こういった質問を掲示板で見ました。
高速道路では追い越し車線を走行し続けると通行帯違反です。
でも法定速度(最高速度)なら追い越し車線を走り続けても問題がないはずですが、道交法ではなぜ禁止にしているのでしょうか?その理由は?
ということである。
つまり質問者の言いたいことは
追い越し車線であろうと、法で定められた最高速度で走行し続ければ、法律上誰も追い越すことは出来ないのだから、誰にも迷惑はかからないし、この速度から下がらなければ問題はないはずなのに、なぜ道路交通法はこれを禁止にするのか?
という感じだろうと思う。
「道交法で決まっているから」「通行帯違反だから」・・・というとそこで終わってしまうので
法定速度で最高速度維持でも道交法で追い越し車線走行を禁止にしている理由をこの記事で書いていきます。
居座り走行を道路交通法でなぜ禁止にしているか
車両通行帯のある道路(ほぼ高速道路になるが)では法第20条第2項、第3項の場合を除き、最も右側の通行帯(つまり道路中央にもっとも近い通行帯)を開けて走らなければならない(法第20条第1項)。
車両通行帯の目的は交通規制基準。
規制目的
車両が道路の定められた部分(車線)を通行することを指定することにより、交通流の整序化を図り、もって交通の安全と円滑を図る。
出典:車両通行帯 交通規制基準p92|警察庁
交通の安全と円滑が目的です。
でも法定速度(最高速度)を維持して走れば追い越し車線を走り続けても円滑な交通に関しては問題がないはずですが?
そもそもそれ以上の速度は出せないので追い越すことは出来ないわけだから。
という声があり、ここからが本題。
昭和39年の道路交通法の一部改正で、第46回国会衆議院地方行政委員会での警察庁交通局長によるキープレフトの原則の説明。
もちろん円滑な交通の点でのメリットもありますが、交通安全の面でいうと以下の通り。
(前略)この方法を採用した場合におきましては、御承知のようにまん中の車線があくということになりますので、対向車との間における正面衝突は避けられる、ただしかし左に寄る場合において、歩車道の区別のない場合における歩行者なりあるいは自転車等のいわゆる危険防止ということで、この規定の中にも歩行者並びに自転車に対して危険を及ぼさないような通行方法をとるようにということを、罰則なしの指導の方針といたしまして規定をいたしておるわけでございます。したがいまして、まん中の車線をあけて、追い越しをする場合における事故の防止をはかるというところに一つの重点があるのでございます(後略)
出典:042・高橋幹夫(警察庁交通局長) 第46回国会 衆議院 地方行政委員会 第42号 昭和39年5月8日|国立国会図書館ウェブサイト
※「まん中の車線」とは道路中央(中央線)の真横の車線のこと。
要約すると
- 対向車との正面衝突のリスクを避ける。
- 右側から追い越すことで、速度の遅い歩行者や自転車との事故防止。
高速道路は歩行者と自転車は通行できませんが、対向車との正面衝突のリスクというのは稀にあります。
車両通行帯のある道路では、現在はほとんどが中央帯(中央分離帯とも言う)で物理的に工作物で分離されているので通常であれば正面衝突のリスクはほぼありませんが、稀に分離帯を越えて飛んでくる車、対向車線からの落下物が飛んでくることもあります。
特に高速道路では中央帯に高い遮蔽物があり対向側が見えにくい上、速度も出ているため、この対向車線側のクルマに注意しようとしてもなんの予兆も感じることは出来ません。対向側の動きに気をつけようとしても現実はそんなこと出来ないのです(不可能)。
2017年6月の東名バス事故ではバスが追い越し車線を走行中に対向車が分離帯を越えて飛んできてバスの正面に激突。
2024年2月に高速道路でダンプカーが中央分離帯にぶつかって対向車線にコンクリが飛び散った事故では、コンクリ片は追い越し車線側に重点的に飛散していました。走行車線側にも多く飛散していたが、追い越し車線ほどではない。
つまりたとえ追い越しのために追い越し車線を利用したとしても、追い越し車線はそもそもあらゆる事故のリスクが高いということです。
右側を空けたほうがいい理由(追加。個人的な意見)
上記の理由以外にも右側の通行帯を開けたほうがいい理由はあります。個人的な意見ですが。
- 逆走車との衝突を避ける。
逆走車は追い越し車線を走る法則があります。なぜなら彼らはその場面で左側通行をしようとするからです。正常な通行側から見ればそれは右側になります。なので追い越し車線を走り続けていると、逆走車がいた場合、正面衝突するリスクがあり、それを避けようと左へ急ハンドルし、左の通行帯を走る車に接触すれば大事故となります。
というわけで、左側をおとなしく走るのが無難です。