インターネット掲示板でたまにこういう疑問を投げかける人がいる。
「タンパク質はプロテインサプリだけでいいよね?」
「ビタミン剤飲めば野菜食べなくていいよね。」
「同じ栄養ならサプリメントだろうが食べ物だろうが一緒だよね。」
安くて手っ取り早い方をという理論。
サプリメントメーカーでは「サプリメントは栄養補助食品です、主食、主菜、副菜を基本に」としているが、その理由を納得いくようには語っていない。
ちなみに私はサプリメントは一切摂っていません。摂っていない理由は必要ないから。必要あればとってもいいとは考えます。
サプリ信仰、天然食材信仰、私はどっちの派でもないし、互いの主張から偏ることのない客観的な視点でざっくり意見を書いていきます。結果によっては偏るかもしれないですが。
そもそもサプリだけで栄養のすべてを摂取できるのか
これは極端な話になります。サプリだけで一応はすべて摂れます。
今や何でもサプリであります。乳酸菌サプリさえもある時代。
ただし糖質サプリは米や小麦粉に比べるとコスト的にかなり割高。
極端論でサプリのみで生きていこうと思った場合、積極的に摂取しないとカロリー不足になりそうな予感はします。水に糖質やプロテインパウダーを大量に投入して、もはや半ねり状態で食べる感じになるのではないでしょうか?
栄養注入みたいな作業になり、食事の幸せ感がなくなります。
- タンパク質 サプリで摂れる
- 脂質 サプリで摂れる
- 糖質 サプリで摂れる
- ビタミン・ミネラル サプリで摂れる
- 食物繊維 サプリで摂れる
サプリメントの問題点について
海外でのサプリメント事情を探っていくと、サプリメントユーザーの多くは自分が食材からどれだけ栄養を摂取しているのか把握しないままサプリメントを使用しているということで、過剰摂取や偏りのリスクが言われています。
サプリメント中心にしてしまうと、よく言われるのが、咀嚼力低下、栄養バランスの偏り、腸内環境への影響。サプリメントのビタミンと食物のビタミンは違う・・などあるようです。
過剰摂取、栄養の偏り
過剰摂取についてはサプリメントでは容易に過剰になってしまうこともあります。
素人が何の知識もなく安易にサプリメントへかじり付いている問題。
ただし栄養に偏りについては食物でも言えることで、過剰摂取でも偏りでもサプリメントであろうが食材であろうが、管理できていない人はどちらも管理できていない。きちんと管理できている人はどちらも管理できている。
これらの問題はサプリメントのせいではなく、摂取量やバランスを管理していないのが原因です。
サプリメントでビタミンAの過剰摂取の問題を上げられることがありますが、ビタミンAサプリメントを選ぶ際はβカロテン(カロチン)のものを選べば問題はない。
過剰摂取が問題になるレチノールのものは選ばない。βカロテンの場合は過剰摂取しても脂肪組織へいくか排泄されるので問題はない。むしろ豚や鶏レバーの食材のほうが遥かに問題である。
以下の記事にレバーのビタミンAについての問題を書いています。
咀嚼の影響
咀嚼については、サプリメントメインで咀嚼が減ると咀嚼能力は低下するでしょう、しかし全く顎を動かしてないわけではありません(ある程度は食材から食べ、それに会話で顎を動かしているわけで)。
それが健康にどれほど悪い影響を与えるのか。理論上はそうであっても、では実際に人間で証明した研究結果は有るのでしょうか。
高齢者が病気などで入院して咀嚼できないと弱っていくのが速くなると言われますが、それは加齢や病気、薬などの治療、ベッドレスト生活が起因している可能性もあります。
ラット実験などは動物は食べる以外に口を動かさないので参考にはなりません。
人間は会話する時に顎や舌を動かしますから、会話で顎や舌を動かすことで脳が活性化していれば咀嚼が減ることの悪い影響は出にくいのではないかという疑問があります。
ホーキング博士は咀嚼ができなくなっても記憶や学習能力に影響はなかったと思えますがどうなんでしょうか?
