交通違反の取り締まりをする白バイ。この白バイが転回禁止場所で赤色灯もサイレンもなしでUターンしていた。また、パトカーが赤色灯もサイレンもなしで踏切で一時停止をしなかった、交差点で右折レーンから直進した、など。
これらは一部ユーチューブ動画で上がって叩かれています。しかし中には交通取締りに従事する自動車の特例をきちんと理解していない人が、違反ではないのに違反と決めつけ警察取り締まり車両を叩いているものもあります。
サイレンも赤色灯もなしでOKという特例について知ってもらうために記事を書きました。
赤色灯とサイレンしなければ一般車両と同じ?
白バイが赤色灯もサイレンもせず、転回禁止の場所でUターンすることについて、こういう指摘をする人が多い。
しかし、これは道路交通法を全部読めばわかりますが、肝心な部分を見落としています。
まず緊急車両の定義。道路交通法第39条である。
緊急自動車(消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。以下同じ。)
(以下省略)
出典:道路交通法第39条
道路交通法施行令に緊急自動車の要件があります。
(緊急自動車の要件)
出典:道路交通法施行令第14条
前条第一項に規定する自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定(道路運送車両法の規定が適用されない自衛隊用自動車については、自衛隊法第百十四条第二項の規定による防衛大臣の定め。以下「車両の保安基準に関する規定」という。)により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。ただし、警察用自動車が法第二十二条の規定に違反する車両又は路面電車(以下「車両等」という。)を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らすことを要しない。
簡潔に書くと
緊急自動車は緊急用務のために運転中のもので、緊急の用務のため運転するときは赤色灯をつけ、サイレンを鳴らさなければならない。
ただし警察用自動車が速度違反車を取り締まるときに必要であればサイレンを鳴らさなくてもよい。
つまり赤色灯とサイレンを動作させていないときの白バイやパトカーは緊急自動車ではないことになる。
じゃあ、赤色灯もサイレンも動作させていないときの白バイやパトカーは転回禁止場所でUターンすると違反なのか。
緊急自動車の特例がこちら
(緊急自動車等の特例)
出典:道路交通法第41条(赤線は筆者が引いたもの)
第四十一条 緊急自動車については、第八条第一項、第十七条第六項、第十八条、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二、第二十五条第一項及び第二項、第二十五条の二第二項、第二十六条の二第三項、第二十九条、第三十条、第三十四条第一項、第二項及び第四項、第三十五条第一項並びに第三十八条第一項前段及び第三項の規定は、適用しない。
2 前項に規定するもののほか、第二十二条の規定に違反する車両等を取り締まる場合における緊急自動車については、同条の規定は、適用しない。
3 もつぱら交通の取締りに従事する自動車で内閣府令で定めるものについては、第十八条第一項、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二並びに第二十五条の二第二項の規定は、適用しない。
上の道路交通法第41条をよく見てほしい。「緊急自動車等の特例」とある。「緊急自動車の特例」ではなく、41条は「緊急自動車等」の特例。
41条の1項と2項は緊急自動車の特例。3項は交通の取締りに従事する自動車(白バイやパトカーのこと)の特例。
白バイやパトカーが緊急用務のために運転中で赤色灯を回しサイレンを鳴らせば緊急自動車となりますが、3項は赤色灯やサイレン関係なく、白バイやパトカーのことを指します。
つまり赤色灯やサイレンをつけないからといって一般車両と全て同じではありません。
白バイとパトカーの特例
緊急自動車(緊急の用務としての走行中)でないとき(赤色灯とサイレンがオフの状態)でも白バイやパトカーは次の特例があります。
もつぱら交通の取締りに従事する自動車で内閣府令で定めるものについては、第十八条第一項、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二並びに第二十五条の二第二項の規定は、適用しない
出典:道路交通法第41条第3項
「第十八条第一項、第二十条第一項及び第二項、第二十条の二並びに第二十五条の二第二項」と言われてもピンとこないので具体的に書きます。
緊急の用務としての走行中でない(赤色灯とサイレンがオフ)ときでも、白バイやパトカーに対して除外されるもの。
- 第18条第1項(左側寄り通行)
- 第20条第1項(最も右以外の車両通行帯通行義務)
- 第20条第2項(車両通行区分、専用通行帯)
- 第20条の2(路線バス等優先通行帯)
- 第25条の2第2項(横断、転回又は後退の禁止)
つまり、白バイが赤色灯とサイレンをつけないで転回禁止場所でUターンしても違反ではありません。
パトカーが交差点で交差点の右折レーンから赤色灯もサイレンもなしで直進しても違反ではありません。
また、道路交通法第41条3項の特例以外にも、都道府県公安委員会規則(各都道府県の道路交通規則や道路交通法施行細則など)で交通規制の特例がある場合もあります。これは都道府県で内容が異なります。
道路交通法第4条に公安委員会の交通規制があります。都道府県公安委員会は信号機又は道路標識等で規制することが出来ます。
なので、都道府県公安委員会が定めた交通規制は都道府県公安委員会規則で除外されていればそれでOKということです。
赤色灯もサイレンもしないパトカーが踏切で一時停止しなかった、一方通行を逆走した、であっても、都道府県の公安委員会規則を確認しない限りそれが違反かどうかはパット分かりにくい部分があります。全国共通ではありません。
白バイのUターンについてはかなり指摘が多いのか、愛知県警察にこの意見についての回答があります。
勘違いが起こる原因
そもそもなんでこういう勘違いが起こるかというと、道路交通法や道路交通法施行令が、解釈しにくいような大昔の日本語記述だったり、改行もないダラダラと長い文章で見づらく、ごちゃごちゃした書き方でパッと見てわからない。
道路交通法での交通規制や公安委員会の交通規制、そしてそれぞれで除外項目。何がなんだか分かりにくいが、一般人は道路交通法ですべて正誤を判断してしまう。なので道路交通法で除外されていなければ違反だと認識してしまう。
都道府県公安委員会規則が全都道府県でネットで公開しているわけではないので、調べにくいこと。
都道府県公安委員会規則は警察車両についてだけでなく、都道府県民の道路における禁止行為なども決められています。この規則はネットでも全文をきちんと公開するべきだと思います。都道府県民の目の届かないところで文書としてひっそり保管していても何が禁止されているのかさっぱりわからないです。
緊急自動車は赤色灯を回しサイレンを鳴らさなければいけないと道路交通法にある、だからそれらを使用していないときは一般車両と同じように運転しないと違反である。ただ、速度取り締まりのときだけはサイレンは不要なのです。
だから白バイが赤色灯もサイレンもなしで転回禁止の場所をUターンするのは緊急自動車ではないために違反です。