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物流トラック2024年問題、一方でスイスは4割が鉄道輸送

2024年から変わるトラックドライバー時間外労働の上限規制によって、ただでさえ不足しているトラックドライバーが更に不足し、物流業界は窮地に追い詰められています。

日本は車社会であり、物流はトラック頼み。このトラックが上手く回らないとなると物流が滞ってしまいます。物流業界ではどうしていいかわからないといった声もあるようです。

一方で鉄道王国スイスではすでに国を上げてトラック輸送を減らし、鉄道輸送へシフトしく動きが活発です。車社会の日本とは対照的です。鉄道輸送であればドライバーの負担は減り、ガソリン高騰の影響も少なくCO2削減にもなります。

今から鉄道にシフトすることは交通環境を大幅に手を入れなければならず、大幅な環境変化というのはは、今の環境に慣れた人々にとっては受け入れられにくい事はわかってはいるが、一つの有効な案となると思っています。

鉄道輸送に積極的なスイス

スイスは山国であるにも関わらず鉄道輸送に積極的です。スイス連邦統計局によれば2021年の鉄道輸送のシェアは約37%(アルプス横断輸送については鉄道が74%)。スイスは鉄道輸送のシェアが極めて高い国です。

一方で国土交通省によると日本では鉄道輸送のシェアはたったの1%程です。輸送距離を考慮して考えた場合でもたったの5%。日本のほうが国土が広く縦に長いのに鉄道はあまり活用されていません。

日本が抱えている問題は、トラックドライバー不足に加え時間外労働の制限、ガソリン高騰による輸送費の影響。鉄道輸送はその救世主となるでしょうか?

動画はスイスの貨物列車です。

スイスでは道路の通行税がかかる

日本は物流をトラックに依存しすぎで鉄道輸送がほとんどない国。むしろ北海道では廃線危機で貨物列車の存続が危ぶまれています。

逆にスイスの場合は鉄道輸送に国が昔から力を入れていて補助金を出し鉄道は存続されています。スイスでは鉄道改革をし、今よりもさらに重量物の道路輸送を減らし鉄道にシフトするために、2017年より3.5トンを超えるトラックから通行税をとっています。

この通行税が1トン1kmあたり3.5-4.8円ほど(現在のユーロ円で換算)。例えば20トン以内の3.9円で計算した場合、20トントラックが400kmを走れば3万1,200円の通行税。

この通行税を減らそうと鉄道利用が増え、トラックでの輸送シェアを抑え込んでいます。

実は鉄道物流に関しては日本でも議論されています。

貨物列車ターミナルの近代化

長距離輸送を貨物列車で運べば、ドライバーの負担は物流から鉄道のターミナルまでの距離を運ぶだけです。長距離運転は必要ありません。

貨物列車といえば日本ではJR貨物で10フィートくらいのショートコンテナを運んでいることを見ることはありますが、この場合は積み込みはフォークリフトです。

列車にコンテナを乗せるのはフォークリフトを使う以外にも方法があります。海外ではフォークリフトなどなしでローディングしているところもあります。

海外では鉄道輸送の効率化が進んでいます。

トラックごと列車に乗せて運ぶ

鉄道輸送といえば日本では列車車両にコンテナを乗せる形式の貨物鉄道ですが、ドイツ、スイス、オーストリアでは大型トラックごと列車に乗せることがあります。

トラックごと鉄道に乗せる発想は車社会の日本からすると信じられない光景です。

下の動画はオーストリアの鉄道です。

もちろんこの輸送は無料では有りません。どれくらいの料金がかかるのかは下のROLAの公式サイトから調べることが出来ます。

このトラックを積み込むためには専用のターミナルが必要ですが、車社会の日本は道路や駐車場に極めて膨大な土地を消費していますのでそれに比べると針の穴程度の面積です。

トラックを積み込んだあとはドライバーは列車に乗り込んで何時間も休憩できます。その間トラックは列車で移動しています。

鉄道にするメリット

  1. 道路が傷みにくくなる(大型トラックは道路を傷める)。
  2. 交通渋滞の緩和。
  3. 交通事故の減少。
  4. ドライバーの負担減少。
  5. ガソリン消費が減る=CO2削減。

