アメリカで12月半ばから始まった新型コロナワクチン接種から半年が過ぎました。
新型コロナワクチンの開発から認証までの期間が短いことから長期的な悪影響(遅延的な副作用)を唱える人がいます。
この長期的な悪影響とは具体的にどういう影響が出るのでしょうか?熱が出る程度なのか?動けなくなるほど深刻な病気になるのか?あるいは命に関わるのか?その確率は?
長期的な悪影響の情報を調べます。
長期的なリスクのデマ
アイルランドの教授ドロレス ケイヒル氏は、コロナのmRNAワクチン接種で70歳以上は2–3年以内に、30代であれば5–10年以内に死ぬであろうと主張。
5年以内に死ぬとデマを流した人が日本でもいたが、この主張がソース元だったのでしょうか?
ケイヒル氏の主張の根拠となる出所をアネンバーグ公共政策センターのプロジェクトFactCheck.orgが彼女に問い合わせたが応じなかったということです。
ケイヒル氏はPCR検査でも根拠のない主張をしたことがロイター通信社に指摘されていました。ロイター通信社がケイヒル氏に問い合わせたが応じませんでした。彼女の主張したユーチューブ動画は現在アカウントが停止されています。
彼女の主張は出所が不明。しかし長期的悪影響は他の専門家でも懸念する声はある。
ヒトのDNAを変異させるのか
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、mRNAワクチンは新しいものだが、mRNAワクチンは何十年も研究されてきたもので未知ではないといい、安全性を強調しています。
つまり基本的な技術は確立しているので、応用は難しくないという感じでしょうか。
随分前からmRNAワクチンについてはヒトのDNAを変異させるなどの根拠のないデマが世界中で広まりました。
厚労省やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、mRNAは短期間で分解され、ヒトのDNAに組み込まれることはないと説明しています。
むしろワクチンではなくコロナに感染することで、逆転写されたSARS-CoV-2RNAがヒトのゲノムに組み込まれる可能性があるとする論文があります。以下ソース。
しかしこの論文は物議があるようです。遺伝子工学・バイオテクノロジーニュースの記事(下のリンク)で取り上げられています。
長期的な悪影響とは何が起こるのか?
長期的な悪影響と言いますが、具体的にどういった病状などが出るのでしょうか?やはりそこが一番気になるところ。
メディアも度々コロナワクチンの長期的影響が・・という記事を流しますが、具体的になにが起こるのかは書いてありません。
日本語と英語サイトを検索したが、調べても何も出てこない。つまり新しいワクチン故にどういう事が起こるかわからないということでしょうか。
免疫的な問題が起こるのか、循環器系疾患か、神経的なものか、その深刻度、死ぬことはあるのか、など、どういったリスクが予想されるのかは不明です。
長期的リスクの確率
長期的な副作用の不安が拭いきれいないをいう専門家は多くいます。これらのコメントはメディアが取り上げます。しかしそのリスクが何%くらいで懸念されるのかは書いてありません。
長期的な副作用が出る可能性があり、それが明らかになるまでは不安だ。と思う人は多い。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によるとワクチンの長期的な副作用の可能性は非常に稀だということです。
Vaccine monitoring has historically shown that side effects generally happen within six weeks of receiving a vaccine dose.
Source : Safety of COVID-19 Vaccines (CDC)
翻訳すると、
ワクチンのモニタリングによると、副作用は通常、ワクチンの投与を受けてから6週間以内に発生することが歴史的に示されています。
ということ。根拠はワクチンの歴史の統計のようです。
数年レベルでの長期影響を心配する病院の医師のコメントはネットで多く見ることが出来ます。
CDCによると長期的と言っても過去の歴史をたどっても6週間以内の発生が多い。つまり数年後に発生する可能性は確率的に極めて低いことをCDCは語っています。
その他たくさん調べましたが、mRNAワクチンは接種後短期間で体から消えて、残るのは免疫反応だけなので長期的なリスクは殆どないというのが多くの専門家共通の意見のようです。
それはmRNAワクチンであるファイザーやモデルナの保管温度が極めて低いことから常温では長い間保持できず壊れやすものであることは想像できそうです。
新しいリスクの可能性
新しい情報ではCDCのサイトではアメリカの若い世代でファイザー、モデナワクチン接種後数日以内に心筋炎および心膜炎の報告が増えているとのレポートが追加されています(2021年6月11日閲覧時点)。
ただ発生率は稀で、因果関係は調査中。ワクチン接種は引き続き行うとのこと。以下ソース。
心筋炎といっても深刻なレベルではなく、多くは回復しているとのこと。こういった現象がこれからその他出てくるかどうかはわかりません。
どれくらいの頻度で発生しているのかというと、アメリカ食品医薬品局(FDA)の資料によると5月31日までのデータではアメリカでは12–15歳が100万回あたり22.4件。16–17歳が100万回あたり35.0件。18–24歳が100万回あたり20.6件。65歳以上は100万回あたり0.9件と少ない。
傾向としては女性より男性が圧倒的に多い。
