ここで話題にするテーマ「喫煙と犯罪率」は喫煙者差別や偏見につながる恐れもあるため、環境めぐりでは慎重に取り扱っていく。
暴行、幼児虐待、脅迫、恐喝事件などの粗暴犯全般また煽り運転で逮捕などこれらを見ていると、彼らの喫煙率が気にならないだろうか。通り魔事件などは別として、カッとなって発生するような傷害事件で逮捕された人の喫煙率が高いような気がした。
知りたいのは「喫煙によって攻撃的になるのか」、それとも「攻撃的な人が喫煙をしているだけなのか」。飲酒の場合は前者パターンはあるが喫煙はどうなのか。
例えば引きこもりが事件を起こしたときは、その生い立ちや生活環境などが専門家によって分析され、メディアがこぞってそれを扱い、世間一般では「ひきこもり=犯罪者予備軍」のような偏見が生まれた。そのせいで引きこもりに悩む人達が住みにくい社会へとなった。
傷害犯罪と喫煙の相関性は分析されない。なぜか話題にならないこのテーマは世間では扱われない。このテーマは触れてはならないのか。相関性に統計はあるのか。環境めぐりではこのテーマを分析する。
タバコを吸い始めるきっかけは?
タバコを吸い始めるにはきっかけが必要だ。
何故吸い始めるのか、私の勝手な予想だが、いくつかに分かれると思う。
- 学生の不良グループ時代から。
- 大人気分になりたかった。
- ファッションとして。
①中学時代は不良グループが格好つけるためか高い確率で喫煙をしていた。このときの喫煙習慣が成人以降も続いているパターン。
②タバコは大人の証明、吸わないのは子供みたいな風潮は随分昔にあったように思う。成人になったきっかけに吸い始めるパターン。
③その後、タバコをファッションとして吸う人が増えた。特に女性。タバコを吸う人はお洒落的な思考で女性の喫煙者が増えた気がする。男性でも、真面目ではなくちょい不良がお洒落だ、カッコいいからのような感覚がある。
また、これらとは別に、友人など周囲が吸っていたから、映画やドラマの影響で吸い始めた。というパターン。これは③つの理由全てにある。例えば洋服や靴、スマホの機種をどれにするか、なども友人などの影響は大きい。
これらで考えられることが、①番目の理由の場合はやはり攻撃的な感じの人が喫煙者となってしまう。しかし喫煙によって攻撃的になったという証明にはならない。
受刑者の喫煙率
犯罪者の喫煙率を見るのに受刑者の喫煙率はどうなっているのか?と気になるが、刑務所内では禁煙である。しかし参考になるデータがある。警視庁による「被留置者の喫煙状況に関する調査」である。
警視庁が2012年に調査した「被留置者の喫煙状況に関する調査」によれば、男性が62.3%、女性が45.3%、平均で60.6%と非常に高い喫煙率だ。ただしこれは年齢階級別のデータがわからない。
ちなみに日本人の喫煙率は厚生労働省の成人喫煙率(厚生労働省国民健康・栄養調査)では、2012年の喫煙率は男性が34.1%、女性が9.0%だ。こう見ると被留置者の喫煙率は男性で1.8倍、女性で6.9倍と明らかに高い。
ただし日本人の成人喫煙率は30代から50代の喫煙率は男性が40%強、女性が12%前後とやや高い。それでも被留置者の喫煙率よりはずっと低い。
ちなみに同じく厚労省のデータでは2019年の日本人の喫煙率は男性で27.1%、女性で7.6%。
タバコの成分で攻撃性を増すことはあるのか
タバコの成分が攻撃性を増す科学的な根拠はあるのでしょうか。
タバコの成分が健康に悪い影響を及ぼすことは科学的に証明されています。喫煙に関しての情報は厚労省のe-ヘルスネットにページがあります。
喫煙は健康被害を及ぼしますが、しかしタバコの成分で攻撃性が増す。というデータはありません。
実際に周りを見渡しても喫煙者でも穏やかな性格の人は多くいます。高校時代に穏やかだった人が、成人後に喫煙を始め、攻撃的に変わったというのは私の周りではいません。喫煙をする=攻撃性がでる?とは結びつかないと思います。
ただし、ニコチン依存症の離脱症状によって、タバコを吸わないときにイライラしてしまうという影響はあります。しかしながら、それが犯罪率へ影響しているかというと、その根拠やデータはありません。
刑法犯認知件数と喫煙率の推移
刑法犯認知件数の推移と喫煙率の推移のグラフと照らし合わせて相関性を見てみた。本当は刑法犯全体ではなく、粗暴犯のみでグラフを作りたかったが、長期的な推移の統計データが見つからなかったので刑法犯全体で見てみることにした。
刑法犯認知件数と喫煙率の推移のグラフを作った。
このグラフで見ると、刑法犯は2002年をピークに減少の傾向であり、喫煙率も同時に減少している。減少幅は完全には一致しない。また、2002年については相関性が見られない。
このグラフではわからない。2002年前後の刑法犯認知件数が高いのは、そもそも犯罪が多かったと言うよりも認知の基準が変わったせいなのか。では、認知件数ではなく検挙件数で作り直してみる。
刑法犯検挙件数と喫煙率の推移のグラフ。
このグラフに変えると男性はほぼ傾向が一致し、相関性が見られます。女性に関しては相関性が若干緩いが概ね傾向がある。ちなみに刑法犯検挙数の女性の割合はおよそ2割である。
ただ、喫煙率と犯罪率に相関性はあっても、これのみをもって喫煙率と犯罪率に因果関係があるというわけではありません。
まとめ
刑法犯検挙件数と喫煙率の推移のグラフからは相関性が見られた。 しかしこれのみを持って因果関係があるとは言い切れない。
この因果関係というのは、喫煙をすることで犯罪率が上がるのか?という関係はこのグラフからは認められないということ。
犯罪者が喫煙をしている傾向が強いかどうかについては警視庁による2012年の被留置者の喫煙状況に関する調査でその傾向は見られた。これは成人男性平均の1.8倍、女性平均の6.9倍であった。
タバコの煙の成分によって何らかの影響を及ぼすかについては、健康被害が起きる科学的根拠はあるものの、攻撃性が増すなどの科学的根拠はない。ただ、ニコチン切れによる離脱症状によりタバコを吸う前にストレスが増加しイライラがでることはあります。
しかし、このイライラが犯罪へつながるかは別問題で、ニコチン切れが犯罪を増加させたという統計はない。
よって導き出された結論は
被留置者の喫煙率は高いが、喫煙行為が犯罪率を上げる根拠はない。