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車を締め出してでも公共交通優先を徹底するスイスの都市チューリッヒ

脱炭素、渋滞問題、公共交通機関を充実させることはこれらを解決するのに都合がいい。

マイカー優先国日本も最近は路面電車や電気バスは注目されています。公共交通機関の重要性は理解されるようになりました。しかしマイカーの利便性も確保したいようで、マイカーを排除しようとする動きはなく、公共交通とマイカーの交通を両立した都市計画は譲らないようです。

マイカー渋滞を解消するために道路を広げる、駐車場を増やす。車が便利になると更にマイカー利用者が増え渋滞。そしてまた道路拡張。終わりのない戦いです。

道路と駐車場にどれだけの国土を使っているのか。ただでさえ狭い国土なのにこれで有効活用できているのか。

対象的にスイスの公共交通の環境は素晴らしく、特にチューリッヒは公共交通について抜きん出たものがあります。マイカーを規制して公共交通機関を優先しているチューリッヒ。このチューリッヒがどれだけすごいのか、この記事で紹介します。

日本の公共交通は利便性が悪い

日本でも電車はあるしバスもタクシーもある。

しかしマイカーを優先するあまり鉄道は地下へ潜る。あるいは高架となる。地下鉄になった分、車がのびのびと走れる。車道と線路の交差が高架で解決する。

しかしデメリットも有る。それが利便性。地下鉄になっても高架となっても、列車のホームが遠ざかってしまうのだ。利用者は駅の入り口から車両に乗り込むまで長い距離を歩かされることとなる。しかも大きな駅は迷路となっており、どこへ改札口があるのかさえわからない場合もある。

ところがチューリッヒは地下鉄も高架線路もない(線路同士で上下交差する部分を除く)。チューリッヒ中央駅に入ればすぐに列車が見える。駅で迷うことがない。改札口もない。列車へポン乗りだ。特急料金もない。

日本でも路面電車はある。しかし料金を払う方法は乗車時や降車時だったり実に非効率。乗車口と降車口が指定されていてどこからでも乗り降りできない。スイスの場合は乗る前に駅や券売機などで切符を購入する方式。乗り降りはどのドアからでもOK。だからポンと乗ってポンと降りれる。

さらに日本は公共交通であるバスがまともに走れていない。バス停に駐停車する車、バスの発進を妨害する車。第一走行帯に駐停車する大量の車やトラック。片側3車線あっても実質2車線ということはよくある。

バスは乗用車にとって邪魔者扱いされる。しかしよく考えてほしい。邪魔なのはバスではなく、たった一人が乗るために道路を5x2mも占有しているマイカーなのだと。 

チューリッヒの公共交通

日本からスイスへ飛び、チューリッヒ・クローテン空港から電車に乗り、15分ほどでチューリッヒ中央駅へ到着する。駅から外へ出ると、路面電車、トロリーバスが休むことなく右から左へ、左から右へと走っています。

トラム(路面電車)

チューリッヒは右から左まで見渡す限りそこらじゅうをトラムが走っています。本当にトラムが多い。トラムにはいくつか種類があります。Tram2000、Cobra、Flexityという順番で新しい。

最新型のFlexityは7両編成で長さ43m、幅2.4m、座席数90+立ち乗客186人を運ぶことが出来、狭いカーブを曲がりやすいように短い車両が使われています。

トラム(路面電車)は日本のような後払い方式ではありません。日本のように乗車専用・降車専用というドアはありません。そのためどのドアからでも乗り降り可能です。事前に駅の券売機で切符を購入し、日時の刻印をしてから乗車します。ポンと乗ってポンと降りる便利さがあります。

料金はゾーン制でわかりやすい。有効場所と有効時間内なら途中乗り降りは自由。

トロリーバス

チューリッヒは連節のトロリーバスが走っています。脱炭素と言われる近年ですが、トロリーバスは電気で走るため排ガスが出ません。電線から給電するためにEV車のようにバッテリー切れもありません。

2030年までにチューリッヒは電気バスの100%化を目指しています。

トロリーバスは渋滞しやすい市街地では不向きと言われますが、チューリッヒは渋滞させないための徹底した交通制御が行われています(次の項目で説明)。電線がある第一走行帯に駐車する車・タクシー・トラックは一台もありません。

