
道路の中央線について、ネット上にこういう情報が広まって定着しきっています。
センターラインの意味
- 白実線の中央線=はみ出し禁止。追い越しはOK。
- 白の破線の中央線=はみ出しOK。
- 黄色の実線の中央線=追い越しのためのはみ出し禁止。
この認識は多くの問題があります。
また、
- 白の実線があれば片側幅員6m以上。
- 白の破線があれば片側幅員6m未満。
これは1に関しては一概には言えない部分があります。
ツイッターでは「それぞれの意味をよく分かってない人多すぎ」などと言葉を自信満々に添えながらも、実際は間違った解釈でツイートしている人が目立ちます。
ではこれらを法的根拠をもとにどう間違っているのか記事にしていきます。
勘違いが勘違いを広げ、末端部ほど情報がずれていく
白の実線や破線の中央線について、道路交通法や標識令などではなく、JAFや車情報法人サイトを見て、間違った解釈をしてしまった人が多いようです。紹介するページは下に行くほどずれていきます。
教本は至って問題はなし。あまり深く掘り下げずに簡単な説明のみです。
「道路の右側部分へのはみ出し追越し禁止」で、左側部分の幅が6m以上のときにははみ出して追い越しできない。6m以上では中央線が白の実線となると紹介。
「左側通行」を勉強するところでは、はみ出し禁止の例外として「一方通行のとき」「左側幅員6m未満で追い越すとき」「工事で幅がないとき」など、道路交通法第17条第5項の例外を紹介。
「標識・標示の種類と意味」のところでは指示標示として中央線を紹介。標識令と同じ表現(※法令は長くなるので次の見出しで説明します)。
JAFのページはすでに間違っています。そもそも線の種類関係なくはみ出しは原則禁止で、追い越したり駐車車両を避けるときの例外は、線の種類は関係ないのに、勝手な解釈がされている。
JAFは白色のセンターラインが2つあると説明。
白色の破線について、追い越したり駐車車両を避ける際にははみ出すことができる。白色の実線は原則としてはみ出しての通行はできない。白色の破線は道路幅が片側6m未満の道路、実線は片側6m以上ある道路に設けられる、と説明。
車情報系サイトは、法令をソースに出しながらもしっかりと理解していないため主観的な解釈となっています。道路は原則中央線からはみ出し禁止であり、白の破線がはみ出し走行可とかどの条文にも書いてありません。
車情報系サイトに多い書き方をいくつか上げます。
- 白の実線ははみ出して走行禁止。
- 白の破線ははみ出して走行可能。
- 白実線ははみ出さなければ追い越しできる。
- 片側幅員6m未満が白の破線。
- 片側幅員6m以上が白の実線。
- 中央線は区画線のことだ。
- 白の実線が一番厳しい。
SNSでの個人ツイートは、はみ出しそのものと、追い越しのためのはみ出しがごっちゃになった人が多いです。それをぐちゃぐちゃにした解釈。
SNSでよくある声は
- 白の実線=はみ出し禁止だがはみ出さなければ追い越せる。白の破線=はみ出しOK。黄色の実線=追い越しのためのはみ出し禁止。
- 規制の強さは、白実線>黄色実線>白破線である。
この手の間違った解釈は「白の実線と黄色の実線は両方とも追い越しのためのはみ出しが禁止だが何が違うんだ?」となります。白の実線は指示標示で規制力なんてありませんし、そもそも線の種類関係なく道路は原則中央線からのはみ出しは禁止です。
白実線が一番規制が強いなどという考えは違います。黄色の実線は規制力があるが、白の中央線に規制力はない。
黄色実線(規制標示)が道路両側を対称とし中央線を兼ねた場合、道路交通法第17条第4項による中央線はみ出し禁止に加え、追い越しのためのはみ出し禁止が追加されるわけで、左側幅員6m未満でも追い越しのためにはみ出すことが出来ず、厳しくなります。
ではここから先は法令の定義の解説に移ります。
中央線(205)とは
道路標示の一つである、中央線(205)とは道路の中央を示す標示。これは実線と破線があります。
中央線(205)
出典:道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第五(第九条関係)
表示する意味
道路の中央であること又は交通法第十七条第四項の道路標示による中央線であること。
交通法第十七条第四項とは、道路交通法の通行区分に関しての条項で、左側通行を書いたもの。
車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
