数年前くらいからか、「小麦を食べるな!」「小麦は体に悪い!」「小麦は危険!」とやたら叫ぶ人がいます。
悪い点ばかりを列挙してはなにもかも否定するという手法は怪しいと感じました。そこで、これもフードファディズム的な熱狂信者による過剰反応なのか、どっちの味方でもない私が中立的に調べます。
小麦製品って多いですよね。これを食べないとなるとかなり生活スタイルが変わる気がします。美味しいものたくさんあるのに。毎日食べてるのに危ないの?
小麦粉製品からグリホサートが検出された?
除草剤として使われるグリホサート。
2018年に農民連食品分析センターの検査でグリホサートが検出された。ということらしいですが。そのソースが正しいのか一般社団法人農民連食品分析センターのウェブサイトで見てきました。
•グリホサートは、検査を実施した24製品中、17製品から検出されました(定量下限値以上が12製品、定量下限以下、検出限界以上が5製品)。グリホサート代謝物AMPAは、2製品で痕跡の結果となりました。
出典:小麦製品のグリホサート残留調査1st(一般社団法人 農民連食品分析センター)
事実でした。
では我々がよく食べる食パン製品ではどうでしょう。
•グリホサートは、検査を実施した15製品中、11製品から検出されました(定量下限値以上が10製品、定量下限以下、検出限界以上が1製品)。グリホサート代謝物AMPAは、1製品で痕跡の結果となりました。
出典:食パンのグリホサート残留調査(一般社団法人 農民連食品分析センター)
これも多くの製品で検出されていました。
グリホサートが検出されたのは間違いなかった。
では検出量から見ての安全性はどうなんでしょうか?
グリホサートの残留基準値
小麦については30ppm(変更されて緩くなった)
イモ類や野菜類などは0.1–0.2ppm
※残留基準値は、各食品の摂取量に基づいて決められています。
一般社団法人 農民連食品分析センターの検査によれば食パン製品は概ね0.1ppm以下。多かったのが強力粉でそれでも1ppmをちょっと超える程度。
しかし、小麦の基準値が異様に甘いというのはなぜだ?
外国に合わせたのでしょうか?主食系は摂取量が多いと予想されるんですけどね。
多くの小麦製品でグリホサートは検出。
小麦製品に含まれているグリホサートは基準値より遥かに少ない。
しかし、小麦は基準値が他の食品に比べ甘い。
グリホサートは小麦粉だけじゃない
グリホサートいい始めると、ありとあらゆる食品が当てはまります。小麦粉だけが・・というわけではありません。
グリホサートいい始めたら食べるものはなにもないです。しかし気になるのは小麦の基準値の甘さ。しかし検出された残留値は低い。気になる方は無農薬で販売しているものを買うか、自家栽培しかないですね。
グリホサートの危険性
グリホサートは危険だと訴える人は多い、それとは逆に安全だと論文をいくつも上げて熱弁している人も見つけた。農薬と聞くと危険なイメージがありますが、危険か安全か、いったいどっちなのでしょうか。
グリホサート 危険度2A おそらく発がん性がある
食を通じてグリホサートが人に対して発がん性のリスクとなるとは考えにくい。
遺伝毒性はなく発がん性もない。
おそらく発がん性がある。
グリホサートは人に対して発がん性があるとは考えにくい。
神経毒性、発がん性及び遺伝毒性は認められなかった。
グリホサートは専門機関でも意見は分かれていますね。発がん性の疑いを出している機関も「おそらく」ということで、正直な所、まだよくわかっていないという感じです。
ウィキペディアを見る感じでは発がん性への確証的なエビデンスはないという感じでまとめられています。
農薬使用規制ではグリホサートの農薬散布を禁止にしている国もあるしそうでない国もある。国によってかなりバラバラの印象。
危険性は専門家でも意見が分かれる。
食べ物から摂取する想定レベルでは危険と断定はできないが危険かもしれない。
カリフォルニア州裁判で有罪になったから小麦は危ない?
