オイル交換時に最も気を使うのはドレンボルトを締める時。
この加減を誤るとオイルパンのネジ溝を破壊してしまい、いくら回してもドレンボルトが締まらず、オイルが漏れて最悪オイルパン交換となる。
そのためトルクレンチを使ってメーカー規定トルクで管理する。
しかしトルクレンチを使って規定トルクで締めたのにボルトを舐めてしまったというトラブルもある。
なぜトルクレンチを使ったのに舐めてしまうのか。
トルクレンチの使い方が間違っている
トルクレンチは持つ位置が決まっている
トルクレンチの取扱説明書を見れば書いてあると思いますが、トルクレンチは持つ位置が決まっています。
指定場所以外を持って回すとトルクがズレます。
下の赤い囲んだ部分の規定位置を持って回すのが正しい使い方です。中心に近い方を持つと設定より大きなトルクで締めたときにカチッとなりますので正しい位置を持って締めないと意味がありません。
また、ボルトにきちんと垂直に奥まで差し込んで、軸が斜めにならないように回すこと。
締め込む時、トルクレンチはゆっくり回せ!
ボルトやナットというのは外すときは一気に、締め込むときはゆっくりとが基本です。
素早く回すと滑って抵抗が落ち、滑る勢いで回りすぎてセットしたトルクより深く締め込むことがあります。締め込むときはゆっくり回しましょう。
また、ゆっくり回していかないと、カチッと鳴ったときにすぐに止めることが出来ません。速く回すと勢いでトルクオーバーしちゃうリスクが大きいです。
トルクレンチは設定トルクをお知らせするもので、設定値を超えても自分で止めなければ更に締め込んでいくことになります。
設定トルクを超えて回す続けようとすると空回りするセーフティ機能を持ったトルクレンチが存在するかどうかは知りませんが、トルクレンチの殆どはそのような機能はないです。
オススメのトルクレンチ
トルクレンチはAmazonでは3,000円ほどの中国ブランドのトルクレンチが大量に出品されていて、これらは工具専門のメーカーに作らせてそれぞれのブランドで販売しているようなので決してまがい物というわけでもなく、概ね正確なトルクを示すようです。校正証明書に関しては、本当にやったの???という、ただの印刷っぽいものが多いですがw。
ただ、聞いたこともないような販売者があまりに多く、信頼性の保証もないので、確実に決めたい人はやはり安心の国内メーカーであるKTCやTONEなどを選べば間違いないです。
ドレンボルトに最適な範囲10–50N・mのKTC製トルクレンチです。
ドレンボルトを社外品にした
マグネット式ドレンボルトなど社外品は魅力的なものがあります。また見た目もかっこいい。
社外品だから・・というわけではないですが、頭サイズが純正と同じでネジ山のピッチが同じで適合車種に自分の車種がちゃんと載っていたとしても、ネジ山数は純正と同じだとは限りません。
つまり首下サイズ(mm)もよく確認してください。(※ネジ山がある部分の長さで、マグネット部は長さに含めない。)
純正ドレンボルトのネジ山が9山で規定トルクが30Nmだとすると9つのねじ山に30Nmがかかることになります。
ここへ社外品のドレンボルトへ交換し、このドレンボルトのネジ山が純正より少ない6山だった。それを規定トルクの30Nmで締めた。そうすると6つのネジ山へ30Nmがかかることになり、ドレンパンのネジ山1つあたりの負担がメーカーの想定よりも大きくなります。
こうやってネジ山を破損してしまうのです。
また、似たような環境として、ドレンボルトを外したときにドレンパンに古いワッシャーが張り付いていたのに気づかず、ワッシャーを新たに取り付けて2重ワッシャーで締め込んだ場合。
これもボルト山がパン側の溝にかかる数が減って、このまま規定トルクで締めるとドレンパンのネジ溝を痛めてしまう原因となります。
