っても乗りこなせない。

事故歴は、報告書が必要な商品破損は過去に10回ほどで1カートン単位の破損が多いです。パレットごと崩したこともあります。自動シャッターにフォークのマストがあたって破損が1回(ちょっと曲がった)。多いといえば多いですが、他の社員もだいたい似たようなものでした。人身事故はゼロです。

仕事中に危険な場面は数多く見てきましたが、さすがにフォークリフトを仕事以外の目的で使ったことはありません。見たこともないです。

こういう私ですがヒヤリハットは数え切れないほどあり、フォークリフトの危険なところはほぼ知り尽くしているつもりです。

前橋市で起きたフォークリフト事故について元フォークリフトオペレーターから見た危険性を話していきます。危険なことやっている人はまだまだいっぱいいるはずです。

事故の概要

2022年8月28日、群馬県前橋市の自宅兼会社の敷地内でおきたフォークリフトの事故。父親がフォークリフトで作ったブランコで遊んでいたところ、パレットが落ちてきて子供が死亡。

事故の概要を説明すると

  • 42歳の父親がフォークリフトを使って高く爪を上げロープを吊るし、8歳の子供を乗せてブランコ遊びしていた。
  • ブランコ遊びしている際に爪に差していたパレットが3mの高さから落下して8歳の子供に当たり死亡。
  • パレットは鉄製で、上面は木製。長さは1x2m。重さ100kg。

パレットの種類

パレットは折りたたみ式のポストパレットのようです。柱を立てることが出来ます。

1.1mx2mの大きさ。重さは150kg?300kgという情報もありますがおそらく300はないでしょう。

縦方向からも横方向からもツメを差し込むことが出来るようです。ただ、長辺は2mあるため長ツメじゃないと危険です。

なぜパレットを使ったか?

フォークリフトの爪に対し、横方向にブランコを振ればパレットなしでも可能でしょう。

前後方向に揺らすには、ツメの先端にブランコの紐を乗せないと十分に可動域が確保できません。しかしそうやると紐が落ちてしまう。そのためパレットに紐をくくりつけ、パレットを持ち上げてブランコを作ったのでしょう。

これは木パレだが、ブランコ事故が起きたのは遥かに重い鉄パレ。

重いパレットを使ったのはブランコの力でパレットがズレないためだったのじゃないかと。

なぜパレットの板が3枚しかないのか

時期地にあるパレットは上面に木の板がびっちり隙間なく張ってありますが、事故のパレットは何故か3枚しか無い。もとからこの仕様なのか。ブランコのロープを通すために板を2枚剥がしたのか?

このスカスカの上面だと乗せられるものが限られます

なぜパレットが落ちたかを推察する

なぜパレットが落ちたか。

ネットの掲示板にはブランコが揺れる力でサスが沈んで落ちやすくなった云々とか推論ありますが、私はサスがついたフォークは見たことがないです。まあ中にはあるかもしれませんが、基本的にサスはないです。理由は簡単。物を持ち上げてサスが沈んで姿勢が変化すると危険だからです。

タイヤも空気なしで全部ゴムが詰まっています。これも姿勢変化を起きにくくするためでしょう。

パレットはどれくらい滑るのか?

フォークリフトのツメには基本的に滑り止めはありません。塗装は剥げて金属ツルツル面になります。

しかしツメはツルツルでもツメが水で濡れたり凍ったりしない限りはブランコの揺れる力だけでは150kg?のパレットはずれていかない気がします。

私が物流にいたときは30kgほどの密度のある重い木パレでしたが、爪に差し込んだパレットを手で引き抜いたことはありますが結構重いです。仮に150kgになると、18.3kgのカートンが6個乗った状態の木パレ。手で引き抜くことは力自慢の作業員が全身を使って少しずつずらしてやっと引き抜けるレベルです。爪の摩擦は、木パレの場合はそんなもんです。

鉄パレは扱ったことはないですが、鉄のカゴパレットは経験があります。重さは60kgくらいだったと思います。滑りやすさは同じ荷重がかかった状態であれば木より滑る感じですが、パレットを差し込んだ状態からツメをちょっと持ち上げ、そこから人の手で引き抜こうとしてもかなり重いです。

重量が重いほど引っ張り出すのは力がいります。150kgのパレットなら、接地面積によりますが人の手ではなかなか引っ張り出せないでしょう。正しい使い方ではありませんが、パレットがぐらついていないならば体重30kgほどの子供がブランコしたくらいでは揺るがない気がします。

