以前から感じていたことだが、メディアが盛んに「京都や富士山の外国人観光客のマナーの悪さ」をニュースにする。
入ってはいけない場所へ入ったり、ゴミを捨てたり、富士山の写真を撮るために車道へ出たり。ただ、食べ歩きなどは日本人でもやるし、ポイ捨てもする。
これを外国人観光客特有の現象のように報道するせいで、よそ者に不慣れであまり歓迎したくない人が外国人観光客へ神経質になりすぎてしまい、「外国人をいれるな」とか「外国人はいらない」という心無いコメントを残す。
海外の掲示板を見ても、海外では一般的に日本人観光客の評価は高いが、その評価は正しいのかと思えるような一面も存在する。その一例としてツェルマットにある通称「日本人橋」での日本人観光客のマナーを取り上げる。
というかそもそも日本人の撮り鉄マナーやBBQゴミ問題も大概であるが。
ツェルマットの日本人観光客のマナー
日本人は海外からもマナ-がいい観光客としては定評があります。しかしどこでもそうとは限らない。
スイスのツェルマットではマッターホルンの朝焼けを見ようと多くの日本人観光客がフィスパ川にあるキルヒ橋(通称:日本人橋)に集まります。ここは有名な朝焼けスポットです。
橋は小さく、下の川沿いの道路から見るとこんな感じ。
この橋に大量の日本人観光客が夏場だと5時6時頃に集まります。昼間はやや閑散としていて白人も多く見ます。
ところが朝焼けの時間帯はこうなります。100人は軽く越えます。200人くらいいたかな。
これは2011年の写真ですが、ほぼ100%が日本人です。コロナ以降は日本人が減ったのかな?よくわからないけど、最近は中国人も多いようです。ただ、白人は全く見当たらず、朝焼けが終わった早朝7時頃に見に来る感じです。
僕はツェルマットに滞在する時は数日滞在しますが、すぐ隣にあるホテル・アンティカの部屋から見てもいつも日本人が大量にいました(98年、2011年とも)。
まあ問題はですね。
話し声と、車の通行の邪魔になっている点。
早朝なのに話し声がうるさい
まだ静かな朝の時間で日の出前です。
一人ひとりの声はそれほどうるさくはないです。ただの普通の会話です。
しかし人数が人数なだけに、さすがにこの人数で会話されるとかなりのざわめき声となってしまい、僕が宿泊する隣のホテル・アンティカの2階の部屋(二重ガラスで防音性は高い)にいてもザワザワと話し声が聞こえるレベルでした。
すぐ下に川が流れてその水の流れる音も土砂降りのような音を立てているのだが、観光客のおしゃべり声はそれをかき消すほどの騒音です。定期的に聞こえてくる笑い声も結構目立ちます。
日本人観光客は朝が早いですが、地元民やその他の国の観光客はまだ寝静まっている時間です。
スイスは騒音に非常に敏感な国で、日曜大工がうるさいと警察を呼ばれたり、カウベル訴訟(カウベル騒音で不眠症となった)など数々のトラブルが国内で発生しています。また「夜間はトイレを流してはいけない」「夜間は車のドアの開閉禁止」というルールがある所もあります。
このツェルマットの日本人橋に近い住民から、日本人がどう思われているか分かりませんが、さすがに人数が多いだけに、この早朝の時間帯のおしゃべりはなるだけ控えたほうがいい。
ここに来る日本人はこれが初めてで、この日だけかもしれないが、地元の人は毎日繰り返されます。
もしここが京都だったら、話題性が大好きなメディアは、すぐ食いついて外国人観光客のマナーが、とニュースにしそうです。
車の通行の邪魔になっている
この橋のあるキルヒ通りは早朝の交通量はそれほど多くはありませんが、ときどきパン屋などがホテルへパンを運ぶために電気自動車が通行します。道いっぱいに広がる観光客はこの電気自動車の通行の妨げになっています。
日本人観光客は歩道(歩道は橋の片側しかない)からはみ出て車道までいっぱい広がっていて、通行する車は減速し、人が避けるまで待ってから通行していました。ゆっくり人をかき分けるように。それでもクラクションは鳴らさなかった(誰かが「車来てますよ~」と声かけてた)。
パン屋も通ります。ホテル前で止めて朝食のパンを届けます。
観光客にとっては1日だけかもしれない。しかし現地の人にとっては毎日これが繰り返されているのです。毎日毎日こうやって配達していると思うと、やはりかなりのストレスになっているのではないかと思います。
そして車が過ぎ去るとまた車道いっぱいに広がります。
ただ、パンが荷台に丸出しになっていて大勢に囲まれているが、誰一人盗んだりしないのはさすが日本人のモラルだと思いました。運転手もそういう部分は全く警戒していませんでした。
それ以外で問題とされる日本人マナー
日本人のマナーについては日本人橋だけでなく、日本人のスイス旅行記を拝見すれば、98年旅行記ではどうも喫煙マナーがよろしく無かったらしく、ツェルマットのバス停留所でポイ捨てをする日本人を注意をしたという記事もあります。
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/enao/swiss98/report6.htm
スイスではないですが、ボリビアのウユニ塩湖では日本人のマナーが悪いのこと。ツアーのドタキャン、ホテルでお酒飲んでの騒ぎ、貴重な水道のムダ使いなど。
外国人観光客=悪なのか?