出典:道路交通法第17条第4項
つまり中央線(205)の意味は、「道路の中央であること、又は左側通行するときの中央線である。」ということ。
中央線(205)が意味するものはこれだけ。それ以上意味するものは有りません。
ただの指示標示です。
白実線の中央線が設置される道路
公安委員会の中央線
「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(標識令)」にある中央線(指示標示205)が一本の白の実線として設置される条件は
- 道路の右側部分にはみ出して通行してはならないことを特に示す必要がある道路に設置する場合
- 道路の中央以外の部分を道路の中央として指定する場合(常時指定するとき)
以下ソースです。
中央線(205)
一 道路の右側部分にはみ出して通行してはならないことを特に示す必要がある道路に設置する場合(省略)
三 道路の中央以外の部分を道路の中央として指定する場合
(一) 常時指定するとき(省略)
出典:道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第六(第十条関係)白の実線の図の説明欄のみ引用
道路管理者の車道中央線
さらに中央線には道路管理者が設置した区画線である車道中央線(区画線101)があります。車道中央線とは車道の幅員5.5m以上の車道の中央。
車道中央線(101)
出典:道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第三(第五条関係)
車道(軌道敷である部分を除く。以下この表及び別表第四において同じ。)の幅員が五・五メートル以上の区間内の中央を示す必要がある車道の中央
標識令の別表第四(第六条関係)にある、が白の実線となる条件は
- 4車線以上の車道に設置するとき
車道中央線(101)
出典:道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第四(第六条関係)白の実線の図の説明欄のみ引用
四車線以上の車道に設置するとき
でもってこの区画線は中央線(205)とみなされる。
道路管理者が設置した区画線「車道中央線(101)」は、道路標示「中央線(205)」とみなさ
出典:交通規制基準p83|警察庁、及び道路標識、区画線及び道路標示に関する命令第7条
れる。
線の種類に関係なく、道路は原則、はみ出し禁止
ネットでは「白の実線だとはみ出し禁止で、白の破線だとはみ出しOK、黄色の実線は追い越しのためのはみ出し禁止」という図式が勝手に作られていますが、
そもそも原則、車両は中央線の左側を走らなければならないわけですよ。黄色線や白実線や白破線なんて関係ない。根拠は道路交通法第17条第4項。
車両は、道路(歩道等と車道の区別のある道路においては、車道。以下第九節の二までにおいて同じ。)の中央(軌道が道路の側端に寄つて設けられている場合においては当該道路の軌道敷を除いた部分の中央とし、道路標識等による中央線が設けられているときはその中央線の設けられた道路の部分を中央とする。以下同じ。)から左の部分(以下「左側部分」という。)を通行しなければならない。
出典:道路交通法第17条第4項 ※赤文字、赤線は当サイトでつけたもの。
で、はみ出しができる例外が存在します。これが道路交通法第17条第5項の1号から5号まで。
車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、道路の中央から右の部分(以下「右側部分」という。)にその全部又は一部をはみ出して通行することができる。この場合において、車両は、第一号に掲げる場合を除き、そのはみ出し方ができるだけ少なくなるようにしなければならない。
出典:道路交通法第17条第5項
一 当該道路が一方通行(道路における車両の通行につき一定の方向にする通行が禁止されていることをいう。以下同じ。)となつているとき。
二 当該道路の左側部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。
三 当該車両が道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないとき。
四 当該道路の左側部分の幅員が六メートルに満たない道路において、他の車両を追い越そうとするとき(当該道路の右側部分を見とおすことができ、かつ、反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合に限るものとし、道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合を除く。)。