ただし実際に試したことはないのでどうなるかはわかりませんが。

パターン1

フォークのツメの長さの情報がないですが、仮にスタンダードな長さ107cmクラスのツメだった場合。

メディアのニュースでは1.1mx2mのパレットを横向きに差していますが、この場合前後に揺らしてもブランコが揺れる可動域が足りません。フォークリフトのマストにあたってしまいます。

そこで長さ2mのパレットを縦向きに差していた可能性です。こうすれば前後に大きな可動域が確保できます。

事故のフォークリフトはツメの長さがわかりませんが、仮に107cmのスタンダードな長さのツメだった場合、ツメが十分に差し込めいないという問題が発生します。こういう持ち方をすると重量バランスによってパレットがやや下向きに傾き、パレットの落下リスクが高まります。

パターン2

フォークリフト方面の可動域が足りなかったので、マストを倒したパターン。マストを倒すと可動域が広がります。しかしパレットが滑りやすく鳴ります。この状態だとブランコの勢いでパレットが滑って落下するリスクがあるでしょう。

パターン3

ブランコに初動をつけるため、前進してプレーキを踏んで揺らした可能性。このときにパレットが滑って落ちたのかもしれません。

パターン4

なぜか上面にいたが3枚しかない状態。持ち上げているときに何らかのきっかけでパレットが横へずれ、このパレットの上面の隙間からフォークリフトのツメが空振りしてパレットが傾いて落下した可能性。

私もいろいろ物損事故はある

ちなみに私の経験した失敗では、冷凍倉庫に1.35mx3段に積み上げられた荷物の3段目を取るときに、パレット持ち上げとツメのチルトと後退を同時にやったときに凍ったツメの上をプラパレが滑りながら動き始めたのですぐに後退を止め、チルトだけを最大角度にしようとした。

するとそれが裏目に出てツメが抜け、抜けきる前に途中でパレットがバキッと割れて荷物ごと床に落下。庫内は私一人だったため怪我人はなかった。ちなみに庫内専用のフォークリフトは運転席の天井と前方は金属のガードで覆われていたため落下物には強かった。

私ではないですが、1個250kg以上あるドラム缶をトラックに積み込む時に落としたという人もいました。

最後に全国のフォークマンに注意喚起

おそらく、この父親は、この事故がなかったら、また繰り返しブランコをしたのではないかと思います。フォークリフトを使ってのブランコ遊びは初めてと言うが、安全意識が普段から欠如していた結果でしょう。

この事故が起きなければこの父親はブランコをいつかまたやったはずです。今回の事故が起きなくてもそのうちいつか事故を起こしたでしょう。

全国ではフォークリフトをマニュアルから外れた使い方をやっている人は多いと思います。

流石にブランコはほぼいないでしょうが、パレットやツメの上に人を乗せたり(※ただし人を乗せるための安全ベルト付き専用ラックはある。)、高く持ち上げたパレットの上に登ったり、許容重量を超えた物を持ち上げフォークのお尻が浮き上がるからとフォークのお尻に人が乗ったり。

また荷物の3段引きや、横に2枚ならんだパレットを片爪だけ引っ掛けて2枚同時に運ぶ、倉庫に入庫する時に1枚ずつ運ぶのが効率悪いと、パレットを3枚あるいは荷物が軽いと5枚同時に押していくなど、ちょっとうまくなると効率を優先した危険テクをやるようになります。

こういった使い方はたまにパレットが割れたり荷崩れを起こします。近くに作業員がいると非常に危険です。しかし短時間で仕事を終わらせようと懲りずにまたやってしまうのです。彼らは物損では凝りません。たいていは死亡事故が起きないと間違った使用法はいつまでも続きます。そして初めて死亡事故を起こしてやっと大きな問題になります。

賢い人というのは常に先を読んだ行動を取ります。これをやるとどういうリスクが増え、最悪の状況が頭を過るため、リスクを削った効率より、効率が落ちても安全を優先します。これらは繰り返すほどいつかそのリスクが現実となるのです。

他人の事故を見て学習できる人が賢いといえます。それで現実味がわかない人は怖いもの知らずに効率を優先します。効率のためにはリスクを顧みない人たちです。

このブランコ事故もある意味効率を優先した事故とも言えます。ブランコしたいならブランコがある公園に行けばいいのです。更にスリルがほしいなら遊園地に行けばいいのです。フォークリフトが自宅兼会社にあったため、フォークリフトで簡単にブランコが出来るからと安全を無視して手軽な方法でやった結果でしょう。

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