トランス脂肪酸が世間で騒がれてもう何年過ぎたでしょうか?
騒がれ始めた当時はマーガリン叩きが半端なかったですね。
マーガリンにはトランス脂肪酸が入っている、毒だ!食べるな!一切食べるな!マーガリンは食べるプラスチックだ!石油から出来てる!ネット上ではいかにマーガリンが毒であるかを強調する言葉が氾濫しました。
一時は社会現象化したマーガリン騒動。あれから騒動はどうなっているのか?
トランス脂肪酸騒動のあらまし。
2002年に開催されたFAO/WHO合同食品添加物専門家会議( JECFA) の2003年の報告書で、トランス脂肪酸は冠動脈性心疾患のリスクを高めると発表。トランス脂肪酸の摂取量は総エネルギーの1%未満にするように勧告。
すぐにネット掲示板でスレッドが立ち、騒ぎ始める。
「トランス脂肪酸は危ない!」
「トランス脂肪酸はマーガリンに含まれている!」
「マーガリンは毒だから一切食べるな!」
「マーガリンは食べるプラスチックだ!」
「マーガリンを食べたら死ぬ!」
「アリもマーガリンを食べない!」
かなり過激なキャッチフレーズが乱立した。
2010年、 内閣府食品安全委員会は、トランス脂肪酸について冠動脈疾患のリスクは認めたが、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量は1%未満(0.3%程度)であるため健康への影響は少ないとした。
しかし世間一般ではトランス脂肪酸問題がさらに加熱。
トランス脂肪酸は菓子類や菓子パンなど他の食品にも含まれているが、なぜか
トランス脂肪酸=マーガリン
という方程式が確立してしまい、皆マーガリンばかりを避けるようになる。
メーカーは対策のために部分水素添加油脂不使用など低トランス脂肪酸を謳ったマーガリンを出す。
フードファディズムとは。
フードファディズムという言葉をご存知でしょうか。
食品が健康に与える影響を過剰に受け止め、ほとぼりが覚めるまで極端な言動に出ることです。
テレビで◯◯は健康にいいと放送があればそればかりを食べる。テレビで◯◯を摂り過ぎると健康に良くないと放送があれば、◯◯を一切食べなくなる。そしてすぐに飽きて元に戻る。
ヨーグルトきのこブーム、ココアブーム、納豆ブーム、トマトブーム、コラーゲンブームという健康志向の現象。
そして糖質制限ブームでは糖質は毒だとして徹底して避ける現象。寿司屋でシャリだけ残すなど奇妙な光景まで出てきました。
人工甘味料がやばい、小麦は食べるな、牛乳は体に悪い、なども。フードファディズムはいつの時代も何かしら存在していて、熱が冷めると消えていく。そのたびに人々はいつも極端な行動へ出るのです。
その昔、専門家がバターの摂りすぎは健康によくないと発表。
「バターは体に悪いから食べるな!」
「マーガリンは体にいいからマーガリンを食べろ!」
ところが、トランス脂肪酸が悪いとしてマーガリンが挙げられると。
「マーガリンは健康に悪いから食べるな!」
「バターは体にいいからバターにしろ!」
情報が出ると右に傾き、右に傾いたと思ったら今度は左。振り回されすぎです。
トランス脂肪酸が人体に及ぼす影響。
血液中のLDLコレステロールが増加、HDLコレステロールが減少。
結果、冠動脈性心疾患のリスクを高める。
冠動脈が狭くなり、心臓への血液が流れにくくなる病気。
冠動脈性心疾患には狭心症と心筋梗塞がある。
マーガリンはプラスチックなのか?
一時派手にデマが広がったようですが、現在ではプラスチックと思っている人はかなり減ったと思います。まだプラスチックと思っている人へ。
マーガリンはプラスチックではない!
一時はマーガリンは食べるプラスチック。石油と同じ。マーガリンは石油から出来ている。なんて言葉まで出てきました。
マーガリンは石油でできているんでしょうか?いいえ違います。
これはジョン・フィネガン氏が出した本の日本語訳版の影響ですね。それがネット上でさらにおかしな方向へ変化していった気がします。マーガリンはプラスチックではありません、石油ではありません。
マーガリンは植物油からできている。
原材料は食用植物油脂です。
食用植物油脂は米油、パーム油、コーン油、大豆油などのことです。この食用植物油脂に部分水素添加油脂を加え、常温で固体化したものがマーガリンです。
部分水素添加油脂は食用精製加工油脂が原材料でこれは米油やなたね油などから作られています。この食用精製加工油脂に水素添加処理をしたのが部分水素添加油脂です。つまり石油なんか使われていません。
食用植物油脂 + 部分水素添加油脂=マーガリン
最近はこの部分水素添加油脂を使用しないマーガリンなど増えてきていて、従来マーガリンに比べ含まれるトランス脂肪酸は激減しています。
トランス脂肪酸が含まれる食品。
マーガリン、パンやケーキなどに使われるショートニング、スナック菓子、チョコレート、マヨネーズ、ドレッシング、揚げ物、牛肉、乳製品、カップ麺。
詳しい数値はこちら
内閣府食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の 評価基礎資料調査報告書」pdf
マーガリンは1食あたりの摂取量が少ないですからそれも考慮しないといけません。菓子パン類を1食で100g食べることはあっても、マーガリンを1食で100gなんて食べないですから。
過剰反応してマーガリン社会現象へ。
マスメディアが不安を煽り、そして過剰反応した人がネットへ書き込んで拡散する。
トランス脂肪酸を含む食品はマーガリンだけではないのに、マーガリンは危険だ!一切食べるな!というようなネットで啓発する書き込みが氾濫。マーガリンばかりが悪の根源のように扱われ、マーガリンを社会から隔離しろ、世の中はマーガリン撲滅運動のような空気へ。
にもかかわらず菓子パン、ケーキ、カップ麺やスナックは平気で食べる。
避けるのはマーガリンのみ。マーガリンだけは一滴たりとも口にしたくないという騒ぎ。まさにマーガリン騒動です。
我々は常にゼロイチ思考。
フードファディズムはいつも両極端です。そこにあるのはゼロかイチの選択。彼らには適量にという言葉は存在しないし耳に入らないのです。
この食品の摂り過ぎは健康に悪いとマスメディアが伝えると。
↓
一切摂ってはいけない!
毒だ!食べるな危険!
これは健康に良い食べ物とマスメディアが伝えると。
↓
毎食のようにそればかり食べる。
スーパーでは品切れ。
マーガリン騒動とフードファディズムのその後。
すでにメーカーはトランス脂肪酸を抑えたマーガリンを開発しスーパーなどには陳列されています。
フードファディズム現象もやや落ち着いてきたのか、マーガリンの売上はやや回復してきているそうです。メーカーもそのたびに右に左に。
脱水症には塩も大切と騒がれると、あれもこれも塩をアピールした商品で溢れた。糖質制限ブームでは、糖質系商品が売れなくなるので低糖質をアピールした商品を次々出した。マーガリン騒動も低トランス脂肪酸の商品で対処。
さて次は何が来るのか。