五 勾こう配の急な道路のまがりかど附近について、道路標識等により通行の方法が指定されている場合において、当該車両が当該指定に従い通行するとき。
この道路交通法第17条第5項は中央線の種類では定義を分けていません。
そもそも道路は左右の幅員が同じとは限りません。白実線が片側幅員6m以上の道路に設けられていて、もう片側は1車線しかなく幅員3m程度しかない場合、道路の中央以外の部分を道路の中央として指定しているため、道路の中央線は白の実線です。
道路交通法第17条第5項4号は「左側部分の幅員が6m未満だと、追い越しのためにはみ出せる」であり、上のストリートビューでは白実線であるが、中央線である白実線(指示標示205)に規制力はないため、左側幅員6m未満の進行方向からは追い越しのためにはみ出ることが出来ます。つまり白の実線、破線だからできるできないの認識はあまり役に立ちません。
道路交通法第17条第5項4号の、「道路標識等により追越しのため右側部分にはみ出して通行することが禁止されている場合」というのは、白実線(指示標示205)のことではなく、規制標識314と規制標示102のことです。これは規制力があるものです。左側幅員が6メートル未満で必要な場所に設けられます。

また、左側幅員6m未満で追い越し目的ならはみ出せるというのは例外で認められたうちの一つでしかなく、片側幅員6m以上であっても、道路の損壊、道路工事その他の障害で左側部分を通行することができないときははみ出すことが出来ます(この場合6m未満という条件はない)。
6m未満でも法第30条の法定追い越し禁止場所では白実線であることもあり、(特定原付と軽車両を除き)追い越しできません。
はみ出して通行してはならないことを特に示す必要がある道路
標識令にある「はみ出して通行してはならないことを特に示す必要がある道路」とはなにか。
これを左側幅員6m以上の道路のことと思っている人が殆どで、それはそれであっているのですが、それだけではありません。
交通規制基準には「舗装された部分の片側の幅員が6メートル以上の道路に設置する場合又は法定追越し禁止場所に設置する場合においては、中央線は実線により表示するものとする。」とあります。
表示の方法は、次によるものとする。
出典:交通規制基準 第10中央線 設置方法|警察庁 下線は当サイトで引いたもの。
(1) 実線
ア 舗装された部分の片側の幅員が6メートル以上の道路に設置する場合又は法定追越し
禁止場所に設置する場合においては、中央線は実線により表示するものとする。
これは、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の条件である「道路の右側部分にはみ出して通行してはならないことを特に示す必要がある道路に設置する場合」とは何も矛盾していません。
なぜなら道路は基本、中央線をはみ出してはならないからです。これを「特に示す必要がある」つまりはみ出すと特に危ないという道路に設置します。それが上の2つの道路というわけです。
法定追越し禁止場所というのは道路交通法30条のこと。
車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
出典:道路交通法第30条(追越しを禁止する場所)
一 道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近又は勾配の急な下り坂
二 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
三 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
さらに幅員が5.5m以上で6.5m未満という条件があります。
2 道路の舗装された部分の幅員が、5.5メートル以上6.5メートル未満の場合で、次のいずれ
出典:交通規制基準 第10中央線 対象道路|警察庁
かに該当する道路
(1) 日交通量がおおむね平均1,000台以上の道路
(2) 道路の中央を越えて運転することに起因する交通事故が著しく発生している道路
(3) 法定の追越し禁止場所(法第30条各号に掲げる場所)で、特に必要な道路