日本人より食事回数も量もはるかに少ないアフリカの貧困層は咀嚼回数も少なくなるが、栄養不足が起因する病気や症状以外になにか悪い影響が出ているかと言えば、歯並びは綺麗だし口腔環境は良好、思考能力も記憶力にも咀嚼の少なさが影響しているようには思えないのです。
ちなみに食事で全く咀嚼しない実験を30日やった動画。完全食ソイレントをひたすら飲むのみ。
咀嚼の影響というより、全く食べないということが精神的にかなり参ってしまっています。食品を再び食べたときの彼の笑顔。
マンチェスター大学と米国国立衛生研究所の研究で、咀嚼が免疫細胞であるTh17細胞を刺激していることが明らかになっています。
The study led by teams at The University of Manchester and National Institutes of Health in the USA, revealed that a specific type of immune cell, the Th17 cell, can be stimulated when you chew.
Source:Research reveals surprising health benefits of chewing your food(Medical Xpress )JANUARY 19, 2017
その他、いくつかの研究も見ましたが、咀嚼は脳の活性化など健康に良い影響を与えている報告が多く、これは間違いないようです。
咀嚼を積極的にすればいい影響はあるという報告は多いが、では逆はどうか。
まったく咀嚼しない生活は長期に渡るほど顎の筋肉の衰えや腸内環境に影響を与える可能性は十分想像がつきますが、食事に加えたサプリメント摂取の影響レベルであれば咀嚼が多少減る程度なら悪い影響はないのではないでしょうか。
同じ栄養素でもサプリメントと食材で差はあるのか
同じ栄養でも食材とサプリメントでは違う(食材のほうが上だ)ということも聞くが、これに関しては十分な根拠を聞いたことがない。実験での証明と科学的なメカニズムまできちんと説明する必要があるでしょう。
食材の摂取でのみ健康に効果が出ていたとする研究
ビタミン・ミネラルの適切な摂取はガンや心血管疾患の死亡率低下と関連していたが、それはサプリメントではなく食物からの栄養摂取のみが結びついていたとする報告。
これは2万7,000人の平均6年間に及ぶ追跡調査の結果で、2019年の今年、米国内科医師会(ACP)に 掲載されました。
Adequate intake (at or above the Estimated Average Requirement or the Adequate Intake level) of vitamin A, vitamin K, magnesium, zinc, and copper was associated with reduced all-cause or CVD mortality, but the associations were restricted to nutrient intake from foods.
Source:Association Among Dietary Supplement Use, Nutrient Intake, and Mortality Among U.S. Adults: A Cohort Study(ACP)
ただし、この研究は研究者からは正確性に乏しいとされ、さらなる調査の必要性があるようです。
野菜には未知の成分があり、それがいい影響を及ぼすとする点
サプリメントと食材で比べた場合、食材にはサプリメントにない未知の成分が含まれているという意見もあります。
しかし未知の成分が何なのか、それが科学的にどう作用しているのかというメカニズムについての論証がない以上、主観的な想像でしかないし、なんら説得力はない。
未知の成分は置いといて、天然の野菜などは特定のビタミンだけが入っているわけではないので特定の栄養を集めた合成サプリより広い栄養を同時に摂取できる利点は有る。そして同時にシュウ酸など余計なものまで摂取することにもなる。
つまり食品とサプリでは利点欠点がありどっちが上だという判断は難しい。
食材の天然ビタミンCとサプリメントの合成ビタミンC
栄養素のひとつをピックアップすれば、具体的に食品からのビタミンCとサプリメントからのビタミンCは何が違うのか。
サプリメントは主にとうもろこし原料の合成ビタミンC。L-アスコルビン酸である。
サプリメントを作っているメーカーでは天然と合成に違いはないと主張し、野菜などを取り扱っているメーカーではサプリの合成ビタミンCより天然食材のビタミンCほうが吸収が良いなどという主張で互いに対立している。
天然と合成では吸収に違いがあると言っている点については、その科学的なメカニズムについてきちんと説明してはいない。
合成ビタミンCは病院でも治療で使われているし壊血病の治療にも効果があることからも、きちんとビタミンCとして機能していると思います。
人間の脳が情報によって天然と合成を区別できても、同じ構造なら人間の体は天然と合成の区別などつかない。ビタミンCはひとつの栄養としてしか認識できない。
天然食材はフラボノイドも含まれていてその組み合わせでビタミンC吸収率が増している云々の議論もあるが、これは天然食材と合成サプリメントのビタミンCは違うのかの議論であり、他の補助的な栄養素の影響も含めた議論とは違う。
仮にフラボノイドの影響も考慮するならサプリメントもフラボノイド入りビタミンCで比べることになる。
なぜならフラボノイドのサプリメントが存在するし、ビタミンCを摂取するのが天然食材であってもフラボノイド豊富な柑橘類とは限らない。じゃがいもでビタミンCを摂る場合だってある。
合成ビタミン類が石油化学物質からできているというサイトが有るが
サプリメントの合成ビタミンは石油化学物質からできているから危険みたいなことを書いているサイトがあります。
石油化学物質由来?これを探っていくとある本が出てきた。
おそらくそ本が出どころでしょうか。以前、マーガリンは石油からできているという間違った情報がインターネットに出回っていましたがビタミンについてはどうなんでしょうか?
