田んぼに住む生き物は何でも捕食するため「田んぼの王者」ともいわれるタガメ。国内希少野生動植物種のなかでは緩い「特定第二種国内希少野生動植物種」にタガメが追加されました。
2020年2月10日よりタガメの販売等を目的とした捕獲・採取、譲渡し等が原則禁止となります。
皆さんは野生のタガメを見たことはありますか?私は小さい頃かなり昆虫採集はしましたがタガメだけは一度も見たことがありません。図鑑では見たことがあり、あの姿はかなりインパクトがあります。
タガメ
タガメは水田や池沼に生息する大型の水生昆虫。大きな2本の前足で魚やカエルや昆虫、節足動物など付近の小動物をガッチリ捕まえて口針を突き刺し、消化液で獲物の細胞を溶かしてストローのように吸い上げます。
タガメは脱皮しながら大きくなります。寿命は1–2年ほど。水生ですが羽もあって空中を飛べます。
アジアではタガメが食用となっている国もあります。日本でもかつて食用としていた地域がありました。今でもインターネット通販では加熱調理済みの輸入品の食用タガメが並んでいます。
昔は普通に見られたタガメ
昔は田んぼや池沼全国どこにでも生息していたが、今では昆虫図鑑でしか見ることがなくなったタガメ。タガメは僅かな農薬にも敏感ですぐに死んでしまいます。田んぼに農薬が使われ、開発も進んでくると数が減ってきました。
またタガメは夜間の外灯や照明などの明かりに集まる習性があり、そこで息絶えることが多く、それも大きな要因となっています。
現在日本では絶滅危惧II類 (VU)になっています。
タガメが特定第二種国内希少野生動植物種に追加
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の改正で、国内希少野生動植物種に63種を追加(特定第一種国内希少野生動植物種に16種を追加、特定第二種国内希少野生動植物種に3種を追加、捕獲等の規制を適用する卵及び種子として14種を追加)されました。2020年2月10日より施行です。
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定について(国内希少野生動植物種の指定等) 環境省
国内希少野生動植物種にタガメが追加され、その中で特定第二種国内希少野生動植物種にタガメは分類されました。
特定第二種国内希少野生動植物種とは
国内希少野生動植物種のうち、その存続に支障をきたす程度に個体数が著しく少ないものでない、生息・生育の環境が良好に維持されていれば、繁殖による速やかな個体数の増加が見込まれる等、一定の条件を満たすものについて、販売等のみの規制を行うもの。
出典:特定第二種国内希少野生動植物種 環境省
国内希少野生動植物種は捕獲・採取、譲渡し等が原則禁止となり、その中で特定第二種国内希少野生動植物種は販売に関してのみということで、
つまり販売等を目的とした捕獲・採取、譲渡し等が原則禁止になるということです。
マスメディアはタガメだけをピックアップしていますが実際はこれだけ多くの種が追加されます。
しかしその多くは名前を見ても専門家しかわからないような名前の種ばかりで、一般の人はそれを野生で見ても指定された種なのかはわからないと思います。その追加された中でタガメだけは一般人でも多くが知っていてわかりやすい種。
この改正により、タガメの販売等を目的とした捕獲・採取、譲渡し等が2020年2月10日より原則禁止となります。
大切なのは保全活動
販売目的の捕獲・採取、譲渡し等が原則禁止。つまり乱獲されることを防止するということでしょう。そういう数少ない貴重な場所は大切に保護してほしい。
しかしかつてどこにでも見られたタガメがこれだけ激減した理由は農薬使用や開発による池沼の減少、夜間の外灯や照明などの明かりに集まって死んでいったことです。
この根本的なものを対策しないと絶滅危惧II類 (VU)という現状は永遠に変わらないと思うのです。
そこで、滋賀、大阪、兵庫、奈良、山口県などタガメの保全活動のための環境作りをやっている地域が多数あります。やはり大切なのはそれだと思います。こういう活動が各地で行われているというのは大変ありがたいことです。