1は、大型トラックは重量が重く、特に路面が柔らかい夏場はその影響で路面にヒビや、車道端に轍ができやすくなります。大型トラックが多いと道路の寿命に影響します。これを考えれば大型トラックから道路税をとってもいい気もします。

2.3について。高速道路は場所や時間によっては大型トラックで溢れ、普通自動車が前後と右側を大型トラックで囲まれるなんてこともあります。高速道路や一般道の峠など、大型トラックが多いと交通の流れが悪くなります。狭い道路を道幅いっぱい使って走る大型トラックは、自転車や歩行者とって危険です。交差点での右左折での事故もリスクが高いです。鉄道はこのリスクを無くします。

4は、コンテナを乗せる貨物列車の場合は、ドライバーの負担は物流から鉄道ターミナルまでの往復だけです。列車にトラックごと乗せる場合でも、ドライバーは列車内で長い時間まとまった休息できるということです。

5は、トラックのガソリン消費が減る。長距離大型トラックの燃費はリッターあたり2km台ということらしい。大型トラックは多くの燃料を使います。鉄道で運ぶことはガソリン価格上昇の影響も少なく、温暖化対策としても有効です。

デメリット

デメリットももちろんあります

  1. 輸送時間が決まっている。
  2. 輸送料金がかかる。
  3. トラックを乗せるターミナルが必要。
  4. 災害時の物流寸断。

1は輸送時間。いつでも出発できるわけでは有りません。鉄道は出発時間が決まっており、トラックはそれに合わせなければなりません。

2は、鉄道輸送には料金がかかるということです。かわりにトラックの燃料代が浮きます。

3はコンテナをトラックから分離して乗せるにしろ、トラックごと積み込むにしろ、専用のターミナルが必要になります。どこに作るか、費用は?という問題があります。

日本では荷主が鉄道輸送を災害時に弱いと指摘しています。日本はスイスとは違い地震や台風など災害が多い国です。

ただ、台風のときはトラックも普通に止まります。僕が食品を扱う2万トンの物流センターにいたときは台風時は通行止めの影響で遠距離の入出庫はキャンセルだらけ。トラックなんて殆ど来ませんでした。こんなものは鉄道もトラックも同じでストップします。

そもそも鉄道の運休なんて日常ではめったにないですし、1年に1回あるかないかのことをデメリットで扱うべきかは疑問。鉄道が運休する気候環境をトラックで道路を走って強行突破しても危険でしかないです。

台風後の災害で線路が寸断されたとき(まあ道路も寸断されますが)、迂回についての指摘があります。そういうときはトラックで迂回路を探して直接運べばいいだけ(これは今まで通り)。これくらいは荷主と運送会社が話し合って対処するべきでしょう。

まずはトラック運転手不足で日常の輸送が回りきれないことのほうが遥かに深刻なダメージであり問題です。

トラックより鉄道が遅いという指摘もありますが、それは距離によります。近距離なら鉄道で運ぶメリットなんかない。しかし僕が言いたいのは長距離。長距離鉄道をトラックで運ぶと長い休憩を挟む必要がありますので、トラックは効率が悪く鉄道のほうが速い。スイスを通過する輸送では実際に鉄道のほうが速い。

コンテナをフォークリフトなどで積み込むときの衝撃を指摘する荷主もいるようですが、これはオペレーターの腕次第です。ちゃんとしたオペレーターならトラックで道路を移動するときの衝撃よりも少ないです。てかここを指摘する荷主は物流の現場を見たことがあるのか疑問です。

そもそも鉄道輸送シェア1%の日本、鉄道輸送を利用もしたことがない荷主が否定ばかりしているのはよくわかりません。荷主にとっては、本音は「慣れないことをしたくない」という感じでしょうか。デメリットを荒捜ししているようにしか感じません。

新しいことを始める(変化を起こす)と肯定より否定が多いのはどの世界でも同じです。これは慣れ親しんだやり方が今更変わることに抵抗があるからで、どっちが効率がよく理想的であるかなんて関係なく否定される傾向があります。

とはいえ鉄道輸送に消極的だった日本がスイスのようにやるには大きく手を入れる必要があります。ただ、車社会は色んな意味でつけが回ってきていると感じます。モーダルシフト(鉄道などへの転換)は無視できない課題でしょう。

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