- ビタミンA 植物由来 動物由来
- ビタミンB群 酵母由来
- ビタミンC とうもろこし由来
- ビタミンD 羊毛や肝油由来
- ビタミンE 植物油由来
石油化学製品は出てきませんでした。いくら調べても一切出てきません。
サプリメントにするメリット、デメリット
- 手軽に摂れる。
- 栄養の計算がしやすい。
- 野菜全般のようにシュウ酸、また一部の野菜のように毒性の物質が含まれていない。
- 塩分過剰摂取の心配がない(ただし食品でも味付けなしで食べればいいこと)。
- 食事が早く終わり後片付けもない。
- 栄養状態の知識管理なしで適当に摂取すると過剰摂取の恐れがある。
- 咀嚼が減ることの健康への影響が懸念される。
- サプリで食事をしても楽しくない、ただの作業になる。
総合的に判断すると
サプリメントは使用量に注意。これは当たり前のことですが、栄養状態を把握せずに使用している人が多いということ。
しっかりした管理の元でサプリメントを使用するのであれば栄養過多や偏りの問題はない。つまりこれはサプリメントのデメリットではなく、使用法の問題であるということ。
咀嚼の影響については、咀嚼は人間にいい影響をもたらしてはいるのは間違いない。
サプリメント摂取の影響で咀嚼が多少減ることへの懸念は、咀嚼を増やすと良い影響はでるが、(サプリ摂取することの影響レベルで)咀嚼が少し減ってしまう程度ならば悪い影響は出ないのではないか。
食材とサプリメントの栄養摂取や健康効果が違うという点についてはいくつか研究があるが、まだそれが天然と合成の違いによる影響なのか特定するには情報が不足。
同じ栄養素でもサプリメントで摂取するのと食材で摂取するのは違うのかというと、一つの栄養素として判断した場合は同じと言わざるを得ない。
体に与える影響に違いがある点については、食材から摂取したほうが健康に良い影響を与えているという研究は有るものの、その科学的なメカニズムについては語られていない。
サプリメントと食材を比べた場合、サプリメントに良い意見を書いているところは総じて少なかった。食材を推する気持は良くわかります。しかし現実は主観的で偏った見かたをしているサイトが多い印象でした。
結論としては、同じ栄養ならサプリメントでも食材でも効果は変わらない。
天然食材だから体にいいというわけではない。
栄養状態を把握せずにサプリメントを使用している人が多い問題がある。
栄養管理が出来た上でサプリメントを補助的に適量で使用する必要がある。
きちんと管理できていればサプリメントはなんら問題はないという感想です。
ただしサプリメントメインで食材を殆どあるいは全く取らないというのであれば長期的な安全性を証明している研究データはないのでお薦めはできないです。
ちなみに私はサプリメントを一切摂っていません。理由は必要ないから。
それに食材から摂ったほうが美味しいし幸せ。