食品添加物、食中毒、タバコ、酒、暴飲暴食・・・生活の習慣のなかで様々な健康リスクがありますが、どれが一番影響しているのか、どれがどれほど影響しているのか。
例えばPM2.5をやたら気にする人がタバコは平気で吸っていたり、発がん性を気にして食品添加物を避ける人がタバコや酒を摂取していると矛盾を感じます。
あれは毒~ これは毒~
添加物が~ 残留農薬が~
一切食べるな!危険!
のようなタイトルの書籍などはよく目にします。これらの言葉が消費者に不安を与えている影響は大きいと思います。しかし本当に気をつけるべきことを忘れていませんか?
食品に係るリスク認識アンケート調査(内閣府)
内閣府食品安全委員会事務局が行った「食品に係るリスク認識アンケート調査」というものがあります。
これはかなり興味深いアンケートです。
一般消費者と食品安全の専門家との認識の違いがものすごいです。
健康への影響に気を付けるべきと考える項目の順位
健康への影響に気を付けるべきと考える項目の順位(中央値)グラフ
病原性微生物、いわゆる食中毒などですが、これは認識が一致しています。しかし残留農薬や食品添加物は消費者と専門家で認識が大きく異なっています。
一般消費者は残留農薬や食品添加物をかなり強く意識しています。しかし専門家はタバコ、そして偏食や過食を気をつけるべきという認識です。
消費者ではそのタバコがランキングに入っていないのは喫煙率が低いせいもあるかも知れません。しかし偏食や飲酒という食生活習慣の認識は薄いようです。
残留農薬や食品添加物に知識のない消費者が、残留農薬や食品添加物に気をつけるべきと感じ、有識者である専門家はほとんどリスクを感じていない。
ガンの原因になると考える項目
ガンの原因になると考えるものとして1–5位と回答した人の割合のグラフ
1位はタバコで共通の認識。しかし専門家の方が割合が多い。
食品添加物や残留農薬に関しては大きな意識の違いがあります。加齢や飲酒、偏食や過食の影響は消費者より専門家の方が大きいと見ています。
つまり知識のない消費者が食品添加物の影響を強く見ている。その割には飲酒及び偏食や過食についてはやや軽視される。
消費者は後者の毒性を低いと思っているのでしょうか。それとも、わかっていてもやめられない感じなのでしょうか。健康診断で引っかかってから気をつければ間に合うと思っている感じでしょうか・・・。
しかし飲酒及び偏食や過食が原因で健康を害する人は極めて多いのが現状。
飲酒についても添加物や残留農薬がなければ毒ではないと思っているのかも知れないが、アルコール飲料には発がん性があります(IARCでグループ1に分類)。
不安、イメージ>現実的なリスク
消費者にとっては信頼性のある数値や科学的データなどの証拠よりも、不安やイメージが勝っている感じです。それは食品においての陰謀説やオカルト的な情報の刷り込みも影響します。
例えば子供が心霊特集を見たあとに怖がっているのと同じです。心のなかでどれくらいショックを受けたかが大きく影響します。これは科学的な確率やリスク、現実性を上回る影響があります。
「テレビなどの特集」
「~は毒!一切食べるな危険!といったような過激なタイトルの週刊誌や本」
「再現性さえもわからないたった一つの新しい研究ソースを片手に、ネットで必死に危険だ危険だと書き込んで拡散している人」
これらが消費者に過度に不安を与えているのかもしれません。
消費者はもっと全体を見るべき
合成農薬を取り扱う機関などでは合成農薬の安全性を訴え、無農薬栽培をする農家では合成農薬を否定し、合成農薬を使わないことの安全性を訴えます。ウェブサイトを見る限りでは意見が互いに対立している感じで、自分たちに都合の良い解釈と理論ばかり並べている感じには見えます。
ただし合成農薬は、専門家が膨大なデータベースを元に検証し、専門機関で厳格に管理しているものであり、素人が付け焼き刃の知識でああだこうだと語っているものではありません。
生化学者のブルース・エイムス氏が2000年にMutation Researchで発表した論文によれば、
合成化学物質(合成農薬)によるがんのリスクはごく僅かであり、食物には天然化学物質(つまり天然農薬)が合成農薬よりもはるかに大量に含まれる。人間が摂取する化学物質(天然農薬)の99.9%は自然のものである・・・長いので略。
つまり発がんに影響するのはほとんどが天然農薬。この99.9%の天然農薬を残したまま、0.1%しか占めない合成農薬を減らすために無農薬を必死で選んでいるのが消費者なのです。
食品に関する5省庁(消費者庁、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省)によるリスクコミュニケーションのリンクを貼っておきます。
一般消費者がいかにテレビやネットの恐怖を煽る情報(報道やドキュメンタリー番組など)に踊らされているかがわかります。
食品添加物や農薬、その他有害と思われる物質などがいかに怖いかというドキュメンタリーを見たあとは不安が増大します。
しかし現実はどうか。
毎年、貝毒やフグ毒、そして病原菌や寄生虫などによる食中毒の患者が多数出ています。その他の自然毒でも体を壊し病院で治療を受ける事故は多い。
じゃがいものソラニン中毒にしろ、厚生労働省によれば、市販のジャガイモによる中毒より、学校菜園、家庭菜園で収穫したものによる中毒事故が多いということです。
また加工時における有害物質としてアクリルアミドがあります。
例えばポテトチップスを食べて、アクリルアミド(IARC分類でおそらく発がん性がある)の影響が出るよりはるかにずっと前に、ポテチの食べすぎによる生活習慣病(循環器系疾患)などが出て死んでしまうほうが早いでしょう。
お菓子やパン、ケーキなどに含まれるトランス脂肪酸(※マーガリンについては最近のものはは殆ど含まれない)にしろ、これらを食べてトランス脂肪酸の影響が出るよりはるか前に、生活習慣病で健康を害します。
これらを気にする前に偏食や過食を気にするほうがはるかに健康への近道です。
PM2.5にしろ、外出時にマスクでPM2.5予防をしている人が、自宅でタバコを吸う(タバコの煙はPM2.5の塊)など矛盾する行為をする人もいます。
結局全体としての知識が薄いためこうなります。
この記事で言いたいこと
皆が不安に思っている食品添加物や残留農薬などですが、健康に及ぼす影響はほぼゼロか、あっても微々たるものです。これらは厳しい基準があるからです。
それよりもまずはタバコや食事内容・習慣の見直しが健康への近道です。乱れた食習慣で健康を害し、糖尿病や癌、心臓病などの怖い病気になる人のほうが圧倒的に多いです。
現実的にはほとんど影響がない食品添加物や残留農薬などにいくらこだわっても、食習慣が乱れていてはすべて台無しです。