ここまででいいたかったのは、つまり日本人も海外で知らないうちに迷惑をかけていることがあるということです。それを直接注意されていない(あるいは現地が大きな問題としていない。なっている場合もあるが)だけで、結果的には日本で外国人観光客がやってしまったものと大して変わりません。
話をスイスに戻すと、スイスの早朝の日本人橋は最近は中国人観光客も増えているようですが、2019年の旅行者の動画を見てもあまり変わっていないように見えました。コロナパンデミック以降は分かりません。
スイスは日本の四国ほどしかない狭い国ですが、外国人観光客は日本と同じくらい多く訪れています。スイスでは、歩けば外国人観光客という感じで、外国人観光客はどこでも見かけます。
このあらゆる国から訪れる外国人観光客が、ゴミを不法に捨てていく問題はスイスでも深刻です。かといってスイス人のポイ捨てがないというわけではなく、トラックドライバーなどが窓からゴミを捨て、そのゴミを放牧の牛が食べるという問題がありました(胃の中からでてきた)。
ただ、スイスでは「外国人観光客=ポイ捨て」のようなを頭ごなしに否定する声はなかなか見つかりません。ポイ捨てマナーはスイス人にも言える問題と考えているのかもしれません。ゴミがゴミを呼ぶということで、清掃活動に積極的(駅周辺は早朝に清掃業者が清掃している)であり、またいたるところにゴミ箱を設置しています。
公園などからゴミ箱を撤去し、「ゴミは自宅に持ち帰って」というのが日本での考え方ですが、公園や街中にあるゴミ箱というのは、自宅がない観光客にとってとても重要な存在です。ゴミ箱がないと1日中ゴミを持ち歩くことになります。
ゴミポイ捨てに関しては、日本国内では日本人もかなりポイ捨ては目立ちます。外国人観光客が来ない場所で捨てられた煙草の吸殻や人気の少ない場所の不法投棄など。
外国人マナーを責める前に、日本国内での撮り鉄のマナー(私有地に入り込んだり、勝手に人の家の木を切ったり、列車を止めたり)、花見のマナー(酔っぱらい問題、大量にゴミを放置)、河川敷BBQマナー(何でも捨てていくゴミの山)など、そういう問題が数多く残されているわけで、外国人観光客のマナーをまるで外国人特有かのごとく否定できない状況です。
メディアが京都でも外国人観光客のマナー問題のニュースを出すや否や、それを見た人たちは、国内での深刻な日本人マナー問題を忘れたかのように、「外国人=マナー悪い人たち」のように一括りで定義してしまうコメントで溢れます。
こういったコメントを残す人の多くは、もともと外国人というよそ者をあまり歓迎したくない思考(外国人に不慣れだったり、変化を嫌う傾向にある)であり、外国人観光客の欠点やミスを見つけては感情的になり、その程度に関係なく「日本にいらない」「もう来るな」と極端なことを言い始めます。
地元民は毎日毎日でうんざりしているだろうが、外国人観光客は初来日だったりして文化やルールを知らなかっただけで悪気がない場合も多い。ツェルマットの早朝の日本人橋でのマナーでもスイス人の誰も日本人を責めていないわけで、あまり叩きすぎるのはいかがなものかと。
「文化学んでからこい」「郷に従え」と思うかもしれないが、これは海外へ行く日本人にも返ってくる言葉である(店員へ挨拶せずに無言で店を出入りするなど)。
日本人も外国人も個人旅行者は異国のマナーをよく勉強しているが、ツアーのほうはあまり学ばないで旅行する傾向が強いといえます。
食べ歩き問題(個人的には、そこまでこだわるべきマナーなのか?と感じるが。)も、日本人でも祭り時は食べ歩く文化があるし、若い世代は祭り以外でも普通に食べ歩きはやっています。
京都府は日本人を含めた観光客全体の問題としてマナーの啓発活動を行っていますが、メディアの方は京都での食べ歩きやポイ捨てなどをいかにも訪日外国人特有のマナーかのように強調した報道(外国人のマナー違反映像ばかりを流すなど)をしています。
僕がいいたいのは、メディアの伝え方により、国民に偏った考え方や感情論が入り込んでしまい、これでは外国人とのわだかまりが出来て閉鎖的な国になってしまいます。中立的な広い視点でマナー問題を考えてほしいという言う事。