これ、小麦粉製品を食べ続けたことによる裁判ではなく、学校のグラウンドキーパーとして農薬散布したときに曝露したことでの裁判です。
1975年から2011年までラウンドアップ(グリホサート成分の農薬)を使い続けて癌になったという訴えでした。
散布作業で直接吸い込むリスクが有る従事者と、残留農薬検査で管理された小麦製品を消費者が食べることとはリスクがまるで違うと思いますので小麦食品を食べるなと直接話を結びつけるのは無理があります。
2019年8月の情報だと、発がんの可能性があるとするカリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)とおそらく発がんの可能性はないとする米国環境保護庁(EPA)で農薬容器へ貼る警告ラベルについての意見の対立が起こっているようです。
ですがこれは小麦粉を使った食品ではなく、散布する農薬容器への表示の話。
小麦のグルテンが体に悪い
食物アレルギーの原因となるグルテン。これが体に悪いということらしい。
これが引き金となって小腸の炎症性疾患(自己免疫疾患)、セリアック病となるらしい。
セリアック病(自己免疫疾患)
アメリカ人の1%が羅患しているそうだが、日本では極めて稀ということ。
グルテン過敏症
セリアック病よりかなり多いとされるが、まだよく解明されていない。グルテンがどれだけ影響しているかは不明。
小麦アレルギー
これは小麦に限らず、卵や蕎麦、牛乳、大豆、ピーナッツ、エビ・カニでもそうだが最近はアレルギー患者が多い。アレルギーを誘発する環境はいくらでもあり、原因と特定することは困難です。
しかし、消費者庁の平成23年モニタリング調査によると、成人を対象とした場合はアレルギー比率は小麦がトップでアレルギー全体の38%ということです。
小麦多いですね。これが幼児期からすでに症状があったのか、あるいは成人以降に発症したのか、肝心な部分が気になるところですが。
しかしながら食物アレルギーの有病率は2%以下程度であり、その中での38%となると小麦アレルギー有病者は1%未満となる計算。
小麦は多くの日本人が食べており、小麦を食べることで小麦アレルギーになるリスクは十分考えられるが、小麦アレルギーではない成人が小麦を食べた場合、高確率で小麦アレルギーとなるわけではないということ。
グルテンは食物アレルギーの原因。
セリアック病は日本では極めて稀。
グルテン過敏症は過程が解明されていないため今後の情報待ち。
食物アレルギーの中で小麦アレルギーの割合は高い。
小麦が肥満やメタボの原因であるという主張
小麦が肥満の原因ではなく、生活活動強度に見合わない過剰摂取が原因です。この手の主張は話にならないです。
まとめ
グリホサートという残留農薬に関しては微量に存在する小麦製品もあるが、これは残留農薬が悪いのであって小麦が悪いのではないということ。
グリホサート及びグリホサート製剤の危険性については諸説あるが、心配ならばグリホサートベースの除草剤を使用していない小麦を選べばいい。
小麦摂取が小麦アレルギーの原因になる可能性はあるようです。
小麦アレルギー有病者は成人の1%未満。小麦アレルギー持ちが小麦を摂取してはならないのは当然ですが、小麦アレルギーではない成人の場合では小麦に過敏になりすぎている感じもします。
残留農薬の件も含め、それが自分だけならまだしも他人までに「小麦は危険だから食べてはいけない」などと啓発することはやりすぎだと感じました。
小麦製品は危険か?
グルテン過敏症が解明されていないので不安は多少残るが、それ以外ではアレルギーに気をつければ問題ないと感じました。
どうしてもグルテンが不安な人はグルテンフリーの小麦製品を選ぶ選択もあります。
ただし、グルテンフリーは小麦アレルゲンが含まれていないという意味ではありませんので小麦アレルギーの人は注意が必要です。