※上は対象道路が3つありますが、この中で実線が設けられるのは法定追い越し禁止場所の1つだけで他の2つは破線です。
「道路幅員が5.5m以上6.5m未満の場合で、法定の追越し禁止場所(法第30条各号に掲げる場所)で、特に必要な道路」に白実線(中央線)が設けられます。つまり道路が狭いために、禁止された追い越し行為は、はみ出しを伴う恐れがあり特に危険です。
これは道路幅員であって片側幅員とは違うことに注意。また、この幅員は歩道や軌道敷を含まない。路側帯がある場合は路側帯を示す道路標示の中心から内側。
1 道路(歩道等と車道の区分のある道路においては車道、軌道が道路の側端に寄って設けら
出典:交通規制基準 p83|警察庁
れている場合は軌道敷を除いた部分)の舗装された部分の幅員(道路に路側帯が設けられて
いる場合の幅員は、路側帯を表示する標示の中心(駐停車禁止路側帯及び歩行者用路側帯に
あっては車道寄りの実線の中心)から内側の幅員とする。以下この項において同じ。)が、
6.5メートル以上の道路
例を挙げると、車両通行帯のないトンネル(下のストリートビューは高速道ではなく一般道の対面通行です)。片側6m以上なんてありません。でも白の実線です。
踏切手前30m。(※白実線ですが、踏切を過ぎてしまえば追い越し禁止ではなく、白実線をはみ出すことが出来ます。)
横断歩道手前30m。(※白実線ですが、横断歩道を過ぎてしまえば追い越し禁止ではなく、白実線をはみ出すことが出来ます。)

勾配の急な下り坂。ここは上り坂の頂上付近でもあります。
これらはすべて片側幅員6m未満です。「白の実線=片側6m以上だ!」というわけではないということです。
黄色実線真横に白の破線について

黄色の実線(規制標示102)は「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」という規制力があるものです。この黄色の実線が道路両側を対象としている場合は中央線を兼ねます。
道路の両側に追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の道路標示は、中央線を表示する道路標示を兼ねる。
出典:交通規制基準p83|警察庁
原則、中央線(センターライン)は白の実線または破線です。この白の実線または破線がある場合はそれが中央線であり、黄色の実線が真横にある場合は、黄色線は中央線ではありません。黄色線がある側は規制がかかり、進行方向左側の幅員が6m未満でも追い越しのための中央線はみ出しができません。
まとめます(と言ってもちょっと長いが)
中央線(205)は指示標示であり、道路の中央を示しているだけで、この線に規制力はありません。
「白実線=はみ出し禁止だが、はみ出さずに追い越すのはOK」とか間違ったツイートなどは多く見ます。
左側幅員6m未満であろうが道路交通法30条の追い越し禁止場所では中央線が白実線のことがあり、この場合追い越すことは(はみ出さなくても)違反となるので注意。
例外を除き、原則として白の実線だろうが白の破線だろうが、中央線をはみ出しての通行は出来ません。
例外として左側幅員6m未満であれば追い越しのためのはみ出しが認められます。また左側幅員が6m以上でも、道路の損壊、道路工事その他の障害で左側部分を通行することができない場合が中央をはみ出すことが出来ます。
片側幅員6m未満であっても法定追い越し禁止場所では白の実線が設けられていることがあります。中央線の白実線に規制力はなく、その道路におけるルールに従います。
線の種類に関係なく道路の中央線は基本はみだしは禁止です。
白の実線だから、破線だから・・・それだけでその道路のルールを判断することは出来ません。やはり道路のルール全体を把握していることが大前提です。
道路交通法第17条第5項にあるように、工事などで通れない場合ははみ出せるし一概に言えない。また、白の実線でも左側幅員6m未満の場合は追い越しのためにはみ出せます(法定追い越し禁止場所除く)。そもそも道路交通法第17条第5項は実線や破線は関係ない。また白の実線(指示標示)に規制力はない。
道路交通法第17条第5項の例外を除き、中央線から右側へはみ出すことは出来ません。また白の破線(指示標示)に規制力はない。
横断歩道手前30mなど、法定追い越し禁止場所では片側幅員6m未満で白の実線であることが多くあります。
これはあっています。白の破線が中央線だと片側6m未満です。ただしこの場合でも中央線は道路交通法第17条第5項の例外を除き、原則はみ出し禁止であるということ。