なにやら イングランド公衆衛生局 (PHE) のデータでワクチンを接種完了した人のほうが未接種者よりコロナの死亡率が高いらしい。
これはメディアがニュースにもした。普通に考えればありえない結果だ。
ツイッターでワクチン否定派のいいネタとなって賑わっているようだが、このからくりは算数で解ける。
専門家の意見ではワクチンを打った人が高齢者が多く体が弱いため死亡率も高いデータとなってしまったという意見がありますが、おそらくこれは違います。
まあ結論を言うと、ワクチンを打ったほうが、死亡率は低いです。
ではわかりやすく解説していきます。
まずイギリスのそのデータから
ソースはこれです。PDFファイルで、18ページにそのデータがあります。
イングランド公衆衛生局 (PHE) が公表した2021年2月1日から2021年7月19日までのデータによると、ワクチンを2回接種して感染した人の死亡率は0.78%で、未接種の感染者の死亡率は0.14%だった。
ワクチン2回接種した人が2万8,773人感染で死亡が224人で0.779%。未接種者が12万1,402人感染で死亡が165人と0.136%。
一見ワクチンを接種した人のほうがハイリスクのように見えます。
しかしこのおかしな逆転現象はデータ元をよく見ればわかります。
からくりを解いていきます、まあ簡単です
このイングランド公衆衛生局 (PHE)のデータは50歳以上と50歳未満で分けたデータが載せられています。
それによると
感染者数は
ワクチンを2回接種した人のデルタ株への感染者数は2万8,773人ですが、このうち50歳以上が1万3,427人、50歳未満が1万5,346人。
ワクチン未接種でデルタ株へ感染した人は12万1,402人ですが、このうち50歳以上が2,337人、50歳未満が11万9,063人となっています。
どちらも若い世代が多く、未接種者の場合は圧倒的に若い世代の感染者が多くなっています。
ただ、50歳以上ではワクチン接種者のほうが感染者数が圧倒的に多い現象が起きているのに気が付きましたか?
死亡者数は
ワクチンを2回接種した人の感染者の死亡数は224人ですが、このうち50歳以上が220人、50歳未満が4人。
ワクチン未接種者での感染者の死亡数は165人ですが、このうち50歳以上が131人、50歳未満が34人となっています。
どちらも若い世代が圧倒的に死亡数が少ないです。
ただ、こちらも50歳以上のほうのみ、ワクチン接種した人のほうが死亡数が多い。
では50歳以上と50歳未満で別々に死亡率を出してみます。
50歳以上でワクチン2回接種者の死亡率は1.64%、未接種者の死亡率は5.6%。
50歳未満でワクチン2回接種者の死亡率は0.026%、未接種者の死亡率は0.029%。
あれれ??未接種者のほうがやはり死亡率は高いですね。
イギリスのデルタ株への感染者のデータをわかりやすく表にします。期間は2021年2月1日から2021年7月19日。
50歳以上 | 50歳未満 | 全年齢 | |
---|---|---|---|
ワクチン2回接種の感染 | 13,427人 | 15,346人 | 28,773人 |
そのうち死亡 | 220人 | 4人 | 224人 |
感染者の死亡率 | 1.64% | 0.026% | 0.78% |
ワクチン未接種の感染 | 2,337人 | 119,063人 | 121,402人 |
そのうち死亡 | 131人 | 34人 | 165人 |
感染者の死亡率 | 5.6% | 0.029% | 0.14% |
つまり50歳未満の未接種の感染者数が桁違いに多く、50歳以上では極端に少なかったので未接種者の死亡率を大きく下げてしまい、全年齢で統合した場合の死亡率に大きく影響してしまった。
これで謎は解決。
つまりワクチン接種したほうが、死亡率は低いです。
もう一つ疑問が残った
これは例えばワクチン接種した人と接種していない人の人口比が1:1で分かれていた場合、容易に比較ができるが、高齢者の場合、ワクチン接種している人口が圧倒的に多いため、ワクチン有効率によっては逆転してしまうことが考えられる。
まあ極端な話、ワクチン接種率が100%だった場合、感染者が出た場合は100%がワクチン接種者であるし、死者が出ても100%がワクチン接種者である。
それが理由です。次の見出し以降で解いていきます。
※あくまでも仮定の計算です。ワクチン有効率などもわかりやすく謎解きするための仮定です。
ここから解いていきます
これはワクチン接種率が高いほど傾向は強く現れるでしょう。
例えばです。
例えば、高齢者人口が1万人だったと仮定します。でもって高齢者の9割がワクチンを接種していたとする。
この場合、接種者は9,000人で未接種が1,000人だ。
ワクチンが感染予防効果が6割あったとします。
そして未接種の10%である100人が感染してしまったとします。
接種者は10%だと900人になるが、ここから6割効果を加えると感染は360人。
つまりワクチン接種率が高いと、このようなワクチン接種者は感染者360人で、未接種者は感染100人という逆転現象が起きる事がある。
感染した場合のワクチン死亡抑止効果が9割あったとする。その中で未接種の感染者100人のうち3割の30人が死亡したとする。
ワクチン接種者の感染は360名出ていたので、この3割は162人だが、ワクチン効果を9割与えるとワクチン接種者の死亡は16.2人となる。
接種者が16人死亡で未接種が30人死亡という計算。
ここではワクチン接種者の死亡数が少なくなった。だが実際はワクチン接種者のほうが死亡は多かった。
このままではPHEのデータの傾向と合わない。なぜだ?
しかし・・
ワクチン有効期限で効果減の可能性を加える
これはワクチンの有効期限で謎は解ける。
ワクチン接種が2020年12月という早い段階で始まったイギリスは、高齢者のワクチン接種率は2月の段階でかなりの割合になっていた。デルタ株が増え始めたのは最近のことなので、初期接種勢はワクチン効果が何割か減少していた可能性が高い。
つまりワクチン効果を落として計算し直してみる。
未接種の10%である100人が感染してしまったとします。
ワクチンの感染予防効果が3割まで減ってしまったとすれば、9000×0.1×0.7=630。よって接種者9,000人のうち630人が感染。
未接種の感染者100人のうち3割の30人が死亡したとする。
感染した場合のワクチン死亡抑止効果がさきほどの9割から7割まで減ってしまったと仮定すると、 ワクチン接種者のデルタ死亡は630×0.3×0.3で56.7人となる。
ワクチン接種者の死亡が56.7人で、未接種者の死亡が30人
これでつじつまが合う。
以上終わり。
(※ここで例にあげたワクチン効果はあくまでもわかりやすい例とした仮定の数値で、実際の効果ではありません。ただ、からくりは同じです。)