ドレンボルトを外した時に古いワッシャーがなかった場合、ドレンパンにくっついていないか必ずチェックしてください。使い回しをして過度に変形したワッシャーやオーバートルクで締めていた場合はワッシャーがパンの穴に頑固に(素手では剥がれないほど)食い込んでくっついていることがあります。
そもそもドレン溝はオイルで滑る
ドレンボルトは車種ごとにメーカー規定トルクがあります。
これはネジ溝がオイルで汚れていない乾燥した状態の規定トルクのようで
ですが現実には
オイル交換時にオイルを出し切ってもオイルパンのネジ溝にはオイルが残っています。これをすべて取り除くことはオイルパンをバラさない限り厳しい。
たとえパーツクリーナーをネジ溝へ吹きかけたとしても(※クリーナー成分がパン内に入り込むので推奨しません)、オイルはいくらでもまたネジ溝へ流れてきます。エンドレスです。ドレン穴が横穴ならまだしも縦穴だと完全に無理。
つまりどんなに綺麗にしてもドレンのネジ溝にオイル膜が張った状態でドレンボルトを締めることになります。
この状態でトルクレンチを規定トルクに合わせてボルトを締めると締めすぎになります。だからといって規定トルクで100%舐めてしまうというわけではありませんがネジ溝には規定以上の力がかかることになり精神面で心臓に悪いです。
個人的にはドレンボルトは締め込み角度での管理が理想ではないかと考えています。ただこれもドレンワッシャーの種類(素材や形状)で適正角度は変わります。
舐めるのが怖い人は手ルクもあり
舐めるのが怖い人が手ルクなの?
え?逆じゃないの?と突っ込まれるかも知れません。
いやしっかりやれば手ルクのほうが舐めるリスクは少ないです。
トルクレンチで規定トルクに合わせて回していくと、徐々に重くなる感じがなく、どこまでも回り、いつ止まるのか不安になることがあります。ヌメッとした感触で回り続けると、トルクレンチの「カチ」が壊れていないのか不安となる。
トルクレンチが設定トルクに達しても「カチ」とならずに回し続け、ねじ切った人が実際いるので過信はできない。だから変だなと思ったら回すのを止め、一回別の固い規定トルクのボルトで弱いトルクでカチカチなるかどうか試すべきでしょう。
実際ドレンボルトは規定トルクより少しくらい弱くても緩むものではないです(※ただし保証はしません)。そこで手ルクでやや弱めに締めちゃおうという方法です。僕はほぼずっとこれです。
手ルクとは、トルクレンチを使わず、手で感覚的にトルク管理すること。
素手で回して締まらなくなったとこから、工具を使ってちょっとだけクッと回す。毎回ボルト位置をマーキングし、感覚的には10Nmほどで、アルミ平ワッシャーはほとんど潰れないレベルですが、こんなもんでオイル滲みも、ボルト緩みも一度もないです。
ユーチューブで手ルクで締めている人も回転角を見た感じではほとんどがアンダートルクです。個人的な意見では別にそれでいいと思います。
アルミ平ワッシャー(ガスケットやパッキンとも言う)の場合は、私は手でボルトを取り付けてソケットのみをはめて、そこを手で掴んで回らなくなるまで回す(ボルトを直接手で回すよりわずかに回って遊びが完全に消えるため)。そしてメガネレンチに持ち替えて、その位置からちょっとだけクイッと回す。
あまり浅いと今度はワッシャーが潰れません。ワッシャーはある程度潰れることで効果を発揮します。ただし、オイルドレンボルトの多くはネジ山だけでも十分な密閉性があり、実際はワッシャーはほとんど潰れなくてもオイルが滲むことはないです。
ですが、アルミ平ワッシャーではなく、例えばスズキ純正の立体型のワッシャーだと、手で回らなくなってから規定トルクまでかなり回転角があり、潰れかかってからいつまでもヌルヌル回るので手ルク管理は精神的に怖いです。
ドレンボルトは締めの甘さより締めすぎのほうが怖いです。ただ、プロの整備士が本締めを忘れて手締め(仮締め)のままでオイル交換を終わり、客がバイクに乗って帰宅中走行中にボルトが脱落し、オイル漏れが起こった事故(幸い転倒しなかった)はありますので、絶対に本締めは忘れないように。