現代ビジネスの記事に、凶悪事件に絡んだ遺伝子ドライブの思想の内容のものがありました。
ゲノムを編集し、遺伝子ドライブに導くことで優秀な遺伝子を増やし、置き換えていくという思想の話。
ただこれはとっても怖いことです。
人為的な遺伝子ドライブには生命倫理など様々な問題があるが、最も怖いのが人為的に遺伝子ドライブを行うことで人類絶滅のリスクが生じるということ。人への遺伝子ドライブへの計画はまだ聞いたことがないがこれは大変なリスクがあります。
なぜ優秀な遺伝子に置き換えることで人類が絶滅するリスクがあるのか、この記事で書いていきます。
遺伝子ドライブとは
遺伝子ドライブとはある特定遺伝子に偏る現象のこと。
ゲノムを編集することにより、この遺伝子ドライブを人為的に発生させ遺伝子を偏らせる研究が行われている。
例えば害虫の駆除などである。子孫を残せない遺伝子に害虫を改変してその個体を増やし遺伝子ドライブさせることで駆除するというのである。しかし人為的な遺伝子ドライブには反対意見も多い。
遺伝子の多様性が絶滅から救ってきた
遺伝子の多様性は長い歴史の中で大きな環境の変化から幾度も絶滅の危機から救ってきました。これは種の多様性もそうですが、ヒトという一つの種の中での遺伝子の多様性も、ヒトの絶滅を救ってきたのです。
ヒトの遺伝子には多様性があります。
- もともと力のある人・力のない人、
- イライラしやすい人・おっとりした人、
- 特定のウイルスに免疫のある人・ない人、
- 紫外線に強い人・弱い人、
- 右利き・左利き、
- 右脳・左脳、
- 臆病な性格・リスクを恐れない性格、
- 高身長・低身長、
- 太りやすい人・太りにくい人、
- 集団の中にいるのが好きな人・一人が好きな人
- 都会に住みたい人・田舎に住みたい人
- 暑い地域に住みたい人・寒い地域に住みたい人、
- 人に左右される人・人に左右されない人、
- 暑さに強い人・寒さに強い人、
- 辛いものが好きな人・嫌いな人、
- 新しいものを取り入れようとする人・古いスタイルしか受け付けない人、
- 車が突っ込んできたら右に避ける人、左に避ける人
- 歩道は真ん中を歩く人・端を歩く人
- 外出が好きな人・家にこもるのが好きな人
など様々です。食べ物だって好みが異なります。多様性のおかげで住む場所も散らばって生きています。人の行動も様々です。これらはどれが優秀なんてありません。特定の環境下では特定の性質が優位に働きます。環境が変わればまた違う特性が優位になります。オールマイティはありません。
たとえば小柄な鳥類はその警戒心が強く臆病な性格のおかげで危険から守ることが出来、絶滅の危機から生き残ってきたと言われています。逆に臆病なことで住処を追いやられることもあります。
遺伝的多様性は環境の変化や災害で何かしらの個体が生き延びる確立があがります。
遺伝子ドライブは絶滅を誘発する
人為的にゲノムを編集してヒトの遺伝子ドライブを起こすことは、ちょっとした環境変化や災害などで人類絶滅を誘発します。
遺伝子の多様性は人類を絶滅から救ってきました。例えばどんな凶悪な新種のウイルスが登場しても、ヒトの遺伝子は多様性があり、特定のウイルス(新種であっても)に対して生まれつき免疫を持った人が必ず一定割合いるので絶滅はしません。
遺伝子の性質が同じことによって全員が同じ場所を好んで住んだとします。するとその場所に巨大隕石が落下したり、破局噴火やその他大災害が発生すると一発で絶滅します。しかし実際は人間は地球全体に散らばって住んでいるから特定の場所で大災害が起きても絶滅は免れる可能性が高いのです。
遺伝子に優秀なんてありません。
津波が襲ってきたときに、臆病な性格だと早めに避難して助かる率が高くなります。しかし火災となると臆病な性格だと避難するときに2階からすぐには飛び降りれないかもしれません。
他人を威圧するような攻撃的な遺伝子が悪で、平和主義の方がいいのかというと、必ずしもそうとも言えません。例えば熊と鉢合わせしたときに、戦いを避けたいために逃げてしまうと追ってきます。しかし睨みつけて威圧すると熊は襲ってきません。
全ての環境において優秀な遺伝子というものはありません。ある環境では優秀でも別の環境では劣勢になることがあります。それは一つの要素を変更するだけでもリスクがあります。
肌の色でも紫外線に強い黒い肌が最強かと思うかもしれませんが、黒い肌は紫外線が少ないところでは十分にビタミンDを皮下で合成できません。
短距離が速い瞬発力系は事故の回避などとっさの動きに優れているかもしれません、しかし持久系も津波などから逃げ続けるという能力に優れています。
地震で建物が崩れたときも、ガッチリして身体の大きいほうが防御力は高いし瓦礫を取り除く能力は高いです。しかし人力では取除けない瓦礫で埋まった場合、狭い隙間から脱出できるのは身体が小さな方です。
ちなみに知能的な天才の遺伝子という特定遺伝子は存在しません。いろいろな要素が絡んで天才を作り出しているようです。つまりそこには考えかたや視野や行動パターンなど色々絡み合っていることでしょう。
地球で大きな環境の変化や災害などが起こったときに、絶滅を免れて一部が生き残れるのは多様な伝子のおかげです。多様性があれば人の行動は散らばるので数は減っても何かしらの遺伝子が生き残ります。
こういった多様性をいじって特定の性質に偏らせることは、なんらかの環境の変化や出来事があったときにその遺伝子が適応していなければ多様性がないためにすべて消えてしまいます。これは種の絶滅を招くことになります。