トロリーバスは一般的なディーゼルのバスに比べ、加速が速いです。

乗車口・降車口は決まっていません。どのドアからも乗り降りできます。料金は前もって停留所の券売機で切符を購入しておきます。料金はわかりやすいゾーン制で有効範囲と時間内ならば途中駅乗り降り自由です。もちろん1日券もあります。

チューリヒは車より公共交通機関が便利です。車には多くの制限があるからです。

チューリヒ市内では多くが制限速度30km/hとなっています。これにより騒音問題の緩和、歩行者と自転車の安全性が増します。

チューリッヒでは公共交通を優先とするため交通信号制御が行われ、自動車よりもトラムやバスなど公共交通機関がスムーズに走れるようにされています。

チューリッヒはスイスの中でも大きな都市であるが、車の渋滞を見ることはありません。チューリッヒは渋滞しません。

チューリッヒ市内の車の量が増えると信号を制御し、市内への車の流入を調整します。よってチューリッヒ市内に車が多いと、市外からチューリヒへ入ろうとする車はチューリッヒの外の道路で渋滞して待つことになります。交通量の把握は市内の路面に埋められた4500箇所のセンサーです。

写真はイメージです

さらにチューリッヒは第一走行帯に駐車する一般車やタクシー、トラックが一台もいない。そもそも第一走行帯は路面電車やトロリーバスの軌道となっている場合が多く、物理的に駐車は出来ません。

では物流はどうしているか、商店へ荷物を運ぶトラックは??

歩道上に[ ]とオレンジでマーキングされた駐車場所が設けられています。歩道はかなり広くとってあり、歩道上にタクシー停留所や駐輪場も設置されています。日本でも近年は歩道が広めにとってあり、街路樹と街路樹の間が無駄な空間となっているが、それを有効活用した形です。

スイスでは交通違反は厳しく取り締まられます。主要交差点には監視カメラがあり、信号無視も停止線オーバーも捕まります。信号機のない横断歩道の歩行者優先も絶対です。

さらにチューリッヒは駐車場をあまり作ろうとしません。地下に駐車場はありますが、大型スーパーCOOPの駐車場でさえ地上には22台分ほどしかありません。

自転車

もちろん自転車は車道を走ります。トラムと同じ軌道も自転車が走ります。トラムのレール溝にタイヤがはまらないように注意する必要があります。

ただ、第一走行帯に駐停車する車が一台もないので、自転車は駐停車した車を回避するための進路変更をすることなく定位置のまま走ることが出来ます。

駐輪場は歩道上に多く設けられています。

歩行者

歩道や横断歩道が多く歩行者は不自由なく歩けます。ただしすぐ脇(第一走行帯)をトラムが通りますので好き勝手な道路の横断は注意。過去に結構接触事故はあったらしいです。横断歩道から渡ること。

信号機のない横断歩道が市内あらゆるところにありますが、車は確実に止まってくれます。脇道から出てくる車は一時停止します。歩道を遮って停止する車はいません。安心して歩道を歩けます。

リンマートクヴァイの通りにも信号機のない横断歩道がありますが、ここで歩行者が渡ろうとする時にトラムが止まったのを見たことがあります。

日本はチューリッヒになれるのか

チューリッヒは公共交通機関の網が充実しているだけではなく、すぐに乗ってすぐに降りられ手軽に利用できる。そのためには地下鉄より路面電車やトロリーバスであり、後払い方式の廃止、どのドアからでも乗り降り可能にすること、途中駅で乗り降り自由という変更がほしい。

マイカーはエネルギーを無駄に使い、渋滞を生み出し、環境にも悪い。道路や駐車場がいくらあっても足りない。通勤時間帯はたった一人しか乗っていないマイカーが大渋滞する始末。

マイカー移動を潤滑にするために道路など拡張してもきりがないのが現状。

終わりが見えないマイカーのための道路拡張をやめることが日本にできるのか。マイカーを制限し、公共交通機関のために移動手段を充実させることができるのか。

おそらくはマイカーと公共交通機関を両立させる考えは変えないでしょう。しかし大量のマイカーを捌くのは非効率的。マイカーより公共交通を優先させ、マイカーから公共交通へシフトさせることが大切だと考えます。

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