ワーワー言われることが多い遺伝子組み換え食品。
遺伝子組み換えは使用していませんという表示を見ることは多い。
しかし、使用していませんと表示があると、遺伝子組み換えは悪いものなのかというイメージが出来る。
そして消費者はその何が悪いのか分からないまま遺伝子組み換え食品を避けたがります。
遺伝子組み換え食品が体にいいのか悪いのかというと結論を先にいうと問題ありません。しかし反対派団体との論争は絶えません。
この記事では生物多様性への影響ではなく、食品としての安全性について焦点を当てて書いていきます。
遺伝子組み換え食品とは
遺伝子工学を用い、ある特性を持った遺伝子の一部を取り出して、改良したい遺伝子へ組み込むことで新しい特性を持ったものへ改良していく。
除草剤耐性を持たせたり、害虫に強くしたり、栄養価を上げたり、いろいろな特性をもたせることが出来ます。
遺伝子組み換えについて詳しくはこちら
遺伝子組換え食品(厚生労働省)
遺伝子組み換え作物の安全性は確立している
遺伝子組み換えと品種改良での違いでは、品種改良という自然交配ではありえない掛け合わせが遺伝子組み換えでは可能だということ。
このときに有害成分をもつものへの予期せぬ変化が起きていないか、食べてアレルギーなどを起こさないか、こういった心配がされます。
ですが多くの場合、遺伝子組み換え作物のリスク評価は安全です。安全とされたものしか市場には出回りません。
EUに関して言えば、毒性やアレルギー、環境への影響のリスクに問題がないとして承認されても10年ごとにEFSAによって再評価されます。
たった1つや2つの研究結果で科学的根拠となることは殆どありません。欧州食品安全機関(EFSA)などの専門機関では、様々な異なる結果になった研究を幅広く多く集めて一つ一つの研究の質などが評価され総合的に結論が出されることになります。
遺伝子組み換えとうもろこしでは、害虫が食べると死んでしまうBtタンパク質を持ったものがあるから危険だと言われることがあるが、厚労省では、ヒトの消化管にBtタンパク質の受容体がないため食べても安全ということです(※1)。
※1 遺伝子組み換え食品の安全性について(厚生労働省医薬食品局食品安全部)
https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf
危険性があるという科学的根拠はあるのか
結論から言うと、ない。
否定派は科学的根拠として、自分たちに都合の良い結果の研究ばかりを列挙して訴えるが、不備があったり、科学的根拠が不十分であったり、再現性がなかったり、未発表のものであったり、どれも研究の質が悪いものばかりです。
下のリンク先で、遺伝子組み換え食品に危険性があるという研究についての研究の質が指摘されています。
特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構(ILSI Japan)バイオテクノロジー研究部会
http://www.ilsijapan.org/ILSIJapan/COM/Bio2010/rikaisuru2-2.pdf
遺伝子組換えのジャガイモをラットに食べさせたところ、免疫力の低下が見られたという報告について(厚生労働省医薬食品局食品安全部)
https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/qa/qa.html#%EF%BC%A4%EF%BC%8D%EF%BC%99
GM作物へ散布した農薬が原因で健康被害云々
GM作物=遺伝子組み換え作物。
アルゼンチンで農薬に強い遺伝子組み換え作物にラウンドアップという除草剤の農薬を散布してその成分であるグリホサートの影響でがんや奇形が増えている云々などネットにあります。
これは遺伝子組み換え作物の影響なのか、グリホサートの影響なのか、それともその他環境汚染による影響もあるのか。
グリホサートの発がん性や遺伝毒性については、日本の場合は内閣府食品安全委員会では認められなかったということです。
グリホサートに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・
情報の募集結果について(内閣府食品安全委員会)
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/iken-kekka/kekka.data/kekka_no_glyphosate_280406.pdf