日本では厚労省によれば5月30日までの1,306万回接種で8件(全年齢)なので100万回あたり0.6件。ただ日本では10代の接種はすすんでいないのでこれからどうなるかわかりません。
米国医師会が発行した医学雑誌(JAMA Cardiology)に興味深いコホート研究が掲載されています。それによるとアメリカのSARS-CoV-2感染症の大学アスリート1,597人の2.3%に当たる37人が心筋炎と診断。
若いコロナ感染者の2.3%に心筋炎が確認されたとなると、ワクチン接種後の心筋炎の割合をはるかに上回っています。これを見るとコロナに感染するほうがよっぽど心筋炎のリスクが高いように思えます。
ただ、対象がアスリートということで、普段から心臓への負担もあり、非アスリートも同様になるとは限りません。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は12歳以上のすべての人にワクチン接種を引き続き推奨していて、CDCの統計によればアメリカは2021年6月9日時点で12ー15歳の23.4%が16ー17歳の38.6%が少なくとも1回の接種を終えてます。
大切なのはリスク&ベネフィット
多くの人は有害なリスクについては確率ではなく、「ゼロかイチ的な思考」「あるかないか」で捉えがちだと思います。
可能性がわずかでも疑われた場合、そういう情報を見ただけで不安になる心理。全体的な視点から見た確率ではなく、どうしても個人個人のレアな不幸な事象が強くインパクトに残る傾向はあります。
ワクチンにはリスク&ベネフィット(危険と恩恵)があります。
最近はコロナ慣れも増えてきたせいか、コロナの恐怖感は薄れ気味になっている人も多い。この1年半の間にコロナにかかっていないのでもう永遠に無縁ではないかという錯覚にもなります。
そこに来たワクチン副反応疑いがある有害事象のニュース。
ここで「ワクチンは怖い」というイメージが「コロナが怖い」というイメージを超えました。
確率よりも心理的なショックのほうが影響。
心理的インパクトを振り払い、冷静に全体を見てリスクの少ない判断をすることが理想です。
ただ、リスクの少ない選択がベストですが、物事は確率通りへ進むとは限りません。人生はその時になるまでわかりません。
ワクチンを打って重篤な影響が出た。
↓
ワクチンを打たなければよかった。
ワクチンを打たずにコロナで重篤な症状になった。
↓
ワクチンを打てばよかった。
現在の累計の新型コロナ感染者数(確認されたもの)は日本人の0.6%。もしも、実際の感染者はこの10倍いたとすれば人口の6%。さらに各年齢層ごとで重症化率や死亡率が異なる。
厚労省の発表した感染者数と死亡者数からざっと計算すると、例えば30代がコロナに感染して死亡する確率は全期間含めて70万分の1程度。80歳以上だと1700分の1(2021年5月2日時点)。ただしパンデミックが長引くほど、そのうち感染する確率は増える。
厚労省のデータからざっと計算するとワクチン副反応疑いの死亡率(全年齢)は9.4万分の1程度。これは高齢者が多い。
アナフィラキシーショックの発生率は7-8万分の1。年齢に傾向はなく、女性に多い。殆どは軽快する。
これと天秤にかけて接種をするかしないか自分でじっくり考えてみるのがいいのではないでしょうか。
自分がコロナになるかならないか(生活環境など考えて)、なった場合の重篤化リスク(年齢や健康状態)、あるいは家族への感染(高齢の家族にうつさないか)。これらとワクチン副反応、長期的な有害事象のリスク。
10代へのコロナ重篤化および死亡例は日本国内ではゼロであり、ワクチン接種のメリットは一見ないかのように思えます。
ただ、CDCではアメリカで子どもたちにワクチン接種を推奨しています。理由に、子供や家族、また他人へ広めるのを防ぐためと説明。
ワクチンの感染予防効果は不明とされてきましたが、6月7日にCDCはmRNAワクチンを必要回数分接種して免疫が付けば感染リスクが91%減少させることを示したと発表しています。
また、イギリスの保健省はファイザー、アストラゼナカワクチン接種で感染予防効果が38-49%あったと4月28日に公表。
厚労省ではファイザー社のワクチンについて、現時点では感染予防効果は十分には明らかになっていませんとウェブサイトで説明(2021年6月18日閲覧時の情報)。
まとめ
記事タイトルの長期的な副作用が何か?というのは未知だけに不明。あるかもしれないしないかもしれない。ただし確率的には極めて低い。
もしそれが出た場合、深刻なレベルで現れるのか、再起不能脳なくらい重症化するのか、最悪死んだりするのかという肝心な部分がみえないと不安になってしまうが、それはわからない。しかしおそらく起こらない。
まとめます。
- 長期的な悪影響の具体的な症状は分からない。
- 長期的な悪影響が出ることは稀と考えられる。
- それらの多くは6週間以内に発生。
nRNAはヒト遺伝子を組み替えるか→科学的根拠はない。
アメリカで大規模にワクチン接種が始まって約半年。有害事象はほぼ出尽くしたと思われるが、この先に新たな問題が出る可能性はゼロとは言えないが、その確率は極めて低い。
短期的なものも含め、ワクチン接種は確率的に言うと深刻な有害事象となる確率は極めて低く、多くの人が心配しているようなレベルではない感じです。
ワクチンは危険?コロナは危険?どっちが危険?
つまりワクチン接種によるリスク – ベネフィット(危険と恩恵)のどちらが優勢かよく考えて選択していく必要がありそうです。
ただ、ワクチンで将来ほぼ起こらない長期リスクを心配するくらいなら、タバコ、過度な飲酒、偏った食事内容など生活習慣の長期リスクを心配したほうがいいと思います。