自動車学校で駐停車の方法はしっかり学び、皆路上教習でもそれをやって来たわけですが、どういうことか免許習得後は、全く違う暗黙ルールが存在する。
それは「片輪だけ歩道に乗り上げて駐車」するというもの。どの車を見ても何故か皆そうやっているのだ。もちろん道路交通法違反である。
狭い歩道でも例外なくやられるため、歩道の幅によっては歩行者が通れなくなり、やむを得ず車道を歩くことになる。
そもそもなぜこういう止め方をするのが一般的なのか考えてみた。
道路交通法での駐停車方法
駐停車の方法は道路交通法第47条。
第四十七条 車両は、人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
2 車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
3 車両は、車道の左側端に接して路側帯(当該路側帯における停車及び駐車を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたもの及び政令で定めるものを除く。)が設けられている場所において、停車し、又は駐車するときは、前二項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、当該路側帯に入り、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。
出典:道路交通法第47条
駐停車は道路の左側端に沿う。しかし他の交通の妨害とならないようにしなければならないということ。妨害は車両という限定はないため歩行者の妨害も含まれる。
路側帯に関してはこの記事での議題ではないため、歩道のある道路での根拠で進めていきます。
法第47条は「道路の左側端に沿い」であって「車道の左側端に沿い」ではない。道路交通法の歩道は道路の部分であり、第47条にある「道路」とは、歩道(歩道は道路の部分(法第2条))も含まれたものだから、歩道に駐停車するのか、と解釈していいものかというと、
これは広島高裁 昭和37(う)223でも争われたところであり、法第17条3項の通行区分より、「通行し得ない場所における駐停車ということは予想されないところ」ということで、「歩道上の駐車は道交法では違法であると解釈すべきである」という判決が下された。
まあ、ということで道路交通法には明示されていないが、歩道上は駐車禁止である。各都道府県警察も道路左側端に沿わない駐車(歩道上駐車)は駐車違反として例示している。ここでの道路は歩道を含まない解釈が暗黙の了解のようである。
というか、そもそも歩道は通行できないのだから、歩道上へは駐車も停車も実質不可能。
これら駐車の多くは歩道の縁石の切り下げ部分で見かけることが多いが、縁石が切り下げられているところのほとんどは車の出入り口となっているため、この場合も駐車禁止場所(道路交通法第45条第1項第1号)である。
(駐車を禁止する場所)
第四十五条 車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
一 人の乗降、貨物の積卸し、駐車又は自動車の格納若しくは修理のため道路外に設けられた施設又は場所の道路に接する自動車用の出入口から三メートル以内の部分
(後略)
出典:道路交通法第45条第1項
駐車と停車の違い。
駐車は車両を離れて直ちに運転することができない状態や、客待ち、荷待ち、故障、その他の継続停止(これらは5分以内でも駐車)、5分を超える貨物の積卸しの停止。(※5分以内の貨物の積卸しや人の乗降の停止は停車だが、5分以内の貨物の積卸しであっても車両を離れて直ちに運転することができない状態だと駐車扱い。)
停車は、駐車以外で車両が停止すること。
なので、道路脇に車を止めて車内でスマホをいじるような場合は1分でも駐車。人待ちは1分でも駐車。道路脇に車を止め、ポストへ郵便物を入れるために少しだけ離れても駐車。つまり運転継続中ではない停止の殆どの場合は駐車。
実態は全く違う暗黙のルール
歩道上は駐停車禁止であるが、実態はほとんどのドライバーが片輪を歩道へ乗り上げて駐停車する。その方法が暗黙のルールと化している。
しかし、これが広い歩道ならまだしも、彼らは本当に狭い歩道でも例外なく片輪を乗り上げて駐停車をするので、その場合は歩道の殆どを塞ぐ形。中には狭い歩道を全部塞ぐ車もいる。
車道を走る車には邪魔にならないかもしれないが、こうなると歩行者は歩道を通行することが出来ず、車道に出て通行することになるため、危険な状況。結局歩道を通行できなくなった歩行者が車道に出れば車道を走る車の邪魔となる。
このおかしな暗黙ルールは、車道を走行する車が車道を通行する車の迷惑にならないようにとしたもので悪意はないものであるかもしれないが、そのかわりに歩行者の通行妨害となっている現状がある。
結果的にはルール違反であってマナー違反で歩行者の危険を増やしているだけの迷惑行為である。
自動車専用道路ではない一般道は自動車のものだけではないということ。
狭い生活道路で30km/h規制があるところでの異常な速い車の流れ(ルールより自動車の流れ優先的な空気)もそうだが、歩行者の通行や安全を犠牲にしてまで自動車の円滑な通行を優先するという車社会の風潮はなんとかならないものか。