漢字には色々と字形があるのをご存知でしょうか?
「令」など、印刷文字や手書き文字には字形がいくつかあります。私が小中学生のころは先生が「ここはしっかり止める」「ここはしっかりはねる」などとやかましく言っていたものです。
テストではこういったちょっとした違いで減点されたりバツになっていた記憶があります。
文化庁の常用漢字表の字体・字形に関する指針に詳しく書いてありますが、きちんとした漢字として認められている代表的な字形をいくつか見ていきましょう。
最初に、字形・字体・字種の意味
この記事では字形、字体、字種という単語が頻繁に出てきますが、その違いをまず書いておきます。
字形=文字の形。
字の見た目の形。例えば楷書・行書の違いは字形の違い。字形が違うからと言って別の文字だとは限らない。
字体=文字の骨組み、つまり基本構造。
ここが変わると文字を読み間違える原因となる。文字を書くときに字体は大切な要素である。
字種=文字の種類。
字種が変われば文字としては全く別のもの。
こういった字形はどちらも正解
漢字には「令」や「紅」の糸へんのように複数の字形があることは珍しくなく、下のような字形の違いは文化庁によればどちらも誤りではないということです。
紅の糸へんの点3つというのは行書に近い楷書ということで間違いではないが、混乱防止のために学習者の発達の段階に応じた指導がされるということです。
ちなみに私は学生時代から「令」は右側、「紅」は左側の字形で書いていました。ただし「領」などで使うときは左側の字形で書いていました。
「令」はまだしも「紅」の糸へんの点3つの字形は私が育った学校では使う人はほとんどいなかったように思います。
よく使う漢字の複数の字形を紹介
漢字の字形の種類は「令」や「紅」の文字以外にも数多くあります。
はねる、止める
「木」「少」「遠」「示」「和」「紅」のような「はねる」と「止める」という字形の違いについて、文化庁によると、これはどちらも誤りではないということ。
離す、つける
文化庁では、下にあるような「無」「右」「又」「垂」「分」「目」のような字種などに見られがちな、離すかつけるかのような微細な接触の有無を基準にすることは行き過ぎだということです。他のどのような漢字においても、その漢字だと判別できない場合を除いては正誤を判断する際の基準にならないということが述べられています。
はみでる、はみでない
「女」「長」「弟」「非」「耳」の漢字のような、はみ出る、はみ出ないようなものも別の漢字と間違うことがないものならば問題ないとのこと。
短い線や点の方向
下の手書きの図にあるような「字」「主」「直」「年」「集」「鳥」のような漢字に使われている短い線や点の角度、点にするか線にするかは、漢字としての骨組みを読み取ることができれば誤りではないということです。
字体が似ているが字種が違うもの
柿(かき)と杮(こけら)は異なる字種でありながら非常に似た字体をもつ漢字です。「こけら」とは木片や木屑のことですので「かき」とは全く別のものを表す漢字です。
違いをわかりやすく書いてみましたが、分かるでしょうか?
「かき」の方は右側が「市」であり、「亠」の下に「巾」を書いたものです。「こけら」の方は縦線が上から下まで一本のつながった直線(一画)となっています。
最後に
字形には色々あり、文字として骨組みが成り立っていて他の漢字と間違うことなく識別できるものは概ね認められているようでした。
この記事で紹介した意外にもまだまだ多くあります。詳しくは文化庁のウェブサイトにありますのでリンクを貼っておきます。
これら全部覚えようとするとかなり厳しいですが、基本的に文字の骨格(字体)が間違っていなければ、細かな「止め」や「はね」などは神経質にならなくていいよという感じです。ただ注意するポイントもあるのでそこは抑えておいたほうが良さそうです。
意味を伝えるという、本来の文字の目的を考えれば文化庁の指針は理にかなったものといえます。漢字は調べるほど知らないことがたくさんあって面白いですね。