しかし海外では結論が分かれます。
グリホサートの発がん性については「リスクが考えにくい」とするのは欧州食品安全機関(EFSA)、FAO/WHO 合同残留農薬専門家会議、米国環境保護庁(EPA)。
「おそらく発がん性がある」とするのはカリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)、国際がん研究機関(IARC)。
世界的には2019年の流れを見ると、グリホサートを禁止にする国は増えつつあります。
グリホサートに問題があれば、遺伝子組み換え云々反対ではなく農薬に使うグリホサートを止めるべきです。この場合、遺伝子組み換えに直接の危険性があるのではなく、グリホサートに危険性があるのですから。
ちなみにグリホサートというと日本でも小麦製品で微量に検出されていますが、遺伝子組み換え小麦は日本では輸入含めてありません。主な輸入国であるアメリカでも遺伝子組み換え小麦は販売も栽培もされていません。
グリホサートのばく露リスクは遺伝子組み換え関係なくあります。遺伝子組み換え食品だから残留グリホサートが検出されているというものではありません。
これは遺伝子組み換えの安全性の問題としてではなく、グリホサートとしての問題で考えていくべきだと思います。
じゃあなぜ表記の義務があるのか
日本では、遺伝子組み換えが5%を超える8農産物及びそれを原材料とした33加工食品群については表示義務があります。
遺伝子組み換えが安全というのなら表示しなくてもいいだろう!と思うでしょう。
しかし安全であっても、遺伝子組み換えを不安に思う人は多く、消費者に正しい情報を伝え、商品を選択する権利を与えるという目的があります。
EUにおいては輸入は認められている。栽培の許可は一部。遺伝時組み換え表示の義務がある。これは0.9%以上とから表示であり、日本の5%より厳しい。またEU加盟各国では栽培を禁止にしている国もある(加盟国別で栽培の禁止が可能)。
EUのウェブサイトによると、消費者と専門家が情報に基づいて選択ができるようにする目的でラベル表示を明確にしているとのこと。
ECの世論調査によればEU諸国の国民(消費者)は遺伝子組み換えに対して警戒心が強い。消費者には知る権利があります。このような国民感情を反映させ、遺伝子組み換え表示を徹底していると考えられます。
Regulation (EC) No 1829/2003では、遺伝子組み換え食品および飼料に関する人命と健康、動物の健康と福祉、環境、および消費者の利益を高水準で保護する目的が掲げられています。消費者の権利の促進に貢献するということも定められています。
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:32003R1829&from=EN
欧州では遺伝子組み換えに厳しい国が多いですが世界的に見ると国によって規制は大きく異なり規制の違いが大きく出ています。2019年には中国が遺伝子組み換えとうもろこしや大豆など5件の輸入を承認しました。
専門家=安全です、消費者=危険だ
遺伝子組み換え食品は一般的な非GM食品よりも健康へのリスクは低いという科学的コンセンサスがあります。科学者は過剰規制に批判的の傾向があります。
しかし一般消費者は遺伝子組み換えには多くの人が批判的です。同時に遺伝子組み換えについてよく知らない人が多い。
遺伝子組み換え食品は危険だ!と騒ぎ立て不安心を掻き立て広めようとするサイトも見られます。しかし危険であるという明確な科学的証拠は何一つ提示されません。彼らが提示する根拠はどれも質の低い研究ばかりです。
研究なら何でも根拠になるというわけではありません。
都合のいい研究だけを並べては云々訴えても仕方がありません。だから専門機関では様々な結果を持つあらゆる研究を出来る限り集め、それらを一つ一つ評価していきます。
欧州食品安全機関(EFSA)は市場に流通する遺伝子組み換え食品のリスク評価を度々行いますがどれも健康リスクは極めて低いという結論です。
厚生労働省医薬食品局食品安全部でも、問題がないことが確認されているので食べ続けても大丈夫ということです。
遺伝子組み換え食品は、健康リスクがある、避けたほうがいいという根拠のないイメージはきっぱりなくしていいと思います。遺伝子組み換え食品は悪いものではありません。むしろ積極的に食べていい。